祭り 前編 ④
「おい建真、あれやろうぜ!」
だらだらと辺りを見回しながら歩いていると、武史がこちらを向いてそう言った。
武史は右斜め前のあたりを指さしている。
「射的かー、いいぞ」
指を指していた方向には、射的の屋台があった。
幸い、あんまり混んではいない。
「本条さんと琴葉もほらほら」
武史に無理矢理誘われて、俺たちは射的をすることになった。
商品をずらっと見ると、駄菓子からぬいぐるみまで様々なものがある。どうやら、200円で5発撃てるらしい。
「よーし、やるかぁ」
俺はおじさんに200円を払い、空気銃にコルク弾を込める。
「琴葉、なんか欲しいものあるか?」
俺は特に、これといって欲しいものがなかった。
どうせやるなら1点に絞って狙い撃った方がいいだろうと思い、琴葉に聞いてみた。
「え? うーん……」
琴葉はしばらく考えた後、
「あのクマのぬいぐるみが欲しいかも」
と言った。
商品棚の真ん中にある、さっきから存在感を放ちまくっているぬいぐるみだ。
「でかいな……。わかった、やってみよう」
正直無理だろ……と思った。しかしやってみないと分からないというものだ。
俺はクマのぬいぐるみのおでこあたりを狙って、撃った。
「ビクともしてない気がするんだけど……」
コルク弾は狙い通りにおでこに当たったが、ピクリとも動かなかった。
「けんちゃん頑張って!」
琴葉の声援が聞こえる。いや無理だろ……。諦め半分だったが、どうせなら取りたいと思う自分もいた。
ぬいぐるみは柔らかい。しかし、クマのぬいぐるみの目はプラスチックで出来ている。多分だけど、勝算があるならここだけだろう。
俺はクマのぬいぐるみの目を狙うことにした。
2発目と3発目は外した。
目は小さくて狙いにくい。俺は思いっきり手を伸ばし、ギリギリまでクマのぬいぐるみに近づく。
4発目、ぬいぐるみの左目に当たった。ぬいぐるみは思ったよりも大きく傾いた。
「いけるよけんちゃん!」
俺は落ち着いて、狙いを定める。
最後の5発目。見事に再度ぬいぐるみの左目に当たった。そのままぬいぐるみは商品棚から落ちる。
「やったぁー! すごいよけんちゃん!」
俺は琴葉とハイタッチをした。
偶然取れたとしても、嬉しかった。というか、やばすぎないか。マジで取れるとは……。
「まぐれだよ。でも取れてよかった」
「ありがとう、けんちゃん。大切にするね」
琴葉はクマのぬいぐるみを抱きしめながらそう言った。
「やるなぁ建真。よし、俺も」
そう言って武史はおじさんに200円払い、空気銃を構えた。
「本条さんなんか欲しいものある?」
武史は本条に聞いた。
本条は迷わず、
「んー、あれがいいかな」
と指を指す。
「あれは……しおり?」
「そう、しおりだよ」
本条が選んだのはプラスチック性のしおりだ。
銀色に輝き、風鈴の絵が書いてある。
夏っぽいしおりだ。
「もっと大きいものでもいいんだよ?」
武史はそう聞いたが、
「ううん、しおりがいいの。私、本をよく読んでてそろそろ新しいしおりを買おうと思ってたから」
本条はしおりがいいらしい。
「本条さんがいいならいいけど」
武史どこか不服そうだったが、しおりに狙いを定める。
しおりは小さいから当てるのが大変だ。1発目。コルク弾はしおりの右側をかすめた。
「よーしもう1回!」
「がんばって!」
本条の声援を受け、武史は再び狙いを定める。
2発目。コルク弾は見事、しおりに当たった。
「よし!」
武史は大きくガッツポーズをした。
「すごいすごい!」
本条はそう言って、右手を武史の方に向ける。
武史は優しくその右手にハイタッチをした。
「はい、これ」
武史は取ったしおりを本条に渡した。
「ありがとう、大事に使うね」
本条は嬉しそうな顔をしていた。
その後、琴葉と本条も射的をやった。
2人とも意外な才能を見せ、筆記用具や駄菓子などを沢山取っていた。
俺たちは、楽しい時間を過ごした。




