祭り 前編 ③ side:本条花凛
進藤くんと祭りを回ることになった。後ろに綾瀬さんと斉藤くんがいるが、周りがうるさくて2人の会話は聞こえない。
だから、実質2人きり。
私の左隣に、進藤くんがいる。
進藤くんとは、迷子猫の飼い主探しの時に話しかけられ、初めて会話をした。まだ距離感がわからず、こちらから話しかけてもいいのか迷う。
しかし、あの時話しかけてくれたのは進藤くんからだ。
だから今度は私から……。そう思って私は勇気を振り絞る。
「あの」
緊張のせいか、少し声が大きくなってしまった。周りがうるさいからちょうどよかったかもしれない。
「ん?」
進藤くんが私の方を見る。
斉藤くんとはまた違った雰囲気を感じた。
「改めてだけど、猫の件はありがとう」
私はもう一度、お礼が言いたかったのだ。
本当に、あの時は助かったから。
「いやいや、運が良かっただけだよ。綾瀬さんの方が頑張ってたじゃないか」
頑張ってた……? ただ猫を抱いていただけだけど……。
もしかして、猫を追いかけるところを見られていたのだろうか。……まぁそれはないだろうけど。
特に気にせず、私は話を続ける。
「ううん、私は猫が好きなだけだよ。あの時は本当に助かったの。だから、ありがとう」
私は歩きながら、ぺこりと小さく頭を下げた。
「なんか照れるな……。どういたしまして。というか、今更だけどいきなりお祭り誘ってごめんね。嫌じゃなかった?」
「初対面の相手からいきなり誘われたのはびっくりしたけど、お祭り行きたいなって思ってたから全然大丈夫だよ」
やっぱり、1人でお祭りに行くのは正直色々きつい。いつもはすぐに帰ってしまうのだ。
だから、誘ってくれて本当にありがたいって思っていた。お祭りを思う存分楽しめることができるから。
「やっぱりそう思われたんだね……ごめん。話変わるけど、本条さんはお祭りよく行くの?」
「まぁ、一人で行くことが多いかな。雰囲気が好きなんだ。あんまり長時間いないけどね」
「そうなんだ、意外だな。言い方が悪いかもしれないけど、祭りとか、賑やかなものは苦手だと思ってたよ」
「ううん、いいの。学校では私、読書しかしてないもんね。そう思われても仕方ないと思うよ」
「猫の時と言い、なんだか本条さんのイメージがどんどん変わっていくな。なんか面白い。やっぱり、本条さんを誘ってよかったよ」
「そうかな? 私、そんなに面白い人間じゃないよ?」
私は、思ったよりも進藤くんと自然に話せていることに内心驚いていた。どうやら私は、自分が思っていた以上に人と交流したかったのかもしれない。
人と関わることで、私の知らない私がどんどん出てくる。これも変わるってことの一種なのだろうか。
そんなことを考えていると、突然、進藤くんが、あっ、と何かも思い出したような声を上げた。
「どうしたの?」
「そういえば気になってたんだけどさ、本条さんって建真とよく話してるよね。2人は付き合ってたりしてるの?」
唐突の質問に、私はびっくりしてしまった。
「え? ぜ、全然! そんなことあるわけないからっ」
返事が少し焦ってしどろもどろになってしまった。
「そう? 結構仲良さげに見えたからさ」
そんなふうに見られていたのか。
ただ普通に話しているだけだったから驚いた。
「ただの友達だよ。ほら、私友達少ないというか、ずっと一人だったというか……だし」
「そっか。ごめんね、変な事聞いて」
「だ、大丈夫だよ」
まだ少し心臓がドキドキしている。急な質問で本当に驚いてしまった。
別に斉藤くんのことは嫌いという訳では無いし、むしろ好印象だけど……。
付き合うなんて、そんなことはないだろう。ただ仲がいい友達なだけだ。
そもそも私は恋をしたことが無いのだ。恋とかよくわからない、本当に。
だから、そんな、付き合うなんてことはないはずだ。
そんなことは……ない、はずだ。




