祭り 前編 ② side:綾瀬琴葉
「けんちゃんと2人きりで話がしたいの。協力して」
お祭りの集合時間まで、あと1時間。私は家の近くの公園で、武史と会っていた。
理由は簡単。
「なんで花凛を呼んだの?」
「だって一緒に猫の飼い主探した仲だし、友達になれるいい機会かなって」
「来るって連絡くらい、しなさいよ」
「まぁまぁ、落ち着いて」
実際、私は焦っている。
昨日から心臓がバクバクいっていてろくに寝れていない。なぜなら、頭の中で何度も何度もシミュレーションをしていたからだ。
シミュレーションをする度に、心臓が張り裂けそうなくらい緊張している。
集合時間が近づくにつれ、シミュレーションをしなくても心臓の鼓動が早くなっていく。
深呼吸をしても治らない。多分、告白するまでずっとこの状態だろう。
別に花凛を恨んでいる訳では無い。……いや少し恨んでいるかもしれない。花凛にけんちゃんを取られたくないし、花凛がいるからこんなことになったのだから。
いつか、こんな日が来るだろうとわかってはいた。それが今日だったってだけの話なのだ。
もう、仕方ないと割り切るしかない。
「21時。その時間に花火が打ち上がり始める。その5分前には、私はけんちゃんと2人きりになりたいの」
「詳しいことを全く聞かされてないけど……まぁ、なんとなく察したよ。わかった、協力する」
そういえば、詳しい話をしていなかったと気がついた。
でもまぁ察してくれたようだし、話す手間が省けて良かった。
「ありがとう」
心からの感謝だった。こういう時、友達の存在は心強い。
「貸しひとつな」
「……元はと言えば誰のせいだと」
私は小声でそう言った。
「なんか言ったか?」
「ううん、なんでもない」
私はそっぽを見る。
「じゃあ計画を練ろうか」
じっくり計画を練っていたら、いつの間にか集合時間まであと5分だった。
だから遅れてしまったのだ。
……遅刻した理由、けんちゃんには絶対に言えないな。
けんちゃんが見え始めたくらいで、私は自分の姿を再度確認する。
浴衣は全体的にライトグリーン。所々に白色の百合の花が散りばめられている。帯はオレンジ色。下駄はベージュ色。
少し派手すぎただろうか。昔けんちゃんに、琴葉は明るい色が似合うと言われたことを突然思い出したから、その言葉を意識してみた。
メイクは控えめなナチュナルで。髪の毛は少しウェーブをかけた。
似合うって言ってくれるだろうか。可愛いって思ってくれるだろうか。
けんちゃんの水着を買いに行った時は、私の私服に対して何も言ってくれなかった。……まぁ私の私服姿なんて見慣れているだろうし、今更って感じだけど。
「私、変じゃないよね?」
と、私は少し不安になって武史に聞いた。
「変じゃないと思うけど」
「よかった」
胸をなで下ろし、再度けんちゃんの方を向く。
どうやらけんちゃんは本条さんと話しているらしい。その光景を見て、私の心にもやもやした気持ちが湧き出てくる。
だから私は、
「けんちゃーん」
と、意識を私の方に向けて欲しくて、つい叫んでしまったのだ。




