祭り 前編 ①
17時30分。俺は家を出た。祭りの会場までは家から歩いて約20分ほどだ。
いつもなら集合時間ギリギリに行くのだが、幾分人が多いから集合場所で皆を見つけるのが大変だ。だから早めに行くことで見つける側でなく、待ってる側になろうと思った。そっちのほうが楽だし。
服装は半袖の紺色のポロシャツと白の半ズボン。カジュアルで無難な格好だ。プラスでショルダーバックを持ってきた。
琴葉と一緒に行こうと思ったのだが、琴葉の部屋のカーテンは閉まっていたから既に出掛けたのかもしれない。
道中で合流出来ると思い、俺は少し早歩きをした。
10分ほど歩いただろうか、だんだんと人が多くなってきた。しかし、一向に琴葉の姿は見えない。
そもそも琴葉がどんな格好をしているのかすらわからないのだから、見つけるのはより困難だろう。
最後に琴葉と一緒に祭りに行ったのは、小学6年生の時だ。俺の服装はあの時も私服だったはずだ。浴衣はあんまり着たことがない気がするが、記憶は曖昧である。
逆に琴葉の服装は、昔からよく浴衣を着ていた覚えがあった。けれど、琴葉がよく着る服と似たような服を着た人が多いせいで琴葉かもしれないと勘違いしっぱなしだ。
俺は琴葉を見つけるのを諦め、真っ直ぐ集合場所に向かうことにした。
耳に付けているイヤホンから、流れる音楽の音量を上げる。
人が多くて騒がしくても、イヤホンをして自分の好きな曲を聞くと周りが気にならなくなる。自分の世界に入れている気がして気が休まるのだ。
俺はただ流れてくる音楽に耳を傾け、ハイテンポなリズムに合わせて早足で歩いた。
17時50分。俺は集合場所に着いた。
そこまで早い時間ではないのだが、どうやら俺が1番乗りのようだ。ちなみに集合場所は、神社の一番大きい鳥居の前。鳥居をくぐると、すぐに出店が沢山並んでいる。
鳥居の前にはたくさんの人がいた。どうやら俺たちと同じように、鳥居の前を集合場所にしている人たいらしく見える。鳥居に寄っかかって少し休もうと思っていたが、無理そうだ。
スマホを見ると既に圏外になっていた。これからスマホの役割は時間を見るだけになりそうだ。
しばらく待っていると肩をとんとん、と叩かれた。
俺は叩かれた方に振り向くと、叩いた人の指が俺のほっぺに刺さる。
「引っかかったー」
そう言って俺の目の前に現れたのは、淳だ。淳は紺色の甚平を着ている。
俺は、はぁ、と1つため息をつく。
「他のみんなは?」
「俺は見てないかな。連絡したくても携帯使えないのつらいなー」
淳はスマホを高く上げるが、電波が繋がる素振りすらない。
「とりあえず待つしかなさそうだな」
「それなー」
淳が来てから5分後だろうか、俺たちに気づいたのか1人の女の子が近づいてくる。走ろうとしているが草履を履いているせいで、上手く走れなさそうだ。
その女の子は俺たちの目の前に来た。はぁはぁ、と息を切らし膝に手を当てて休んでいる。
俺は淳に小声で、
「なぁ、誰?」
と言うと淳は、
「知らないけど……建真の友達じゃないのか?」
と普通の声の大きさで言った。
「お、おい、聞こえるだろ!」
とフォローしたが、遅い。
女の子はゆっくりと顔を上げながら、
「失……礼……ね!」
とまだ息切れの状態で言った。
そこで俺は気づいた。この声を俺はどこかで聞いたことがある。そして俺はこの人を知っている、と。
楽になってきたのか、女の子は完全に顔を上げ俺を見る。
その真っ直ぐな視線は、久しぶりだ。
俺はゆっくりとその女の子の名前を言う。
「本、条……」




