思い
前半部分が斉藤建真の視点、後半部分が綾瀬琴葉の視点になっています
(明日は祭りか……)
ベットに仰向けで寝転がりながらスマホでネットサーフィンをしていると、祭りのチラシの画像が流れてきた。
今日の夕方から、「明日の祭り忘れるな」、という連絡がたくさん来ている。淳とか、武史とか、琴葉とか。
祭りは夜からだから、集合時間は18時だ。全然余裕があるのに、そんなに俺は信用出来ないのだろうか……。
花火を見る場所は、淳が早く祭りに行って場所取りしてくれるらしい。
俺は、はぁ、と1つため息をついてからスマホの電源を消しベットの上に置いた。手を挙げっぱなしの状態は疲れる。
一応、毎年祭りに行っているが、その度に思うことはやはりその混み具合だ。屋台がひしめく沿道は、いつも歩くのがやっとの状態になる。
だからいつも誰かしらが迷子になるのだが、人が多いせいで携帯の通信状況が悪くなるから自力で見つけるしかなくなる。
正直、行きたくない。だって色々めんどうだし。
それでも行く理由は、友達との約束だからというのと、海に行った日の帰り道に琴葉が言っていたことが気になるからだ。
「覚悟しといてね」
ドッキリでも仕掛けられるのだろうか。俺の誕生日はまだ先だから関係ないだろう。考えてもわかることではないが、やはり気になってしまう。
なぜならそんなこと言われたのは、初めてだったから。
俺はもやもやした気持ちを抱えながら、静かに目を閉じた。
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お祭りの日。
その日に、今のこの関係を終わらせて、新しい関係に。
もう、決めたのだ。
その気持ちに気づいたのはいつだったか。
中学生になってからも、私はけんちゃんとよく一緒にいたし、一緒に帰ってた。だから、恋バナが好きな子たちにとって格好の標的だった。
幼馴染だから一緒にいるのが当たり前、から、好きだから一緒にいるのが当たり前になったのは、噂話で私が〝恋〟というものを知ったから。
「琴葉ちゃん、それは琴葉ちゃんが建真くんのことが好きだからだよ」
認識の違い。好きだから、という言葉は私にとってとてもしっくりくる言葉だった。そうして私は、〝本気で〟けんちゃんのことが好きになった。
でも、私が私の気持ちに気づいたくらいで、けんちゃんとは疎遠気味になってしまった。
あとで聞いた話だが、けんちゃんは恋バナが苦手というか嫌っていて、だから私と学校ではあんまり関わりたくなかったらしい。
だから、私は告白はしなかった。いや、できなかった。だって告白したらけんちゃんに嫌われると思ったのだ。恋バナを嫌っていて距離を置かれたのに、自分から、それも恋のために近寄ったら私のことを嫌いになるに決まっている。
付き合わなくても一緒にいられる。だって幼馴染だから。私はいつの間にか、現状に満足していたのだ。
ただ、付き合いたい気持ちが全くないわけでもなかった。私の気持ちは日に日に大きくなっていくし、けんちゃんが他の女の子と話している姿を見ると嫉妬する。
けれど、けんちゃんの性格上、面倒くさがりのところがあったからあんまり人と深く関わろうとはしなかった。私にとってとても都合が良かった。
それは高校に行っても同じって、勝手にそう思っていた。本条さんが現れるまでは。
急に焦りを感じて、恐怖した。いつまでもこのままなんて、ありえないことを知った。
私はこれからどうしたいのか。答えなんて初めから1つのはずだ。
ずっと一緒にいられたらいいのに。
そう、思っていた。
海に行った時に、武史が言ったことを思い出す。
「そういえば、琴葉って本条さんと知り合いだったよな?」
「そうだけど、どうしたの?」
「本条さんも祭りくるから」
「……え? それって……ってあれ?」
気づいたら武史はどこかへ行ってしまった。
武史が花凛を誘ったのか、それとも花凛が自分から行きたいと言ったのか。前者なら問題ないのだが、もし後者だったら。
花凛が1番よく話している相手は、けんちゃんだ。それって、つまり……。
だから私は、お祭りの日に告白しようと思った。
もう、くよくよなんてしていられない。時間が無いのだ。
私は後悔したくないから。
前に、進むんだ。




