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建前男子と本音女子  作者: とりけら
高校1年生編
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海 後編


「けんちゃんってさ、今、好きな人いる?」


 琴葉の目は真っ直ぐ俺を見ている。

 どこか、俺の心が見透かされてしまうような、そんな目で。ただわかるのは、こんな目をする琴葉を、俺は今まで一度も見た事がない。


「……どうしたんだよ急に」


「いいから答えて」


 どうやら言い逃れは出来ないらしい。

 好きな人とか、恋とか、そういうの俺はよくわからないってことを琴葉は分かっているはずなのに、何故今そんなことを聞くのだろうか。


「いない、けど」


 琴葉の眼力で気圧され、返事がカタコトになってしまう。

 すると急に琴葉の顔が笑顔になり、


「そっか。まぁ、そうだろうと思ってたけどね」


 と言った。

 緊張していた空気が解けていくのがわかる。


「なら聞くなよ」


「まぁまぁ、いいじゃないの」


 そう言ってぺしぺしと肩を叩かれる。


「そういうお前はいるのかよ」


 興味本位に聞いてみる。いてもいなくても俺にはどうでもいいが。


「私? 私は……」


 琴葉は再び、海の方を見つめ出す。

 そして、急に立ち上がって言った。


「いる、かもね」


 ちらっとこちらを向いた琴葉の顔は、逆光で真っ暗だったが悪戯な笑顔だった気がする。


「え」


 どうでもいいと思っていたはずなのに。俺は間抜けな返事をしてしまった。


「暑くなってきたし、泳いで来るね」


 そう言って、琴葉は砂浜を駆けだした。


「ちょっ」


「じゃあもうちょっとお留守番、よろしくねー!」


 走りながら喋る琴葉の声は次第に小さくなっていく。その姿はもう点のように遠くなってしまった。


「……いるのかよ」


 何故か心にモヤモヤする気持ちが残っている。

 恋愛というもの自体に興味が無いと思っていたのに、どうやら人の恋愛に興味があるらしい。琴葉の、幼馴染の恋だから、かもしれないけれど。


 俺はレジャーシートの上に寝転がる。

 目をつぶってぼーっと考えていると、俺は気づいたら寝てしまっていた。




「おーい、建真ー」


 声が聞こえる。この声は……武史か。


「んん、、」


「お、起きたか」


「俺、寝てたのか」


 目を擦りながら、差し出された武史の手を掴んで体を起こす。


「飯、行こうぜ」


「もうそんな時間か」


 俺は1〜2時間ほど、寝ていたらしい。

 俺たちは貴重品を持って、海の家へ向かった。


 案の定、海の家は混んでいて席は空いていなかった。

 俺たちはそれぞれ食べ物を買って、レジャーシートの元へ戻って食べることにした。


「やっぱ、海といったら焼きそばだよな〜」


 淳は焼きそばを3パックも買っている。


「そんなに食べれるのかよ」


「余裕余裕!」


 ちなみに俺はたこ焼き、武史はイカ焼きを買っていた。琴葉たちは焼きとうもろこしとかき氷などを買ったようだ。

 俺たちはしばらく昼食を堪能した。




 午後は荷物番を交代し、俺も遊びに行った。泳いだり、潜ったり、砂で城を作ったり。

 海を十分楽しんだと思う。


「そろそろ帰るか〜」


 武史は自分のスマホを見てそう言った。時計は16時を表示している。


「そうだね〜、疲れた〜」


 琴葉は疲れた顔をしている。女の子2人も同様の顔をしていた。


「じゃあ片付けるか」


 俺たちはシャワーを浴びて着替えてからパラソルを閉じ、レジャーシートを畳んだ。

 帰りの電車の中では、俺と武史と琴葉以外寝てしまった。俺の肩にのっている淳の頭が重い。


「また来たいね」


 琴葉はぼそっとそう言った。


「そうだな」


「行こう行こう」


 俺と武史が返事をする。多分、皆一致の意見だろう。

 なんだかんだ楽しかった。次はプールでも良さそうだ。


 駅に着き、俺たちは解散した。


「祭り、忘れるなよ」


 解散する前に、そう武史に言われた。


「分かってるよ」


 俺はそう返事をし、琴葉と一緒に帰った。

 あの時言われたことを、琴葉の好きな人のことをもっと深く聞くべきか迷ったが、そもそも琴葉から一方的に話しかけられた帰路だったから聞ける機会がなかった。


「祭り、楽しみ」


 家に着いた瞬間、琴葉がそう言った。


「ちゃんと忘れないから、大丈夫だ」


 俺は物忘れがひどい方ではないのに、たくさん覚えているか確認をされるのはなぜだろうか。


「覚悟しといてね」


「覚悟……?」


 よく分からないことを小声で言って、琴葉は家に帰っていった。海以上に混むから覚悟しておけ、ということだろうか。

 俺も疲れていたからあんまり気にせず、家に帰った。

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