海 中編
しばらく水をかけあった後、俺たちは泳ぐことにした。さっきまで冷たいと感じていた海も、今はもうぬるい。
俺はゴーグルを付け、潜った。
人が多いからなのだろう、海の中は砂が舞い上がっていて少し汚れている。そのため視界が悪く、どこから深くなっているのかがはっきり分からなくて、少し怖さを感じた。
俺は息をするために海面に上がると、武史と琴葉が話をしていた。
「だんだん混んできたなー」
確かに先程に比べると、1.5倍くらい人が増えている気がする。
「そうだねー、泳ぎたくても泳ぎにくいね」
そう言いながら、琴葉は持参した浮き輪を付け、ぷかぷかと浮いている。
「どうする? 少し遠くの方に行ってみるか?」
「んー……あんまり荷物から離れるのも怖くない?」
「あー、確かに」
2人とも頭を悩ませ、沈黙してしまった。
まぁ、ここは俺の出番だ。
「なら、俺が荷物見てようか?」
「建真、いいのか?」
「全然大丈夫。少し寒いなって感じてたし。女子の荷物番はナンパとかめんどうじゃん? 俺が見てるよ」
「すまん、助かるわ。ありがとう」
「けんちゃんありがとう」
「大丈夫大丈夫」
そう言って俺は、海から上がった。
軽くシャワーを浴び、バスタオルで水を拭き取ってからレジャーシートの上に座る。ふぅ、と息を吐いた。
俺は昔から、こういう役割を自分から進んでやっている。これもれっきとした空気読みの一種だ。変に譲り合って時間を消費するのも面倒だし、俺は俺で一人で一息つけるから一石二鳥だったりする。
俺は、ぼーっと海を見る。
別に、海で遊んでいて楽しくなかった訳では無い。初めは少し億劫だなと感じていたけど、実際に遊んでみると楽しいなって思えたし。
だけど、さすがに運動不足すぎて疲れた。たまにはこうやってぼんやりと海を眺めるのも悪くはないかもしれない。……人多いけど。何ならさっきから人しか見えてないけど。
(そういえば、せっかく来たんだし……)
と、俺はスマホを取り出し、カメラアプリを起動した。
人が多いが、気にせずシャッターを切る。
「あれ」
撮った写真を見ると、少しぶれてしまっていた。
俺はもう一度カメラアプリを起動し、写真を撮る。
「って、おい」
撮った写真には、中央にでかでかと見慣れた人の、笑顔でピースサインをしている姿が写っていた。
「えへへー、うまく撮れた?」
「ほら」
と、俺はスマホを渡す。
「いいじゃーん。じゃあお礼に撮ってあげるね、はいチーズ!」
と、急に写真を撮られた。
「あはは、間抜けな顔」
そう言って、俺のスマホを返された。
「間抜けな顔で悪かったな」
「よいしょっと。あー、つかれたー」
琴葉は俺の左隣に座ってきた。
「まだ30分も……って、1時間経ってたのか」
俺は気づかないうちに約20分以上、ぼーっとしていたらしい。
「けんちゃんは、変わらないね」
そう言われて、俺は琴葉の方を見る。
琴葉は海の、遠くの方を見ていた。
「そうか?」
「いつもじゃん。こうなるの」
「まぁ、な」
幼馴染と言うのはめんどくさいものだ。昔から、俺という人のことを知られてしまっているのだから。
「やさしいね」
「そんなことないんだけどな」
俺がそうしたいと思ったから、しただけだ。優しいなんて言葉は似合わない。
「ねぇけんちゃん」
そう言って、琴葉は俺の方を見る。
暑くなったのか、琴葉はラッシュガードを着ていなかった。目のやり場に困り、俺は琴葉の目しか見れない。
「どうした?」
「けんちゃんってさ、今、好きな人いる?」




