買い物 後編 ① side:綾瀬琴葉
談笑しながら歩いていると、あっという間にフードコートに着いた。
私たちは適当なテーブル席に座る。
「水取ってくるね」
「あ、悪い。ありがとう」
私は小走りで冷水機まで行く。
こういうのは基本男がやるものだと言われがちだが、私の場合は気配りができることを見せるために率先して水を取ってきたりする。まぁ、幼馴染相手に今更そんなアピールしたところで感なのだが……。
「よいしょっと。どうする? 何食べる?」
水の入った紙コップ2つをテーブルに置き、私はけんちゃんにそう聞いた。
正直、私はとてもお腹が空いている。
今の気分はもちろん肉。ガッツリ食べたい。でもそんなこと言えない。いや、全然言えるのだが、デートで肉食べたい発言はやはり気が引ける。
やはりここは無難に、けんちゃんの食べたいものに合わせるべきだろう。
「んー、うどんにしようかなぁ……。安いし暑いから冷たいうどんでツルッといきたい気分だなぁ」
……うどんかぁ。
いや全然いいんだけどね。でもまぁ、天ぷら、付けよ。
「うどんか〜、いいね、私もうどんにしよっと」
私たちは、2人一緒にうどんを買いに行った。
頼んだうどんを席まで持って帰り、手を合わせる。
『いただきます』
がっつく食べ方ではなく、1本ずつゆっくり食べる。
冷たいうどんだけでも美味しいが、大根おろしがさらに食欲をそそる。そしてサクッとしたかき揚げと天ぷら。うどんのつゆに浸し、軟らかくしてから食べるのも悪くない。
うどんもなかなか、けんちゃんにしてはいい提案だったかもしれない。
「ん〜おいし〜」
私たちはしばらくの間、食事を楽しんだ。
「ふー、ご馳走様」
「美味しかった〜、ご馳走様!」
本当に美味しかった。
ただまぁ、欲を言うならかき揚げもう1個食べたかったかな。ちなみに肉でも可。
「これからどうする?」
「んー……」
ここで帰るのも味気ない。
と言ってもどこか遊ぶ場所は……
(あ、確か昔にここで勝負したことがあったっけ)
過去の記憶を思い出し、私は提案する。
「ゲームコーナー、行かない?」
「いいね、行こう」
私たちはうどん屋さんにトレイと食器を返し、ゲームコーナーへ向かった。
ゲームコーナーは、フードコートのすぐ近くにある。
私はゲームコーナー内を散策しているように見せかけて、とあるゲームへと向かっていた。
「あれ! なつかし〜。昔けんちゃんとやったことあるよね」
そのゲームとは、エアホッケーだ。
私が中学生の頃、けんちゃんと対戦したことがある。あの時は、ひどい点差で惨敗したものだ。
「あの時のリベンジよ!」
「返り討ちにしてやる」
お金を入れ、私はマレットを持ち、構える。
私の先行。
私はパックを強く壁に反射させた。昔、けんちゃんによくやられた技だ。パックはけんちゃんのゴールに迫るが、
「甘いな!」
と、簡単に打ち返されてしまった。打ち返されたパックはさらにスピードを上げ、壁に反射し、私のゴールへと入っていく。
「えっ……。む〜」
あまりの速さに驚いてしまった。やはり一筋縄ではいかなそうだ。
けんちゃんがどんどん点を取っていくが、私も負けじと食らいついた。始めは、けんちゃんと一緒にいられる時間稼ぎになればと思っていたが、いつの間にか本気になっていた。
両者互角のまま、マッチポイントになる。
「はぁはぁ……。これで、負けた方が勝った方にアイス奢るってことでいい?」
ご褒美があればさらにやる気が出るってものだ。
「いいぜ、はぁはぁ……。まぁ負けねえけど!」
「私こそ!」
パックは私が持っている。お互いの間に緊張した空気が流れている。
(ここは、あの手を使うしかない……!)
「あ!」
と私はゲームコーナーの外を指す。つまらない、古典的な手だ。
しかし、けんちゃんはつられて外を見た。
「スキあり!」
と、私は思い切りパックを打ち出した。けんちゃんはまだ外を見たままだ。
パックがけんちゃんのゴールへと、入っていく。
「やったー! 私の勝ちね! アイスおっごり〜」
リベンジ成功だ。私はついガッツポーズをしてしまった。
気分は良い、そのはずだった。
「ちょ、ちょっとまってて!」
急にけんちゃんがゲームコーナーの外へ出ていく。外には何も無いはずだ、だってさっきのは適当な嘘なのだから。
私も急いでけんちゃんの後を追う。
「どうしたの?」
けんちゃんは、何かを探している様子だった。
「あ、いや、大したことじゃないんだ。本条がいた気がして」
……ほんじょう?




