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建前男子と本音女子  作者: とりけら
高校1年生編
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買い物 中編 ② side:綾瀬琴葉


 水着の種類、増えてるなぁ〜……。

 私はゆっくり歩きながら店内を見回す。やはり1年も経つと、品揃えが全く違っていた。


(正直、私あんまり成長してないから、去年のまだ着れると思うけど……まぁいいや)


 とりあえず、目的は水着を買うことではない。けんちゃんの好みの水着を探ることだ。となると、鈍感なけんちゃんには、片っ端から水着を見せていくのが効率が良さそうだ。


「けんちゃんけんちゃん、これなんてどう?」


 私が見せたのは、去年買った水着と似ているやつだ。

 ついつい、私の好みで選んでしまった。


「いいんじゃね?」


 いいんじゃね……? いいんじゃねって何? いいの? 喜んでいいの?


 よく分からないまま、私は次の水着を手にする。

 マネキンが着ていたワンピースタイプの水着。どうやらこのお店のオススメらしい。


「じゃあこっちは?」


「いいと思う」


 いいと思う……? 思う……?

 あんまりなのかな? さっきよりは反応が悪い気がする。ならワンピースタイプはやめて次の水着にしよう。


 日焼けが気になる人向けのフィットネス水着。

 見た目は地味だが安心安全というのがウリ。……まぁ、私はけんちゃんに私の身体を見て意識して欲しかったりするけど? 一応好みかもしれないし提案してみる。


「似合う似合う」


 似合う似合う? 実際に着ているわけでもないのに似合う似合う?

 ……もしかしてさっきから適当に答えてない? 怒りがふつふつと湧き上がってくる。


「ねぇ、適当に答えてるでしょ!」


 また声を荒らげてしまった。せっかくのデートなのに。デートじゃないけど。


「いやそんなことは無いけど……」


「じゃあちょっと試着してくるから。試着室の前で待機!」


 あぁ……もう……。結局いつもこうなる。大人しくしているのは私に合わないのだろうか。

 項垂れながら試着室で水着に着替え始めた。


 1番初めに選んだ水着に着替え、鏡に映った自分の姿を見る。


「わぁ……」


 思った以上に布が少なく、私は声が出てしまった。

 この姿を今からけんちゃんに見せると再認識した瞬間、顔が熱くなるのを感じる。

 しかし、もう後には引けない。私は静かに1回深呼吸をした後、試着室のカーテンを開けた。


「に、似合う?」


 赤くなった顔を見られたくないと思い、つい俯いてしまう。


「か、可愛いと思う」


 その言葉を聞いた瞬間、私の顔がさらに熱くなるのを感じた。


(可愛い、だって……)


 可愛いなんて言葉、けんちゃんの口から初めて聞いた気がする。

 俯き続ける私の顔はきっとまだ赤い。でも、きっと世界一幸せな顔をしているだろう。


「そ、そう……。ありがと」


 しばらく沈黙が続いたが、心地よい沈黙だった。

 しかし、いつまでもこうしている訳にはいかない。


「あ、わ、私、この水着にするね! 着替えてくるから!」


 私は勢いよくカーテンを閉める。


「お、おう」


 カーテンを閉める音の中で、僅かにけんちゃんの返事が聞こえた。


(はぁ……)

 

 私はその場にしゃがみこんでしまった。

 もう、ずるい。ずっと素っ気ない反応だったのに、急に可愛いだなんて……。


「す、き……」


 私は小声でそう呟く。

 すぐ側に、カーテンの裏にけんちゃんがいるのに。

 心の中では普通に何度も言えるのに、実際に声に出して言った途端、心臓の鼓動が早くなるのを感じる。どうやら私はかなりけんちゃんのことを……って色々と考えてしまうが、今はその時ではない。


(……よし)


 ぺちぺちと自分のほっぺを軽く叩き、目を覚まさせる。

 今日のデートは終わってないのだ。まだまだこれから!


「おまたせ。あれ、どうしたの?」


 けんちゃんが俯きながら、なにか考え事をしているようだった。


「いや、なんでもない」


「そう? とりあえず水着買ってくるね」


「わかった、店の外で待ってるよ」


 私は水着を持ってレジに向かう。

 向かう途中、可愛い柄のラッシュガードを見つけた。これから買おうとしている水着は布が少ない。やはりラッシュガードも買っておくべきだろう。

 女の子だからやっぱり日焼けは気になる。日焼け止めも塗るが、ラッシュガードもあれば日焼け対策は完璧だ。

 私はついついラッシュガードも買ってしまった。


「おまたせー」


 意外にも大荷物になってしまった。


「琴葉、他にもなんか買った?」


「あー、バレた? ラッシュガードも欲しくて……やっぱ日焼けも気になるし」


「そっか。じゃあ、時間も時間だし、今度こそ飯行くか」


「おっけー! 私もお腹ペコペコだよ〜」


 朝ごはんを軽くしか食べてないから、お腹が空きすぎて水着を選んでいる時からお腹が鳴りそうだったのは秘密だ。

 私たちはお店を後にし、フードコートへと向かった。

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