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建前男子と本音女子  作者: とりけら
高校1年生編
24/168

買い物 中編 ②


 女性用水着にこんなに種類があるとは思わなかった。

 結構本気で、この場にいてはいけない感があるが、ここで逃げたら琴葉が怒る。俺はなるべくきょろきょろせずに、下の方をずっと見ていた。


「けんちゃんけんちゃん、これなんてどう?」


 琴葉が手にしているのはビキニタイプの水着だ。全体的に黒色で、フリルがついている。少し大人っぽさを感じる気がする。色違いで白色もあるらしい。


「いいんじゃね?」


 無難に似合うと思った。琴葉の体型は、言うなれば細めの方だから全然似合うだろう。

 ……何も考えてはいない。断じて。


「じゃあこっちは?」


 次に琴葉が持ってきたのは、ワンピースタイプの水着だ。色はベースが赤、青、黒と三種類あり、花柄だ。ゆったりとしていてオシャレに見える。


「いいと思う」


 小学校、中学校の頃、琴葉の普段着はカジュアルなものが多かった。だから、ワンピースもきっと似合うだろう。


「じゃーこっちは?」


 今度は、フィットネス水着というものを持ってきた。長袖トップスとショートパンツ付レギンス型ボトム? で肌の露出が無い。色はベースが黒でカラフルなドットが散りばめられている、派手過ぎず地味すぎずといった感じだ。人目対策と日焼け対策で控えめな水着って感じがする。


「似合う似合う」


 ここまで来ると、琴葉にはなんでも似合うんじゃないかと思ってきた。正直、琴葉の好みで良くないか? と思ってしまう。

 まぁ、そんなことを考えていると、そろそろ言われそうな言葉がある。


「ねぇ、適当に答えてるでしょ!」


 これだ。


「いやそんなことは無いけど……」


 正直、最後の方は適当だった。ごめん。


「じゃあ、ちょっと試着してくるから。試着室の前で待機!」


 はぁ、とひとつため息をついた。

 いや、琴葉のことが嫌いな訳では無い。めんどくさいなとは思ったが。さっきから少し恥ずかしさを感じ始めたのだ。


 琴葉が水着を選んでいる間、俺はぼーっと琴葉の後をただ付いていく人になっている。

 そんな時、何やらひそひそと話しているのが聞こえてきたのだ。聞こえてきた方にちらっと目線を向けると、水着を選んでいたのだろう2人組の女性客が俺達の方を見ていた。

 注意深く、耳を傾けてみると、


「あの子達ってカップルかしら」


「いいわね〜青春だわ〜」


 と話していたのだ。

 まぁ傍から見れば、そう解釈するのは自然なことだと思う。男女2人が水着を買いに来ている、よくありそうなシチュエーションだ。


 琴葉とはただの幼馴染。何も気にすることは無いのだが、だんだんと恥ずかしさが込み上げてくる。本条との噂話の時と言い、どうやら俺は色恋沙汰の運が悪いみたいだ。


 そもそも、琴葉と2人で買い物をする自体久しぶりだ。思い返すと、俺は昔みたいにさらっと琴葉を買い物に誘っている。簡単に言えば、デートのお誘いだ。いや、ただの買い物だけどね?


 ふーっ、と、俺は静かに深呼吸をする。気にしたら負け。これはただの買い物だ。

 そう自分に言い聞かせていると、試着室のカーテンが開いた。目の前には、1番初めに持ってきたビキニを着た琴葉が立っている。


「に、似合う?」


 変に意識したらいけない、そう思うと逆に意識してしまうものだ。

 黒色の水着の大人っぽさが高校生になった琴葉に凄く似合っている。俺の知っている、中学生のころに琴葉はそこにいなかった。肌の露出が多いため、目のやり場に困る。


「か、可愛いと思う」


 俺はそっぽを向きながら言った。

 変なことを言ってしまった気がする。もう何を言ったか、よくわからない。心臓の鼓動の音がひどくうるさい。


「そ、そう……ありがと」


 互いの間に気まずい空気が流れる。何か言わないと思うのに、何も出てこない。


「あ、わ、私、この水着にするね! 着替えてくるから!」


「お、おう」


 試着室のカーテンが勢いよく閉まる。正直、琴葉の行動には助かった。何分もあの状況が続くことになりそうだったから。


 ふーっ、と俺はもう一度深呼吸をする。すると、落ち着いた俺の頭の中で一つの疑問が浮かんだ。


 俺が緊張している理由は、カップルに見えるという言葉のせいで変に今の状況に対して変に意識してしまったからだ。

 じゃあ琴葉が緊張している理由は? 琴葉も2人組の女性客の会話が聞こえていたのだろうか? いや、そもそも出かける直前からどこかおかしかった気がする。

 ……考えてもわからない。そもそも、人の気持ちがわかったら苦労しない。ぼんやりと考えていると、また試着室のカーテンが開いた。


「おまたせー。あれ、どうしたの?」


「いや、なんでもない」


 俯きながら考え事をしていたから、変に心配させてしまった。顔を上げ、作り笑顔をする。


「そう? とりあえず、水着買ってくるね」


「わかった、店の外で待ってるよ」


 俺は店の外のあったベンチに座った。するとお腹がぐー、と、小さく鳴った。

 スマホの画面を見ると12時を過ぎている。ご飯のことを考え始めたせいか、さっきまで考えていたことをすっかり忘れてしまっていた。


「おまたせー」


 琴葉が俺の前にやってきた。買ったのはビキニだけなはずのに、買い物袋が妙に大きいのが気になる。


「琴葉、他になんか買ったのか?」


「あー、バレた? ラッシュガードも欲しくて……やっぱ日焼けも気になるし」


 ならフィットネス水着を買えばよかったのでは……と言おうと思ったがやめた。

 この世には言ってはいけないことがあるものだ。特に女の子の買い物に対しては。


「そっか。じゃあ、時間も時間だし、今度こそ飯行くか」


「おっけー! 私もお腹ぺこぺこだよ〜」


 そして俺たちは、フードコートへと向かった。

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