買い物 前編
さて、何をしようか。
夏休みが始まってから3日が経った。初めの方は、一日中ゲームして適当にご飯を食べて夜更かしして昼頃まで寝るみたいな、だらけた生活を送っていた。
しかし、だんだんやることが無くなっていく。今はただスマホでネットサーフィンをしたり、SNSのタイムラインを意味もなく更新しまくっている。
自宅のリビングのソファに寝転がる。クーラーのおかげでちょうど良い温度だ。完璧な環境なのに、どこかつまらない。
ちなみに、宿題には手をつけていない。当たり前だろう、宿題は夏休みの最終日にやるものだ。今やる意味は無い。いや、あるけれど。大アリだけど。
SNSのタイムラインを見るのも飽きたため、動画投稿サイトをぼんやり見ていると夏休み前に作られた、例の8人グループからメッセージ通知がきた。
「明後日海だぞ! 忘れるなよ!」
SNSを通してまでも、淳の暑さが伝わってくる。
俺は適当に、了解と書いてあるスタンプを送った。既読はすぐつき、皆俺を真似て了解と書いてある色々なスタンプが送られてくる。
正直に言おう。海に行くことは把握していたが、日時はすっかり忘れていた。水着を買いに行きたいなぁと思いながらまだ行っていない。面倒くさがり屋が完全に出てしまっている。
カーテンを開けて外を見てみると、昨日よりも暑くて痛い日差しが差し込んでくる。窓を開けると生温い空気とセミのうるさい鳴き声が入ってきた。俺はすぐに窓を閉め、今日は外に出るのをやめようと思い、またソファに寝転んだ。
時刻はまだ10時だ。これからどんどん気温が上がっていく。こんな晴れの日は外に出たくないと思うのが、普通なはずだ。ちなみに明日も晴れだが。
そんなめんどくさいという気持ちを吹き飛ばす言葉。それは、時間が無い、だ。
今日か明日には水着を買いに行かなければ、海に行けない。今日は金曜日。明日は土曜日。
確実に、今日の方が明日よりも外出している人が少ないだろう。
(水着、か……)
俺は自分で水着を買ったことがない。
小中高とプール授業があったが、学校指定の水着だ。友達とプールや海に行ったことはあるが、小中学校の頃は家族とでもプールとかに行っていたから、親が買ってきた水着を着ていた。ちなみにその水着はきつくて断念した。……別に太ったわけではないけどね。
1人で買いに行くのもなんだし……と思って、武史とか、淳と一緒に買いに行こうと誘おうとしたが、サッカー部の練習があることを思い出して誘うのをやめた。
(しょうがないか……)
俺は、とある人にメッセージを送った。
5分後、了承のメッセージが返ってくる。
11時に集合。
時刻は10時半。俺はすぐに身支度を始めた。
携帯の画面には11:00の文字が映っている。
暑い。遅い。暑い。
半袖半ズボンにキャップ付きの帽子を被り、トートバッグを持っている。適当に選んだ服だ。
11:03、やっと扉が開く音が聞こえた。
「ごめんごめん、遅くなっちゃって」
「いや、大丈夫。いきなりメッセージ送った俺も悪いしな、いいよ」
俺は、俺の隣の家の玄関の壁に背を預けながら言った。
白いブラウスに薄い茶色の丈の長いスカート。黒いサンダルに夏っぽいかごバッグを持っている。全体的に控えめなコーデ、というやつだろうか。いかにも夏っぽい服装だ。
許して? と顔を少し横に傾けながら謝るポーズをとっている子がゆっくりと近づいてくる。
琴葉と一緒に出掛けるなんて、いつ振りだろうか。




