3人で
俺が教室に帰ると、琴葉が笑顔で迎えてくれた。
本条はというと、本を読んでいるようだ。
俺は琴葉に小さいペットボトルのオレンジジュース、本条にも同じものを渡した。お互いに、ありがとうと言われる。
琴葉がオレンジジュースを好きということは昔から変わらないから、無難な選択だ。しかし、本条の好きな飲み物がわからなかった。本人も俺に頼む時、甘い飲み物としか言ってなかったから冒険するのも怖くて、琴葉と同じオレンジジュースを買ったのだ。
「本条、オレンジジュースで大丈夫だったか?」
俺は恐る恐る本条に聞く。
「大丈夫、嫌いじゃないから」
「ならよかった」
安心した。本条からお金をもらっているのに、嫌いな飲み物を買うわけにはいかなかったからだ。
俺は安堵していると、本条がじっと俺の方を見てきた。
「どうかしたか?」
「まぁ、あなたが持ってるミルクティーの方が好きだけど」
「うっ……」
甘い飲み物。確かにオレンジジュースとミルクティーならミルクティーの方が甘い。
ミスった……
「……今から交換するか?」
「大丈夫よ、それにもう口つけちゃったんでしょ?」
「た、確かに……すまん……」
本条はオレンジジュースが入った小さなペットボトルの蓋を開け、飲み始めた。
逆に考えれば、本条はミルクティーが好きだということが分かった。プラスマイナスゼロ、俺は無理やりそう考えて開き直ることにした。
そうして俺たちは小休憩後も勉強を続け、約2時間、18時に勉強会を終え下校した。3人とも、帰り道は途中まで同じだ。
俺と琴葉が喋り、本条は何も言わずただ聞いてるだけ。それでも、本条に質問したり話を振ると答えてくれた。
本条の帰り道と俺と琴葉の帰り道が別れるまでの、15分くらいの何気ない会話。
この会話で分かった事が一つある。それは本条が、学校では琴葉が嘘の化けの皮をかぶっているのを知っていることだ。なぜなら、今、琴葉が俺に対して建前ではなく素で話しているからだ。
いつもの、俺が知ってる琴葉。多分、俺以外に見せたことの無い素の琴葉。
本条がいるのにその姿ということは、琴葉が既に素を本条に見せているのだろう。俺がいない間に、何かあったんだろうと確信できる。
「じゃあ、私こっちだから」
「じゃあな、本条」
「ばいばい」
本条は三叉路の左側へ、俺たちは右側へ向かっていく。
本条と別れた後、琴葉が口を開いた。
「私さ」
「どうした?」
「本条さんのこと苦手というか嫌いな方だけどさ」
「うん」
「多分、仲良くなれる気がする」
「そうか」
琴葉の口から聞いた言葉は、どういう意味で言ったかはわからない。けれど、嘘偽りない琴葉の言葉だったに違いない。




