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建前男子と本音女子  作者: とりけら
高校1年生編
14/168

朝の8時00分


 俺の顔がハンカチから解放された、つまり本条が泣き止んだ後、俺は本条に別れを告げてから自分の家に帰った。

 結局、一時間以上も話をしていたらしい。

 俺を見送る本条の顔は、いつものよく見る顔だった。ただすこし、笑っているように見えた。




 次の日、本条は学校を休んだ。やはり、まだ少し体調が悪かったらしい。

 昨日は無理をさせすぎた気がしたが、不思議とどこか安心感があった。本条は大丈夫だ、と昨日わかったからかもしれない。




 週が明けて、月曜日がやってきた。

 俺はいつもどおりの時間に登校すると、教室には既に本条が自分の席に座って読書をしていた。


「おはよ」


「お、おう。おはよう」


 本条からの軽い挨拶。久しぶりだからか、俺は少し戸惑ってしまう。

 机の脇にリュックを置き、自分の席に座る。

 1限の授業の準備をしながら俺は本条に話しかけた。


「本条」


 俺は本条の方を向きながら喋っていない。いきなり顔を見て話せないくらいには、緊張していたのだ。

 せっせとリュックから教科書を出し、机の引き出しに入れる作業をしながら本条に話しかけた。教科書を学校に置いていくのが好きではなかったから、毎日リュックが重い。


「なに?」


 よく見ていないが、本条も本を読むその手を止めていなかった。だから、本を読みながら返答したのだろう。


「もう体調は大丈夫なのか?」


「流石に1週間休んだらね」


「先週の金曜、休んだのって」


 本条が読んでいるページに本屋で貰えそうなしおりを挟み、本を閉じた。

 そして右手で頬杖をつきながら、俺の方を見て話し始めた。


「あー……念の為って言われて休んだだけだから。私、どうやらちょっとしたインフルエンザだったらしくて」


「そうだったのか」


 ただの風邪だと、本条から聞いていたから少し驚いた。どおりでなかなか学校に来れないはずだ。


 話しながらだと時間が短く感じるもので、あっという間に準備が終わり、一限の用意までしてしまっていた。することがなくなった俺は、まだ少し緊張していたがゆっくりと本条の方を向いた。


 「だからインフルエンザ、うつしてたらごめんね」


 するとタイミングよく、本条は笑顔でそう言った。本当の笑顔に見えない、小悪魔みたいな笑顔。

 どこか、本条の纏っていた雰囲気が前よりも変わった気がした。……まぁ、それほど付き合いは長くないから断言はできないが。


「俺はいつも通り元気だから、多分大丈夫だ」


 実際、体の調子は良かった。

 そもそも俺は、あんまり風邪にかからない方だ。

 バカは風邪をひかない、昔からよくそう言われてきた。バカではないけど。


「そう、ならよかった」


「あぁ」


 そこで会話が途切れてしまう。少しだけ気まずい空気が流れてるがわかる。

 本条は読んでいた本をしまってしまい、俺も1限の授業の準備を既に終えている。

 何か話すことはないかと考えていると、俺は大事なことを思い出した。


「そういえば本条って、友達いないらしいじゃん」


「なっ……ち、違うから。1人で居ることが好きなだけだから!」


 本条が怖い顔で俺を見ている。

 視線がすごく痛い。


「あ、いや、担任の先生が言ってて」


「もしかしてあんたがプリント届けに来た理由って……」


「あ、そういえば言ってなかったな……先生から見ると、本条の友達は俺だけらしくて」


「はぁ……」


 本条は頭を抱えてしまった。

 言われたくないことを、俺は言ってしまったらしい。


「俺が言うのも変だけど、友達は作っておいた方がいいぞ」


 建前の俺にとって、友達の存在は大事だ。学校の中で、クラス内のグループの中にいるためには、友達である必要がある。

 1人でいるのは楽だ。それは俺もわかっている。

 けれど、それでは学校の中では生きていけない。


「今更無理よ……」


 確かに、そろそろ7月が始まる。もうクラス内のグループは確立されたと言っても過言じゃない。

 この時期に友達になってくれる人は、誰にでも優しく接するいい人ぐらいだろう。


(誰にでも優しく接する女子、か)


 俺は心当たりがあった。

 同じクラスの、あいつなら。


「1人だけ、紹介できる奴がいる」


「誰?」


 本条が首を傾げる。


「俺の幼馴染だ」

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