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建前男子と本音女子  作者: とりけら
高校1年生編
106/168

挨拶 後編 side:本条花凜

「あっ、そう……あ、そう言えば琴葉から聞いたんだけど」


「えっ?」


 予想外の斉藤くんからの言葉で、私は固まってしまう。

 何を言われるのだろうか、あの時のことだろうか。

 いや、綾瀬さんは言わないはずだ。だって確信がないのだから。私の気持ちはバレていないはず。


 そもそも、綾瀬さんは言う人なのだろうか。確かに他言無用とは一言も言っていなかったが……もしかしたら。

 そんなことを考えている暇も与えず、斉藤くんは口を開く。


「琴葉が喜んでたよ、なんか本条と仲良くなれた気がするって言ってさ」


「……え?」


 喜んで……? 仲良く……?

 私の予想は大ハズレで、意味不明で。

 私は再び固まってしまった。


「……ん?」


 斉藤くんは不思議そうな顔でこちらを見ている。

 私の反応が予想外だったのだろうか。


「あ、いや、なんでもないです」


 私はすぐにそう返事をした。

 今1番ダメなのは、変に思われることだ

 ただでさえちゃんとした反応が、返事ができていないのだ。

 私はいつもの私、大丈夫。自然に、自然に……


「俺には何があったか分からないけど、まぁ琴葉の事よろしくな」


 斉藤くんは先程の私の反応は気にしていないようで、笑顔でそう言った。


「う、うん」


 ……なんだか斉藤くんのそうな顔を見ていると、あの時の(触れようとした時の)気持ちがふつふつと 湧き上がってくるのを感じる。

 って、また私は自分自身を見失いそうになってしまっていた。

 私は首を大きく横にふる。

 斉藤くんが再び不思議そうな顔で見ているが気にしない。


「あ、あの、本条?」


 なんなら不思議そうな顔だけでなく、心配されてしまった。


「私は普通だから大丈夫だよ!?」


 首を沢山振ってしまったからか、私は意味不明な返事をしてしまう。

 普通だからって、自分で言うのが1番普通じゃないのに。

 すると斉藤くんは急に笑いだした。


「なんか今日の本条、面白いな」


 斉藤くんは笑いながらそう言う。


「えっ?」


「いや、いつもの本条じゃなくてさ」


 ……やっぱりいつもの私じゃなかったらしい。

 いや、私自身もわかってたけどさ。なんかもう空回りしすぎてよく分からなくなってたんだよ……。

 そう、自分に失望していると斉藤くんは、

 

「そういう本条もいいと思うぞ」


 と、言った。

 その言葉を聞いて私は、一瞬、何も言えなかった。

 いつもの方が良かった、とか言われると思っていたから。

 しかし、私は勝手に思っていたらしい。皆が、斉藤くんがいつもの私を求めているって。

 だから、心が楽になったというかなんというか。嬉しい気持ちに、なった。


「そ、そうかな……」


 と、私は少し縮こまりながら小声で返事をする。

 照れ隠しなのはきっとバレバレだ。


「あ、もう1つ」


 斉藤くんは思い出したかのようにそう言う。


「なに?」


 また何か私が変なことをしてしまったのか。

 少し身構えてしまうが、


「おはよう本条」


 と、斉藤くんはいつもの挨拶をしてくれた。

 そういえば忘れていた。ずっと、どう言おうか迷っていた朝の挨拶だ。

 しかし、今はもう迷わない。


 斉藤くんが教えてくれたから。

 偽物の君が、本当の私を教えてくれたから。

 きっとこれも、私が斉藤くんに関わったことによる私自身の変化だろう。少しずつだけど、以前の私という高い壁が崩れていくのを感じた。


「おはよう」


 何も考えない、ごくごく自然な挨拶ができた気がする。

 きっと私は考えすぎていたのだ。

 本物の自分とか、本物の自分ではないとかじゃない。

 全部、本当の私だから。


「あ、その冷たい挨拶はいつもの本条だ」


 まぁ、私が問題を解決して嬉しい気持ちの余韻に浸っていたら、斉藤くんからの余計な一言で全部が台無しになったのは秘密だ。……笑顔で挨拶したはずなのになぁ。冷たいって……

 そんなこんなで、斉藤くんとは自然と話せるようになった。

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