表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
建前男子と本音女子  作者: とりけら
高校1年生編
101/168

体育祭終了 中編 side:本条花凜


 校舎の中は、午前と変わらない静寂に包まれている。

 私は少し小走りで教室に向かった。

 足音をあまり出さないようにして走っても、パタパタパタ、と足音が響いてしまう。

 先生がいないことを祈りながら私は走った。


 教室近くで私は一旦、足を止めた。

 なぜなら、また見てしまうかもと思ったからだ。まぁ、そもそも人がいるなら私の走っていた足音が聞こえているだろうが。

 それでも午前の、一種のトラウマのせいで忍び足になってしまう。


 教室の前のドアからゆっくりと教室の中を覗く。

 教室の左後ろの方には誰もいない。

 そのまま右へ右へと視線をずらしていく。すると、教室の右後ろの隅に人影を捉えた。

 見つけた瞬間、私は驚いて肩がビクッとなり咄嗟にしゃがんでしまった。どこかゴキブリを見つけてしまったかのような反応になったので、見えた人影には心の中で謝っておく。


 人影は誰なのか、私はゆっくり背を伸ばし人影の方を見る。

 そこに居たのは、案の定斉藤くんだった。

 肩の力がふっとなくなり、私はため息をつく。よかった、綾瀬さんはいないんだ、私はそう思った。

 斉藤くんはどうやらぐっすり寝ているようだ。


 ここまで走ってきた私の足音で起きないとは言え、私は足音を殺して自分の席へと向かう。

 教室の中はちょっとした音でもとてもよく聞こえる。

 斉藤くんの寝息、私の足音、グラウンドからの応援の声、そして私の鼓動の音。


 ドキドキと、さっきから私の鼓動は速い。

 それは斉藤くんが起きるかもしれないという恐怖からなのか、はたまた違う理由なのかはわからない。

 鼓動の速さとは裏腹に、私はとてもゆっくり私の机へと向かっていた。

 何分経ったかはわからない。けれど酷く長く感じる。


 ようやく私は自分の席にたどり着くことができた。

 机の脇に置いてある自分のリュックのチャックをゆっくりと、音があまり鳴らないように開ける。

 お目当てのもの、ハンカチはリュックの底の方にあった。

 私は見つけたハンカチをリュックから取り出し体操服のポケットに入れると、リュックのチャックをゆっくりと閉めた。


 後は教室から出てグラウンドへ戻るだけだ。

 そう、戻るだけなのに、私の視線は教室の外ではなく自然に斉藤くんの方を見ていた。

 斉藤くんは変わらずとても気持ちよさそうに寝ている。

 そんな姿を見て、私はふと思ってしまった。思ってしまったんだ。


(私はこの人に、はっきりとはわからないけれど。多分、恋をしていたんだなぁ)


 って。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ