表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

地球はヤバかったby宇宙人

作者: 音無威人
掲載日:2019/04/20

「ほぉ、あれが地球か」

 全身を銀色に輝かせた何者かが呟いた。彼ら――いや、地球外生命体に性別差があるのかどうかは分からないが、ここは便宜上そう呼ばせてもらいたい――は宇宙人である。

 数多の星を侵略してきた彼らは次の標的を地球に定めたのだった。


 一見するとまるで同じに見える彼らだが、注意深く観察すると微妙に違っていることが分かる。

 大きな黒一色の目がひときわ吊り上がって見える宇宙人が言った。

「どんな星だろうと我々には敵わない」


 間もなく、宇宙船が地球に降り立った。そこから飛び出した宇宙人たちは、世界中に散らばっていく。これは彼らの作戦で、各地から一斉に攻撃を仕掛けようとしているのだ。

 彼らは自分たちの作戦が失敗するとは思っていない。今までもそうやって、星を侵略してきたからだ。

 ――しかし彼らはこの後、地球にやってきたことを思いっきり後悔することになる。





「ひょおー、これが海っすか。おれっち、初めて見たっすよ」

「はいはい、それぐらいで騒がないの」

 男女のカップルに擬態した二体の宇宙人が海に降り立った。そこは海水浴の客で賑わっていた。

「地球人はのんきね。これから侵略されることも知らないで」

「やっほー。さっさと地球人をやっちゃいますよ」

 レーザー銃を構えた二体が地球人に狙いを定め、引き金を引こうとした。

 その次の瞬間、「きゃああー」と悲鳴が響き渡る。

「我々はまだ何もしていないぞ」

 二体が首をかしげた。その間も、周囲から次々と悲鳴が上がる。海にいた人々は我先にと砂浜へ上がる。

 その元凶は宇宙人たちの間近に迫りつつある。そう海にはやつがいる。

「がばっ」

 ――サメが!

「えっ」

 ばくん。宇宙人の上半身は消えた。

「あああああ」

 仲間の死を目の当たりにしたもう一方の宇宙人は叫び声を上げ、ズガガガとレーザー銃を浴びせた。サメの勢いは止まらない。

「嘘でしょ」

 宇宙人は唖然と突っ立ったまま、飲み込まれた。





「うわああああ」

 宇宙人たちはパニックに陥っていた。仲間たちが次々と死んでいったからだ。

 彼らはサバンナにいた。そうサバンナには奴らがいる。百獣の王ライオンが、地上最速の生き物チーターが、サバンナの掃除屋ハイエナが。

「な、なんなんだよー。お前らは!」

 サバンナの猛獣と出会ったが最後、宇宙人と言えど無事では済まなかった。まさに地獄絵図。赤子の手を捻るかのごとく、猛獣は宇宙人を食らっていった。

「これでも食らえ」

 一体の宇宙人がレーザー銃を発射し、猛獣の頭を吹き飛ばした。

「や、やったぞ」

 喜んだのもつかの間、すぐに慌て始める。

「や、やめろー」

 右腕をライオンが、左腕をチーターが、頭をハイエナが。猛獣の群れが彼らを飲み込んでいく。

 圧倒的なまでの数の暴力。猛獣の群れの前に、宇宙人たちはなすすべもなかった。





「やめてくれー!」

 数体の宇宙人が、ジャングルの木々の間を縫うように疾走していた。仲間の悲鳴を背に、ふりかえることもなく駆け抜けていく。

 そうジャングルには奴らがいる。人を丸呑みするアナコンダが、血を吸うヒルが、毒を持つタランチュラが。

 そこへ先頭を走っていた宇宙人が、アナコンダに巻き付かれたかと思うと、あっという間に丸呑みされる。

 他にもヒルに全身を覆われた者や、ミイラのように干からびた者、あるいはタランチュラの毒で息絶えた宇宙人など、そこには目をそむけたくなるような光景が広がっていた。


 ある宇宙人は仲間の死を前にして、震えが止まらなかった。別の宇宙人は絶望した。こんなはずではなかった。我々は狩る側だったはず。

 宇宙人たちは逃げ続けた。ジャングルの先に川が流れていた。迷うことなく飛び込む。

 助かったと思った。地獄は終わってないとも知らず。

「あぎゃ!」

 全身が痺れ、体中に痛みが走った。手足が食いちぎられる。

 そうアマゾン川には奴らがいる。高電圧を生み出す電気ウナギが、肉食のピラニアが、噛む力が強力な巨大ワニが。

「た、助け……」





「うわああ、ば、化け物ー!」

 その宇宙人は奇声を上げ、木の上に登った。ここなら大丈夫だろうと安堵する宇宙人を尻目に、"それ"はやってきた。

「う、嘘だー」

 "それ"はゆっくりと木を登った。確実に迫りつつある"それ"に宇宙人は気を失う。力をなくし、落下する宇宙人の頭に、"それ"はむしゃりとかぶりつく。

 そう山には奴がいる。――クマが!

 巨体を揺らし、宇宙人を食べつくしたクマは次の標的へと向かう。腹を空かせたクマにとって、宇宙人は格好の餌だった。





「なんで死なないんだよー!」

 宇宙人たちは雄たけびを上げながら、レーザー銃を乱射した。恐怖に慄く宇宙人たちの前で、奴らは何事もなかったかのように立ち上がる。腕は逆方向に曲がり、足は千切れている。それでも奴らは歩みを止めない。

「きゃあー」

 奴らに噛まれながらも、一心不乱にレーザー銃を振り回す宇宙人。レーザー銃が奴らの脳天に直撃した。鈍い音を響かせ、奴らの歩みがようやく止まる。

「そうか。奴らは頭を壊せば死ぬのか。みんな頭だ、頭を狙え」

 リーダー格の宇宙人が叫ぶ。呼応するように仲間たちがレーザー銃を構え、一斉に撃ち始めた。奴らの脳みそは散らばり、宇宙人たちは安堵のため息をつく。

「大丈夫か」

 リーダー格が奴らに噛まれながらも必死に戦った宇宙人の労をねぎらう。しかし何の反応も見せない。

「おい、しっかりしろ」

 宇宙人は急に顔を上げ、リーダー格の首筋に噛み付いた。

「ぐああ、な、何をする!」

 宇宙人は狂ったように噛み続け、ついにリーダー格は動かなくなった。

「何をしてるんだよ、お前は」

 別の仲間が宇宙人の肩に手をかける。振り向いた宇宙人の顔は……奴らとそっくりだった。

「なんだこれはー!?」

 死んだはずのリーダー格が立ち上がる。リーダー格と宇宙人は仲間に襲い掛かった。

「やめてくれー」

「何が起きてるんだよー」

「死にたくねえ、死にたくねえよー」

 宇宙人の死体が増えるに連れ、奴らの数も増していった。

 そう墓場には奴らがいる。――ゾンビが。





「な、何よ? 何が起きてるのよ?」

 船内はパニックに陥っていた。宇宙船が揺れ始めたからだ。まるで異常気象にでも遭遇したかのごとく。突然、宇宙船のコントロールが利かなくなったのだ。

「何でだよ。何で操縦できないんだよ」

 操縦士は必死で操縦桿を動かした。高度が徐々に下がっていく。

「このままじゃ墜落しちまう!」

 下は海だった。そう海にはあれがある。――魔の三角地帯バミューダトライアングルが。

 彼らはバミューダトライアングルの上空にいた。魔の三角地帯に入ってしまった。

 嘘か真か分からないバミューダの闇に囚われ、彼らは消息を絶つ。人類は誰も気づかない。宇宙人の存在は明らかにされていないのだから。




 同じころ、日本の首都東京ではある光景が展開されていた。

「あら、あなたいい男ね。好みだわ。私と良いことしない?」

 その宇宙人は囲まれていた。逃げ場はどこにもない。本来なら、人類は恐れるに足らない存在。にもかかわらず、彼の足は一歩も動かなかった。

 気圧されたのだ、目前に立つ存在の威圧感に。

「さっ、こっちよ。私たちの店に行きましょ」

 彼は連れて行かれた。詳細は省くが、意外と悪くなかったらしい。

 ここは新宿の二丁目である。そう新宿二丁目には彼、いや、彼女たちがいる。

 宇宙人は彼女たちとの出会いで、本当の自分を知った。

 そして地球侵略など忘れて、銀色に光らせた派手な全身をさらに色とりどりに着飾ると、腰を振りながら盛り場に消えていく。

 この何年後かには二丁目界のニュースターとして名を馳せることになるが、それはまた別の話である。




 一方、京都では壮絶な戦いが繰り広げられていた。

 窮地に立たされた宇宙人たちは自ら、戦闘に特化した精鋭部隊を作って、この地へやって来たのだ。

 だがしかし精鋭部隊も徐々に追い込まれていった。

 戦いを得意とする者のみが集まった部隊だ、決して遅れを取るはずがない、そんな彼らの思いを打ち砕こうとする圧倒的強者それは――

 

「くそっ、聞いてねえぞ。弱いはずじゃなかったのかよ。にんげ……ぐふっ」

 手足が吹き飛んだ。一瞬の油断が命取りになる。宇宙人たちが息を呑み、目の前にいる一人の人間を見る。

 その人間は奇妙な符を持っていた。

「陰陽師のわしと出会うたのが運の尽きよ。主らは宇宙人なんじゃろ? せいぜいわしを楽しませてみせろ」

 陰陽師の男が狂気的な笑みを浮かべ、呪文を唱えた。符は形を変え、式神となる。

「ぐはっ」

 宇宙人の戦闘特化部隊は式神に翻弄され、その命を散らしていった。たった一人の人間に手も足も出ず。

「大したことないのぅ。ちっとは根性みせんか。わしは退屈なのは嫌いなんじゃ。本気を見せてみい。ぬしらも地獄は見とうないじゃろ?」

 頭に血が上った数体の宇宙人が陰陽師の男に襲い掛かる。


「――私も混ぜなさいよ」

 鮮血が舞う。宇宙人の体には無数のクナイ。新たなる参戦者はくノ一だった。

「わしの邪魔をするとは何事じゃ。いくら主でも許さんぞ」

 陰陽師の体から殺気が膨れ上がる。宇宙人たちは一歩も動けない。

 くノ一は涼しそうな顔で陰陽師に近づく。

「何よ。可愛い恋人が助けに来てあげたのにつれないわね」

 二人は恋人同士だった。


「主に来て欲しくはなかった。わしの戦いを見たら、惚れ直すに決まっておるからのぅ」

 陰陽師の言葉にくノ一が頬を染める。

「ス・テ・キ」

 二人はドがつくほどのバカップルだった。

「ふざけるんじゃねえー!」

 戦いに明け暮れ、恋人もいない宇宙人たちは嫉妬に狂い、バカップル目掛け、一斉に襲い掛かる。

「うるさいのぅ」

「邪魔」

 バカップルの一撃で、宇宙人の戦闘特化部隊は壊滅した。





「ゴーゴー」

 アメリカの荒野でもまた宇宙人たちは追い詰められていた。

「ハッ」

 馬に乗って駆ける男たちは、巧みなロープ捌きで宇宙人たちを捕らえていく。

「た、助けてくれー」

 身動きの取れなくなった宇宙人は助けを求めるが、肝心の仲間も虫の息なのだ。その間にも銃声が鳴り響く。

 大地は血で染まる。バッタバッタと宇宙人たちは倒れていった。

 そうアメリカの荒野には彼らがいる。――カウボーイが。

「ハッハー、宇宙人を捕まえたぜ」

「何体か殺しちまったけどな」

「宇宙人だぜ。死体でも十分だろうさ」

 カウボーイの目当ては懸賞金である。この地ではさっそく、宇宙人に懸賞金がかけられていたのだ。





「ハッ」

 中国の地に降り立った宇宙人は、一瞬にして地獄に突き落とされた。レーザー銃の嵐をかいくぐる一人の人間の手によって。

「かかれ、かかれ、なんとしてもあの男を止めろー!」

 リーダー格の宇宙人が手下に指示を出し、男を止めようとする。絶対に止めなければならない、この男を止めない限り、地球を侵略できないのだから。

「ふんっ」

 男の拳が、宇宙人の体を捉える。天高く舞う宇宙人の群れ。誰も男の勢いを止めることができなかった。

「ありえない。ありえない。俺たちはこれまで数多の星を侵略してきたんだぞ。なのになんて様だ。こんなことってあるかよ」

 残るはリーダーだけだった。しかしもはや戦意はない。目前に迫る死の気配にひたすら怯えるのみ。

「――発勁」


 男の拳による衝撃が、リーダーの体を貫く。全身に生じる衝撃に耐え切れず、リーダーの口から緑の液体が飛び散る。意識が薄れゆく中、リーダーが最期に見たのは、つまらなそうに拳をぬぐう男の姿だった。

「弱いな。思ったよりも」

 男が冷めた目で宇宙人に視線を向ける。

「どこかに強者はいないものか」

 そう中国には彼がいる。――中国拳法の達人が。





「ええい、どうなってるんだ? なぜ通信が途絶える?」

 地球に送り込んだ侵略部隊の通信が次々と途絶えたことに、全部隊を統括する宇宙人のボスは焦っていた。

 ボスにとって初めての事態だった。今までの侵略で、部下との通信が途絶えたことは一度としてなかった。だからこそボスは焦りに焦っている。いったい何が起きているのか、彼には見当もつかなかった。

「ボス! と、とんでもないことが分かりました!」

 部下の一人が驚きの声を上げた。彼は侵略部隊の通信が途絶えたことを受け、地球についての情報を片っ端から調べた。その結果、衝撃の事実が浮かび上がったのである。

「我々だけではないのです」

 部下はそう言って、データをモニターに出した。

「こ、これは!?」

 モニターには、地球を侵略しようとした勢力の情報が映し出されていた。彼ら宇宙人がやってくる前に、すでに地球を侵略しようとした奴らがいたのだ。

「バ、バカな? そんなことがあってたまるか」

 彼らの前にも侵略者がいた。だが地球の支配者は今でも地球人である。その事実が示しているのはただ一つ。

「誰も成功しなかったのか?」

 地球を侵略できた勢力はいないということ。ボスは恐怖した。モニターに映し出されている勢力は、どれも宇宙で名を馳せている猛者たちだったからだ。宇宙に勇名を轟かせる猛者でさえ、地球の侵略に成功していない。

 ボスの自信は打ち砕かれた。無論、ボスだけではない。宇宙船に残っていた宇宙人すべてが、地球に対して恐怖心を抱きつつあった。

「いったい地球には何がいるというのだ?」





 誰かが言った。過去にタイムスリップしようと。地球の()は征服できなくても()()なら支配できるかもしれないと。進化する前の地球ならたいしたことがないだろうと。今地球にいる何かが脅威になるなら、その何かが生まれる前に行こうと。その意見にボスは賛成した。

 彼ら、宇宙人は太古の昔、一億年前へとタイムスリップする。


「うひょー、これが一億年前の地球か。なんもねえなぁ」

「これから我々が作るのだ。新しい時代を。新たな文明を。これより、地球は我々のものとなる」

 散っていった友のためにも、我々は地球を必ず侵略しなければならないとボスは燃えていた。

「――嘘でしょ?」

 唖然とした声が響いた。その声にボスは振り向く。彼の目には予想外のものが映った。

「なんだ、あれは?」

 彼ら宇宙人を巨大な生物が見下ろしていた。鋭い牙と爪を持つ生物はヨダレをたらりと流し、宇宙人に襲い掛かる。

「うわああああ」

 むしゃりむしゃりと一人の宇宙人にかぶりつき、巨大な生物はニタリと笑った。

「ああああああ」

 宇宙人はパニックに陥った。一人一人、また一人と食われていく。ボスはなすすべもなく、ただ見ている他なかった。

「そ、そんなぁ」

 絶望の声が響く。彼らはいつの間にか巨大な生物に囲まれていた。

 そう太古の時代には奴らがいる。――かつての地球の支配者、恐竜が。





「はぁはぁ」

 恐竜の襲撃から生き延びたのはたった一人だけ。命からがら逃げ出せた彼は、もはや虫の息だった。

「つ、たえ、なければ」

 最後の力を振り絞り、彼はまだ見ぬ宇宙の同志に向けてメッセージを送った。

 ――地球はヤバいと。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] こういうネタ好き [一言] 恐竜までを何とかして侵略できたとしても 地球側は日曜朝の人達とか アメリカのヒーローとか 放射能黒トカゲとか、それと殴り合ってるゴリラとか 挙句はパシフィックな…
[良い点] 超面白かったです。 地球ヤバいっ!!!
[一言] 笑わしてもらいました!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ