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第2章、第6話【親友】






 翌日、昼。

 新東雲学園のとある教室で戦いは始まっていた。


 「ふははははははは! その程度か! 貴様の力とはそんなものか!」

 「くっ……図に乗るんじゃねえぜ! まだまだこれからだ! 頭を洗って待っていやがれ!!」

 「僕たちは、負けない!」

 「おー……こんなところで負けてたまるかよ!」


 四人の戦士が啖呵を切って構えを取る。

 全員が己の利き腕に全てを賭け、相手を出し抜くことだけに全てを費やす。

 勝利に栄光はなく、敗北には絶望と屈辱が待っている。

 己の拳が敵の刃を砕くか、それとも刃が防御を貫くか、もしくは彼の手が敵の拳を包み込んで滅ぼすか。

 勝負は一瞬、たった一秒の時間で全てが決まる。

 勝負とはいつも非情なもの。

 相手に負を押し付けあう戦い、バトルロワイヤルというものだ。


 「ああ、流牙。洗うのは頭じゃなくて首だからな」

 「うるせえレイヤぁ!! オレは今、真剣勝負をしているんだぁ!!」

 「既に勝ち組が横から声をかけないで! 僕は負け組にはならない!」

 「あー、面倒くせえ」

 「いいだろう! ならば自分を超えて見せろ、矮小なる愚民どもぉぉぉおおおおおおっ!!!」


 ちなみにジャンケンです、悪しからず。


 「うぉぉぉぉおおおおおおおっ!!!」

 「はぁああああああっ!!!」

 「うらぁぁああああっ!!」

 「ジャンケン、ポンッ!!」


 昼食の買出しを決める戦いで一足先に勝利を収めた俺は溜息をつく。

 ただのジャンケンでここまで盛り上がれるこいつらは何なんだろう、と。

 先制でパーを出して一人勝ちしてよかった。あのふざけたテンションにはとても付いていけない。

 数秒後、勝利の雄たけびと敗者の慟哭が教室に響く。

 教室の皆様がたはと言うと、ああ今日も元気だね彼ら、と凄く寛大な目で見てくれている。頼む、止めてくれ。


 「ふははははー! 心の読める自分に掛かれば楽勝というものさー!」

 「くっそぉぉおおおおおおおっ!!!」

 「悪いね、流牙。僕もあがり」

 「うおー……俺と流牙の一騎打ちかよ、面倒くさい……」


 啓介と誠一の二人が勝利。

 最終決戦とばかりに対峙する相沢祐樹と網川流牙。

 勝者の二人はニヤニヤと笑いながら、二人の激戦の観客となるべくその場を離れる。


 「どっちが勝つと思う?」

 「流牙の負けに500ゴールド」

 「祐樹の勝ちに300ギル」

 「じゃあ、僕は流牙が絶叫するに600ガルド」

 「やるな」

 「てめえら全員、覚えてろよっ!?」

 「どうでもいいが、全員せめてこの世界の通貨を賭けないか?」


 賭けが成立していない状態で試合開始。


 「んー……俺は、パーを出す」

 「え、マジで? 言っちまっていいのかよ、ユウキ……よし、こいつは貰ったぜ」

 「ジャンケン、」

 「ポォォオオオンッ!!」


 出されたのはグーとチョキ。

 彼我の是非など聞くまでもない。

 そういう星の元に生まれた存在としてこの世に生を受けたといっても過言ない男は、数秒後に教室を飛び出していった。

 その右手に、勝者たちから賜った金銭を握り締めて。


 「ちくしょぉぉぉおおおおおおおおおおおっ!!!!」


 ああ、今日も平和だ。

 世間では連続殺人鬼や裏組織がどうのこうのだってのに。

 この心地よすぎる空間は何なんだろうね、ほんとに。

 ほんのりと涙が零れそうになるのを抑えて、すっと一度深呼吸をした。


 今日、舞夏の姿はなかった。

 一緒に受けている講義がひとつもないのか、それとも欠席しているのか。

 誰かに聞くのも何なので様子見の段階であるのだが、どうにも妙な違和感を拭うことはできない。


 「………………」


 小さい頃から直感だけは鋭かった。

 十日前のカイムとの『交渉』のときのような場の空気に対する違和感を感じ取っていた。

 嫌な予感がする、と勘が告げていた。

 舞夏がここにいないこと。更に言うなら、友人の一人の様子が少しおかしいということも含めて。


 「誠一」

 「…………ん」


 関係ないとは思いつつも、声をかけていた。

 野牧誠一は俺に声をかけられたことに気づくと、一秒ほど静止した。

 俺がそのことに疑問を覚える前に、口元に軽薄そうな笑みを作って少し苛立たしげに誠一は口を開いた。


 「なんだ、今の自分は機嫌が悪いのだ。少し気を抜くと見境なく襲い掛かるかも知れん」

 「この前やったゲームで大好きな召喚獣がイベントで殺されたからか」

 「くそがぁああああああっ!! なんだよ斬鉄剣返しって! 返すなよ! 前作からお世話になってたんだぞあいつにはぁあああっ!!」

 「風の噂だが、それ以降の作品にはもう出てこなくなったと聞いたことがある」

 「は、ははははは……そんな莫迦な……自分の永遠のヒーローなんだぜあいつは……きっといつか、いつか……!」


 燃え尽きたボクサーのように項垂れる誠一。

 いつもより僅かにテンションが高いのは疲れの反動か、それとも空元気か。

 どうにも『いつもの野牧誠一』とは違う気がする。

 いや、心境の変化や一時のテンションに身を任せているだけ、という意見も大いにあるのだが。


 「………………」

 「…………」


 どうにも、おかしい。

 具体的にどうとか言えないが、何かを隠しているような気がする。

 誠一は苦笑いをしていた。

 その瞳の奥は笑ってなくて、じっくりといぶかしむ俺を観察し続けているように感じた。


 「なあ、誠一。何か隠してないか?」

 「むう……むむむむむ」


 沈黙が続く。

 誠一は少し悩むように唸っていたが、それも長くは続かない。

 困ったような誠一の顔を俺は逸らすことなく見つめ続けた。決して誤魔化すなよ、と意思を込めて。


 「誠一」

 「……おーけーおーけー、分かったよ」


 ようやく、誠一がゆっくりと深い溜息をついた。

 マラソンを終えたランナーのような顔つきで、誠一は俺に近くに来るように手招きした。

 誰にも聞かれたくない話だ、と瞳が告げていた。

 真面目な話をしますよー、という合図を受け取って、俺は誠一がぐったりとしている机まで脚を運んだ。


 「カルネアデスの板、という言葉を知ってるか?」


 問いかけの始まりはそんな言葉からだった。

 誠一は休憩時間の合間の雑談のような軽さではなく、真剣な顔つきで俺に問いかけていた。

 俺も応じるように誠一の前の席を借りて座り、そしてゆっくりと首を振る。

 カルネアデスの板、聞いたことはあるが意味を正確に把握しているわけではなかった。


 「船が沈没したとき、二人の人間が海に投げ出された。彼らの前には一枚の板が流れてきた。

  それはあんまりにも頼りないもんで、二人で掴まったらすぐに沈んでしまう。

  二人とも海に浮かんでられる体力はなくて、板にしがみ付かなくちゃ死んでしまう。

  だが、二人で掴んだら二人とも死んでしまう。


  さあ、生き残るために相手を殺さなければならない。

  死にたくなければ相手を殺せ。なぁに、日本の法律上、罪に問われることはないから安心しろ」


 そういう意味の言葉だ、と誠一は語る。

 カルネアデスの板。生き残るために相手を殺さなければならない。


 「……それが、なんだよ?」

 「まあ、待て。これが基本知識だ。質問はこれからだ」


 そもそも突然語り始めた誠一についていけない、とは雰囲気的に言えない。

 誠一はプリントの裏に分かりやすく図解し始める。

 二人の人間と、一枚の板。絵の技術については何も言わないことにする。かろうじて板が形を保っている。


 「さて、お前が巻き込まれたとする」

 「ふむふむ」

 「ただしお前は絶対に助かる」

 「はい?」


 この場合、てっきり二人の人間のうちの一人が俺だ、とする例題じゃないのだろうか。

 それでお前は板をどうするか、とか相手を殺してでも助かるか、とかそういうことを聞くのかと思っていたが違うらしい。

 そもそも何でこんな話になっているんだろうか、と首をかしげていると。



 「つまり、お前は板だ。溺れた二人の人間のどちらかを助けることができる、どちらかを見捨てることができる」



 想像以上に厳しい質問に、一瞬思考が止まった。

 誠一は言う、お前は板だ、と。

 つまり二人の人間の生殺与奪を握っており、しかも助けられるのは最高でも一人だけという状況だ。


 「じゃあ、想像しろ。溺れた二人の人間を。そうだな、異性がいい。まずは友人みたいな異性を思い浮かべろ」

 「友人みたいな異性……」


 ふと、思い浮かぶのは赤髪の少女。

 俺がどうにも気になっている裏組織の住人、月ヶ瀬舞夏だ。

 こんな残酷な例に引き合いに出すのは気が引けるが、あまり女の友人がいないので彼女を思い浮かべることにした。

 遭難している人間の一人は舞夏、ということを頭に留める。


 「次はもう一人だな。こっちも異性だ、そうだな……不謹慎だろうけど、モデルは母親でいいか」

 「……、」

 「悪い、怒るのは当然だろうけど。それで頼みたい」


 ムッとしたが、それだけだった。

 俺にとってもう母さんのことは過去のことだ。もう、乗り越えてきた過酷だった。

 それでも思うことはある。

 霊核を、英雄の力を手に入れた今の俺なら、母さんを救うことはできただろうか、と。

 飛行機の墜落を止めることはできないだろうけど、負傷した母さんをこの背に背負って助けることはできたと思う。

 有り得ない幻想だと知りつつも、そう思ってしまう。


 「そしてもうひとつ条件を追加する。身内のほうは、板を差し出したとしても助からない可能性がある」

 「………………」

 「出血している、ってことにしようか。板に掴まって救助を待っても、数分も保たないかも知れない」


 誠一に悪気がないのは分かっている。

 俺の母さんがいないことは知ってても、それがひとつの災害の結果で死んだまでは知らないだろう。

 そして恐らくは出血が元で死んだだろうということは、直接会話した俺しか知らないことだ。

 ぐらり、と一瞬だけ脳が揺れるが、目を閉じて耐えることにした。


 「さあ」


 誠一が酷薄な表情で宣告する。

 容赦のない視線は気楽な野牧誠一とは別の存在のように見えて気持ち悪かった。


 「お前はどうする」


 助けられるのは一人だけ。

 心情的には誰だって家族を取ると思う。

 だが肉親を選んでも意味がなく、両方を死なせてしまうかも知れない。

 そしてどちらを助けたとしても、どちらかを見捨てたという結果が残る。それだけの重い業を背負うことになってしまう。


 あまりにも残酷な問題。

 あまりにも冷酷な問題だった。

 あまりにも救いがなさ過ぎて、思わず笑ってしまうくらい酷い話だった。



 「二人とも助けるに決まってる」



 だから、あんまりにもふざけた答えを返すことにした。


 「……、……あのな」

 「なんだよ」

 「問題の前提条件をあっさりと素っ飛ばさないでくれないかい」

 「だが断る!」

 「いや」

 「絶対にノゥ!」


 そもそも一人しか助けられない板であることが悪いのだ。

 板が強くなればいい。もっと大きく、丈夫で……いや、板という枠から飛び出して浮き輪にでもボートにでもなればいい。

 相手から用意された条件など打ち破れ。

 二つしかない選択肢に新たな三つ目を突きつけろ。

 いつだって目指し続けるのは、誰もが文句も言えないほどの最高のハッピーエンドなんだから。


 「…………あー」


 誠一は一度だけ唸った。

 やがて頭を乱暴に掻くと、くつくつと口の中で笑い始めた。


 「人生を舐めてやがるな、黎夜少年」


 屈託のない笑顔だった。

 一本とられたとでも言いたいのか、さっきまでの不気味な雰囲気が嘘のように霧散していた。

 誠一は右手の人差し指の第二間接に噛み付き、思考する。どうやら新しい癖のようなものらしい。

 見た目的には顎に手を当てて考え込む探偵のようだ、と俺は思った。


 「―――――自分には、それができなかった」


 えっ、と返す暇はなかった。

 誠一は突然立ち上がると、机の横に掛けていたカバンを手に取る。

 黒塗りの一般的な学生カバンの中からいくつかの物体を取り出し、俺の前に置く。

 何枚かの書類と、そしてリトマス紙のようなものを。


 「付いて来い、黎夜」


 手招きではなく、視線で誠一は告げていた。

 強制力のある意思の強い瞳。眼鏡の奥の瞳は今まで向けられていた温かいものとは違っていた。

 付いていったら後悔するかもしれない、とさえ思ってしまった。


 「パンドラの箱を開ける勇気があるのならな」


 何も知らないまま、友人関係を続けていく選択肢もあった。

 もう数分もしないうちに始まる講義のせいにして、誠一の申し出を断るという方法が確かにあった。

 野牧誠一は教室の入り口で待っている。

 次に俺が発する台詞を待っている。あるいは、無言で自分の後に続いてくるのを待っている。

 何も語ることなく、いつも歪めている口元を引き締め、無涯黎夜の回答を待ち続けている。


 「………………」


 俺は誠一を止めることはしなかった。

 同じように机から立ち上がると、何枚かの書類にリトマス紙を抱えて誠一の後を追う。

 絶望の詰まったパンドラの箱を開く。

 その先にも微かな希望と救いがあることを信じて、俺は再び裏の世界へと堕ちていく。




     ◇     ◇     ◇     ◇




 辿り着いたのは空き教室だった。

 学園都市だけに広大な学園内だが、それだけに使わない教室というものは出てくる。

 中には『此処、一度も使わなくないか?』と思ってしまう教室まであるのだが、予算の無駄遣いをしているわけではない。

 サークル活動や学部によって使うということもあるわけで、史学科の俺たちには一生縁のない教室などいくらでもある。


 「ここでいいか」


 野牧誠一は教室の中に入ると、俺を手招きして鍵をかける。

 これで誠一と俺の二人だけが三十人くらいが講義を受ける教室の中で、一対一で対峙する。

 俺は教室の中心部、ひとつの机に腰掛ける。

 誠一は教師がいる教壇に立つと、黒板の前に移動してチョークを取る。


 「ようこそ、無涯黎夜。このくそったれな世界へ」


 瞳に篭もる感情が獰猛に歪む。

 日常の人間から悪党へと転身するように纏う雰囲気が変わる。

 その言葉を受けて、俺は思ったままのことを告げた。


 「…………なにやってんの?」

 「おぉぉ、素で引かれてた……頑張って格好良い演出ってやつを演じようとしてたのに……」

 「ああ、悪い。話の腰を折ったか?」

 「ああ、折ったね。腰椎骨折って一生モノの大怪我だ。自分の心はズタズタになってしまいました、もう何をするか分かりません」


 こんな会話が、まだ出来る。

 俺が振ったわざとらしい言葉にも一々反応し、日常の言葉を返してくれる。

 これは誠一の迷いだと言うことが俺にもわかった。

 誠一は此処にきてもまだ、俺に何かを明かすことを嫌がっているらしい。

 話をする、と言ったのも誠一なのに。その話をしたがらないのも誠一で、俺としてはどうしていいのか分からない。


 「……あのな、黎夜」


 ぽつり、と一言。

 誠一が無表情のままに告げる。


 「自分はこの事実は隠しておきたかった。自分と、黎夜と、祐樹と啓介に流牙。このメンバーでの馬鹿騒ぎを壊したくなかった」

 「誠一……?」

 「だけどな、そうは行かなくなった。改めて自己紹介するぞ」


 友人関係が壊れることも覚悟して。

 恐らくは大学生活で一番壊したくなかったモノを犠牲にして。

 野牧誠一の日常が奪われることになろうとも、その結果として傷つくことになろうとも。

 そんなことはどうでもいい、と言外に告げて誠一は俺の目を見つめる。そしてゆっくりと、口を開く。

 パンドラの箱を開けるように。



 「裏組織『旅団』の構成員。及び技術部副主任、野牧誠一だ」



 呼吸が止まった。

 思考が凍結し、頭の中が何も考えられなくなる。

 いま、こいつは、なんて言った?


 「正確には『埋葬部隊』って場所に所属しているが、ほとんどの仕事は技術部のほうだな。

  主に霊核に関する研究と開発、及び調査ってところか。

  今は非常事態みたいなものだから、四番隊の指揮の一端を担っている。ああ、月ヶ瀬さんのところだな」


 旅団。

 霊核。

 裏組織。

 月ヶ瀬舞夏。


 日常の象徴であるはずの野牧誠一の口から、裏世界の単語が次々と流れていく。

 その瞳はもう日常の中にいる友人のものではない。

 一人の裏世界の人間として。友人である俺に対しても、その視線が友好的なものになることはない。

 パンドラの箱は開かれた。知ってはいけないことを知ってしまった。


 「ちょっと待て……誠一、お前は……」

 「何を驚く、黎夜。よく考えてみろ。有り得ない、なんて話じゃないだろう」


 誠一は黒板にチョークで描き始める。

 説明するときはよくプリントの裏に図解するのが誠一の癖のひとつだった。

 そんな日常の証も、今は気持ち悪いくらいの違和感で満たされている。

 誠一との出会いは一年前。俺たち五人を引き合わせた、あの入学式の思い出が黒く塗り潰されていく。


 「この新東雲学園都市は『旅団』を中心にした裏組織の隠れ蓑だ。

  木の葉を隠すなら森の中。

  閉鎖的な環境はひとつの要塞みたいなもんだし、多くの人がいても違和感がない」


 かりかり、と黒板に学園都市、と書き、それを丸で囲む。

 これそのものが裏組織が隠れ蓑として使う拠点である、と誠一は言う。

 あまりにも壮大な話すぎて置いていかれそうになるが、誠一は構うことなく話を続ける。


 「人口五千人……その中で学生三千人だ。

  そんなピーターパンも真っ青な世界が裏組織の温床なら、自分が裏世界の人間であることに不思議はない。

  この学園都市、そして東雲学園には何百人もの裏世界の人間が在学しているだろう。

  三千人の中の何百人……ほら、その中に自分が該当していても、別におかしいことじゃないだろう?」


 例えば裏世界の人間が三百人くらいとしたら、学生の十人に一人が裏世界の人間になる。

 決して低い確率ではない。それぐらい俺にだって分かる。

 この教室で講義を受ける生徒が三十人くらいだから、そのうち三人が裏世界に身を置いていることになるんだ。

 なら、誠一が裏組織の人間であったとしても、不思議なことじゃない。

 不思議なことじゃ、ないんだ。


 「……軽蔑するか?」

 「………………いや」


 即答できないことが悔しかった。

 舞夏のときはあれほど偉そうなことが言えたのに、いざ友人の一人に言われると衝撃が大きすぎた。

 思ったよりも俺は皆と過ごす馬鹿騒ぎが好きだったらしい。

 日常を確認するからこそ、非日常が認識できた。今ではそんな日常の光景も、全部が裏世界へと反転してしまいそうだった。


 日常と非日常が混ざり合う。

 いつの間にか俺を取り巻く世界が裏世界へと切り替わっていくような恐怖がある。

 俺はショックを隠しきれなくて、頭を抱えて嘆息した。


 「ああ、畜生……格好わりいなぁ」

 「当然の反応だと自分は思うがね。思ったよりも内に溜め込むタイプかい、少年?」

 「そんなことはない、と思うんだけど……」


 ひとつ、深呼吸をした。

 頭を振って雑念を追い出す。こんなことでは駄目だ。

 誠一は恐らく、俺らにとって一番隠しておきたいことを曝け出した。傷つくことを覚悟の上で。

 十日ほど前の舞夏のように。それがどんな結果になろうとも、俺を信じて話してくれたんだ。

 なら、俺はその信頼に応えなければならない。


 俺たち五人を繋げたのは野牧誠一だ。

 裏世界とか、霊核とか、そういった小さなことは度外視して、俺たち五人の聖域を作ったのは野牧誠一だ。

 中学の頃に喧嘩っ早い不良としての噂が流れて孤立していた無涯黎夜に声をかけたのも。

 その他各々の理由で孤立していた相沢祐樹や安藤啓介、網川流牙をまとめあげたのも、野牧誠一だ。


 そこに一切の合理的な計算はないはずだ。

 野牧誠一は俺たちを日常の象徴として、学園内での自分の居場所を作り上げたのだと思う。

 俺は頭を乱暴に掻くと、少しだけ息を吐く。


 「『まあ、そんなこともあろうよなぁ』」


 俺の言った言葉に誠一が目を見開いた。

 呆気にとられた友人の顔を見て、俺は思わず噴出してしまった。

 その言葉は誠一の口癖だった。誠一は鳩が豆鉄砲を食らったような顔をすると、同じように口元を歪めた。


 「ああ、そんなこともあるんだよ」

 「ぷっ……ククッ」


 直後、ついに二人で笑い転げることになった。

 二人しかいない空き教室に二人の笑い声だけが響く。

 ああ、安心した。

 俺たちはきっと裏世界の中にさえ、日常を持ち込むことができる。

 日常とか非日常とか、そんな小さな事情なんてどうでもいい、と笑い飛ばすことができる。


 「あー、あー、あー、笑った。一本取られてしまったか」

 「前に言ったじゃねえか。お前はギャグ要員だって、シリアスには向かねえんじゃねえかよ」

 「自分は、ギャグ要員だったのか……いや、まあいい。とにかく」


 ぱんぱん、と手を叩く。

 未だ引きつる口元を意図的に引き締めて誠一は言う。


 「どうしてカミングアウトしたかというとな、お前に協力してほしいんだ、黎夜」

 「協力……?」

 「詳しくは最初に渡した書類を参考にしてくれ」


 ふと、この教室に来る前に手渡された書類のことを思い出す。

 紙はA4の用紙に一枚のみ。

 書類というよりは簡易的な報告書。講義で使うようなプリントのような印象を受けた。

 中身を確認すると、無機質に文字だけで綴られた報告書であることが分かった。



     ◇     ◇     ◇     ◇



 『連続殺人鬼に対する案件――――総合技術部副主任、野牧誠一』


 本案件は現在、我が旅団で問題になっている連続殺人鬼の議題についてである。

 対象は新東雲学園都市に潜入の疑いあり。

 既に犠牲者は三人を超えているが、昨晩もまた犠牲者を出したという報告が日本政府によって通達された。


 被害者は三十代の女性。

 時刻は深夜の二時十五分。現場は閑静な住宅街の片隅。その殺害方法から同一犯と推測される。

 女性は仕事の帰りに襲われたと思われ、しばらく逃げ回り、最終的に住宅街の片隅に追い込まれた、というのが警察の見解である。

 警察は犯人の行方を追っているが、恐らくは犯人まで辿り着く可能性は薄いと考えざるを得ない。


 今はまだダミー(偽者)が効いているが、今後のことを考えれば無視はできない。

 裏と表の世界の組み分けのためにも、これ以上存在を隠すことはできない。我々はこうした事情から、隊のひとつを動かすことを決めた。


 使用するのは第四番隊、月ヶ瀬舞夏の部隊。

 ただし彼女自身はこの作戦から外し、もうひとつの案件である『無涯黎夜の霊核所持』について当たってもらうことになっている。

 指揮自体は副隊長が行う。よって、以下の要点を組織に対して要請するものである。


 1、四番隊の指揮及び人員の一時的な委譲

 2、住民に対する警戒令

 3、火急の事態を想定した戦場世界の手配と確保


 以上。

 不測の事態に備え、我々もまた同行する。この件についての時間制限は一週間。

 その期限を過ぎると同時に、指揮権限は元通りに旅団へと返上することを確約しておき……ここに要請を加えた報告書を終了する。


 コード『40458-B』



     ◇     ◇     ◇     ◇



 「旅団の上層部に自分が送った報告書だ。事態はそれで把握できるよな?」

 「霧咲孝之ってクソ野郎がこの学園都市で暴れていることは」

 「ジャック・ザ・リッパーの霊核者、誓約者であることは知ってるな?」

 「ああ、舞夏から聞き出したからな。とりあえずのことは把握しているつもりだ」


 おーけー、と誠一が満足そうに頷く。

 報告書に書いてあるのは霧咲孝之が四人もの人間を殺した事実とそれに対する対策だ。

 正確には五人もの女性をこの学園都市で殺害しているため、少しばかり前の報告書らしい。

 詳しい専門用語は分からないが、そこには舞夏が俺の監視のために任務から外されていることなども書かれていた。


 「舞夏は霧咲孝之の捜索には当てないのか? 相手が誓約者だってんなら、もう舞夏を出すしかないだろ?」

 「ああ、その通りだ。月ヶ瀬さんはつい昨日、正式に捜索隊に加わることが決定『してしまった』」


 何か引っかかる言い方だが、元々誠一はこういった言い回しを好むのであまり気にはしなかった。

 俺が気になったのは今になって誠一が俺に正体を明かした理由だ。

 誠一が特に気にしないなら、俺が霊核を宿した日から……いや、それよりも前から正体を明かしていたはずだ。

 例えば旅団が俺の霊核を手に入れたいのなら、舞夏ではなく誠一が交渉人になれば成功率が高くなるとは考えなかったのだろうか。


 「―――――夕べ、新たな事件が起きた。襲われたのはこの学園の生徒だ」

 「――――――っ!」


 その疑問を氷解させるように。

 むしろ俺の心臓を凍りつかせるように誠一はその言葉を口にした。

 それだけでは飽き足らず、誠一が続ける言葉はさらに俺の背筋を凍えさせる。


 「お前の、顔見知りだ」

 「なっ、ん……だと!?」

 「名前は草壁睡華、中学生だ。現場はとある路地裏、彼女がお前と初めて出逢った場所もそこだ」


 路地裏、中学生。

 まさか、と一人の少女の姿が俺の脳裏によぎった。

 信じたくはなかった。顔見知りが、少しでも世界で交差したような相手が、理不尽に命を奪われるなんて信じたくはなかった。

 だけど、可能性としては彼女だけだ。

 十日前、カイムと初めて戦った商店街の路地裏。三人の不良に絡まれていた中学生くらいの少女。


 「その子はな、お前に逢いたかったそうだぞ。助けてもらったお礼がしたくて、お礼の和菓子を抱えて何度も足を運んだそうだ」

 「……………………その子は」


 最悪の展開だ。

 草壁睡華という少女は俺を捜すためにそんなところまで来たという。

 つもり、どういうことだ?

 その少女を殺したのは、誰だ?


 「ふざけやがって……」


 目の前が真っ赤に染まる。

 憎悪が凄まじい勢いで俺を塗りつぶして行く。

 日頃は大人しくしている俺の中の英雄が血の高ぶりに咆哮している。

 その少女に危害を加えた霧咲孝之は許せないが、それ以上に俺のせいでそうなってしまった、という事実が悔しい。


 「ふざけ、やがってぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇええッ!!!」


 乱暴に机に拳を叩きつけた。

 木製の机は容赦なく破壊され、木の破片が俺の拳に突き刺さる。

 激痛が思考をクリアにする。

 どす黒い感情を押さえ付けようとしていると、誠一が若干慌てたように声をかぶせてくる。


 「まあ、待て。落ち着け黎夜。草壁睡華は襲われたが、大事には至っていない」

 「……っ……そ、そうか……良かった……」

 

 安堵する。

 草壁睡華の無事を確認したことで、何とか呼吸が落ち着いた。

 心の内側に溜まっていた黒い感情が僅かに霧散する。

 それでもドロドロとした苛立ちが完全に晴れることはなかった。もう、放ってはおけない、と思った。


 「ともかく、事態を早く収拾したい。第二、第三の学園関係者の犠牲は特に防ぎたい」

 「ああ、分かってる。俺に出来ることがあるなら、やらせてほしい」


 戦う理由が増えた。

 俺のせいで一人の女の子が襲われたようなものだ。

 なら、もう迷うことはない。

 こうして直々に裏世界の人間から許可された以上、もう大手を振って行動していい。


 「すまないな、今は人手が足りない。大部分の組織の誓約者は各地に散ってしまっている」


 誠一は現状を明かしつつ、とある物体を指差した。

 報告書と一緒に渡された物だ。見た目には小学生の理科の実験で使ったリトマス紙のようなもの。

 透明のスリーブに入っていて、直接はまだ触っていない。


 「とりあえず、まずはそれについて説明しようか」

 「リトマス紙っぽいな」

 「イメージはそんなもんだ。ちゃんと酸性やアルカリ性で赤くなったり青くなったりするぞ」


 それはただのリトマス紙だろ、と突っ込みたかったが飲み込むことにした。

 話が進まないからだ。

 誠一は何処から取り出したのか、手術などで使うような白いビニール手袋を右手に填めると、リトマス紙を掴む。


 「『英霊証明』という発明品だ。我が技術部が開発した自慢の一品だぞ。普段は白いままだが……」


 ビニール手袋に覆われた手で、スリーブの中から一枚の紙を取り出した。

 見た目には本当に紙切れにしか見えない物体。

 それを何の脈絡もなく、俺に向けて差し出した。俺は何も考えずにじっくりと見るためにとりあえず受け取ったが。


 「誓約者が一度、それに触ると……」


 突如。

 白いはずの紙が真っ黒に染まった。


 「おおっ……!?」

 「真っ黒に染まるわけだ。これで相手が誓約者か否か、見た目どおりシロクロはっきりつけられるわけだな」


 原理は説明してくれなかった。

 多分、聞いても分からないと思われたからだろうが、そんなことよりも目の前の不可思議現象に心を奪われていた。

 触るだけで黒くなるリトマス紙……『英霊証明』と言ったか。

 裏世界のアイテムのひとつをこの手に持っている、という事実に妙な感慨を俺は抱いたらしい。


 「なんか……俺が汚れているみたいでショックだ、真っ黒だな……」


 呆然というより、感心するように黒くなった紙片を見つめていた。

 すると、視線に耐えられん、と言うかのように紙の欠片はぼろり、と灰になったかのように崩れ去った。

 あ、と驚く声をあげると、誠一はしてやったりとでも言いたそうな顔で笑いながら言う。


 「これは使い捨てだ。一分もすれば英霊の毒にやられて自然に自壊する」

 「英霊の毒?」

 「誓約者が放つオーラみたいなもんだ。ひとつの身体に強大な力の魂が刻まれているわけだしな」


 人体には影響はない、と誠一は最後に付け加える。

 なら毒じゃなくて気とかのほうが格好良いと思うんだけどな、と心の中で呟くが口にはしない。

 どうにもこの前から霊核について不安を煽られっぱなしではあるが、今更な問題であるためどうしようもない。


 「十枚1セット、今なら250円でご提供」

 「金取るのかよ。しかも微妙に払える価格設定がマジっぽいぞ」


 スリーブに入った残り九枚の『英霊証明』を誠一は投げて俺によこす。

 慌てて掴むが、触っていいのだろうか、という思いでついつい腰が引け気味になってしまった。

 まあ、この教室まで持ってきたのも俺だし、直接触れなければ問題はないらしい。


 「まあ、冗談一割は置いといて」

 「残りの九割はなんだ!?」

 「優しさと嫌らしさで出来ております」

 「比率はどうなんだ!?」


 シリアスな空気に耐えられなくなったらしい。

 誠一の口調が砕けた日常口調になっている。どうやら彼のシリアスはカップラーメンが出来上がる時間と互角らしい。

 カラータイマーが鳴る前にとっとと日常へとお帰りいただこうと思う。


 「つーか、こんなの貰っても直接触れないんじゃ、スリーブから取り出せねえよ」

 「そうだな。霊核の宿し主であるお前がこれを使うには問題がある。本来ならこれは下っ端の装備だし」


 誠一は言いながら右手に填めたビニール手袋を外す。

 何となく予想がついて手を上げると、そこに収まるように絶妙なタイミングでビニール手袋が投げられた。


 「そんなわけで、使うならこの手袋も一緒につけてやる。お値段変わらず250円」

 「まだそのネタを引っ張るのか。今度、昼飯奢ってやるから」

 「まいどあり」


 何やらグダグダな裏取引を終えて、俺は『英霊証明』とビニール手袋を手に入れた。

 とりあえず日頃使うことはないので、どちらもカッターシャツの胸ポケットの中に入れておくことにする。

 使うときがあるとすれば、それは霧咲孝之を打ち倒し、最終確認として霊核を確認することくらいだ。

 まあ、使うまでもないと思うが、念のため。


 「じゃあ、本題に入ろう。もう次の講義で今日は終わりだろ? 昨日の事件が起きた現場に行ってほしい」


 昨日の事件の現場。

 草壁睡華という少女が襲われた裏路地のことだろう。

 改めて再確認すればするほど、奥歯を噛み締めたくなる悔しさが俺を襲う。

 誠一はそんな俺の状態を知ってか知らずか、構うことなく話を続ける。


 「そこに月ヶ瀬さんがいる。彼女から作戦内容を聞いて、補佐してやってくれ」

 「舞夏は俺が加わることに異論は挟まなかったのか?」

 「迷っていた様子だけど、そうも言ってられない状況だからな。うちの上司が説得したよ」


 少し不安になる内容である。

 出逢った途端に悲しそうな顔をしながら謝られてしまうのでは、と冷や汗を掻く。

 女の子には悲しそうな顔はしてほしくない。

 陳腐ここに極まれり、な思いではあるが、それが紛うことのない真実であるのだからしょうがない。


 「ああ、分かった。商店街裏の、あの喧嘩通りでいいんだよな」

 「そうそう。黎夜少年が中学生くらいのときに荒れて暴れてた、あの路地裏近辺」

 「いやなことを思い出させるなぁ……」


 中学生時代とは最も記憶を封印したくなる人生の恥部だと言う人が多い。

 俺もそのうちの一人であり、色々とそのときのツケは払ってきた。

 裏世界の顔としての誠一は人を思いやったり、空気を呼んだ言動はしないらしい。日頃はちゃんとしている、はずだが。


 「時間が惜しい、今から頼むぜい」

 「おう」


 こんな話を聞いて講義に戻れるはずがない。

 早くしなければ舞夏がいなくなってしまうかも知れないし、今更教室に戻るのも厳しかった。

 せっかく講義に出ても集中できないようでは、講義に出る意味はあまりない。

 俺は誠一への別れの挨拶を適当に交わすと、教室を出て真っ直ぐに校門へと向かうのだった。



     ◇     ◇     ◇     ◇



 「………………」


 一人、空き教室に残された誠一も講義に戻ることはなかった。

 別にこれから組織活動があるわけではない。

 ただ気分が乗らなかった、ぐらいの理由だった。たまに上司である高原希から『ちゃんと出なさい』と叱られることもある。

 誠一は鞄の中からプリント用紙とシャーペンを取り出した。


 「さって、と。暇つぶしに小説でも書くとしましょうかねー」


 プリントの裏には小さな文字がたくさん書いてあった。

 他人が見れば意味のない言葉の羅列にも見えるが、誠一は独自の考えで物語を纏めていく。

 空き教室にたった一人。

 彼はこれから書いていく文を謳うように朗読しながら、プリントに新たな文字を書き足していく。


 「『かくして、主人公は信頼する友人の言葉を信じ、再び死地へと舞い戻ったのだった』」


 誠一の書く物語は特殊なものだった。

 登場人物の名前は設定されているというのに、ただ一人だけの名前が確定されていない。

 いつでも、どんなときでも、ヒーローのように駆けつけるべき存在。

 彼の名前は『主人公』としか呼ばれない。まるで、主人公だけが名前を貰っていないかのように。


 「『その友人が怪しく笑っているのに気づくことなく』」


 誠一が、笑う。

 日常では決して見せないような酷薄な笑みで、笑う。

 裏世界の、人殺しすら肯定する世界で生きてきた野牧誠一という名の男が、哂う。


 「『そして主人公は、真実と虚構の混ざり合う闇の世界へと巻き込まれていくことになる』」


 誠一の小説に出てくる友人は『カミノ』という名前を持つ。

 ローマ字表記にすれば『KAMINO』といったところだが、誠一はここに独自の楽しみを見出していた。

 即ち、アナグラム。

 文字を入れ替えることによって、新たな名前を模索する。


 『KAMINO』→『NOMAKI』


 全ての登場人物に遊びの名前を付けている。

 野牧誠一は小説の中の『カミノ』という人物と重ね合わせるように語る。


 「残された友人は一人、暗い教室の前で呟いた」


 言葉の声色が変わる。

 己が小説の中の『カミノ』という存在なのか、それとも現実に生きる『ノマキ』という青年なのか。

 その区別が第三者には分からないほど、その言葉は真実味を宿していた。



 「願わくば、因果の鎖に捕らわれた姫を救う英雄にならんことを」



 誠一はそこまで呟くと、プリントと筆記類を鞄に直す。

 任務の始まりの時間だ。

 戦いは今日中に決着を付ける。それが旅団という裏組織が出した結論だった。



 ―――――――残り、十一時間。








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