返せよ
若気の至りとは言え、取り返しのつかない事になる事がある。
ちょっとしたスリルを求め、好奇心から俺と悪友二人が街外れの廃病院へ「肝試しに行こう」という事になった。止せば良かったのだが、怖いもの見たさで出掛ける事になったのである。
廃病院の周囲には有刺鉄線が張り巡らされていたのだが、同じ考えの輩は存在するもので、所々で侵入がしやすいよう鉄線が切られていた。
廃屋とした病院は窓ガラスが割られ、壁には暴走族が書き殴っていったと思われるスプレーの落書き。
それ以外はゴミが散乱しているような状況。
ライト片手にスマホで撮影をしつつ突き進んで行く。恐怖を期待した我らに対し、何も起きなかったので帰る事にした。
友人の一人がオペ室で「拾った」という鉄の棒を見せてくる。どうやらそれは錆びたメスの用だ。戦利品として持ち帰るつもりらしい。
帰りの車中、スマホが突然に鳴り出した。メスを拾った友人のもので、非通知の表示になっている。
恐る恐る友人が出ると、スマホからは低い男の声で
「…メス…足りないんだよ、…返せよ。