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第1話 プロローグ

  『貴方は73億1868万5325人の中から見事、勇者に選ばれました。貴方の勇気ある行動を心よりお待ちしております。

  異世界にいきますか? YES or NO』


  *


 世の中で一番不快なものは、近所のうるさいヤンキー? 朝っぱらから汗ばむ満員電車? コンビニの無愛想な店員? いや、快眠を一刀両断してくる目覚まし時計だと思う。


  いつもはそう思うおれだが今日は違う。

 髪型よし、ネクタイよし、体調もオッケー

 セットした5分前にはすでに目覚め、着々と準備を進めていく。なんてたって、今日は高校の入学式なのだ。

 中学までのさえない生活とはおさらば。

 ここには、今までのおれを知ってるやつもいない。

 THE KD. KD万歳!

 それこそ、初日から遅刻などというバッドスタートのテンプレは踏まないのだ。


 そして、おれ佐藤悠馬サトウユウマは、期待を胸に部屋のドアを開け、学校へと向かった。

 

  *


  大勢に囲まれて始まった入学式。どこか周りの人は気品をも感じさせる。というのも、ここは私立時坂学園、県内屈指の偏差値を誇る有名校だ。

 中学の成績は中の中程度だったおれに対し、親が県外受験を諦めさせるために提案したのは、この名門校への合格。

 しかし、猛勉強の末、見事合格。晴れて新天地で一人暮らし。勝利の女神様はおれに微笑んだのである。


  そして、入学式は最後に生徒会長の話へと時を進めていた。

 

  生徒会長の名前は神崎志乃カンザキシノ。ナチュラルなウェーブのきいた黒い髪。向き合う者を優しく包み込んでくれるような優雅な表情。少し子供っぽさも残っているが、それが少しくらいならお近づきになってもいいのではないかと甘い親近感を抱かせる美少女である。ツヨッターを駆使した事前調べによると、彼女の親衛隊までもあるらしい。


 少しくらい仲良くなれたらな‥‥‥

 いや、そんな高望みまだ早い。まずは基盤、クラスの友達からだ。


 そんな妄想を働かせてると、会長の言葉が終わり、盛大な拍手で入学式が終わった。




  *


 入学式が終わり、それぞれ席に座る。

 うん、最初が肝心。人生第一印象が全て。

 『友達になって下さい』なんてセリフが通じるのはラノベくらいなもんだろ。


 落ち着け、最初は全体より近くの人から。

 そう、前の男なんていいな。見た目も悪くないし、人当たりも良さそう。仲良くなれたらリア充ライフ引っ張っててくれるかもしれん。うん完璧だ、最初に声をかけるのはこの人にしよう。


 よし、まず声をかけて。いや、肩を叩いた方が分かりやすいか。そして、それからそれから


 「ーー!?ーー」


 気がつくと、おれの右手は勝手に目の前の人の肩に


 やっっっべーー 振り向いちゃったよ。

 なんて話せばいいんだ。

 何度もリハーサルしたじゃないか、こういうときは‥‥‥


 緊張で真っ白になりつつある頭を必死で回して



 「ーー友達になってくだひゃい」


 自分でもびっくりするほどの裏返った大きな声は最初でそわそわしていた教室をも沈黙へと変えた。


 目の前の生徒は、そっと視線を前へと戻すのであった。


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