街の明かりに忘れたもの
あけましておめでとうございます
今年初めの作品となります
初めましての方もお久しぶりな方も楽しんでいただければと思います。
水の音が聞こえる。ざざあ、ざざあと鳴いている。
海辺に不似合いなコンクリートの上に腰掛けて、女一人でビールを飲んでいる。
年甲斐もなく、一人で。
夜が始まって、もうどれほど経っただろう?砂浜に落ちた先ほどまで履いていた靴を眺める。
少しだけ窮屈から逃れた足。ストッキングも脱ぎ捨てられたら、この砂浜を歩きたいんだけどな、と思う。
私は今、夜の中にいる。けれど、このコンクリートの塀が境界線だ。
これを越えて、人の住む街へ立ち入ればこの夜は消えてしまう。街で育った私は、人々は、忘れてしまったのだ。
夜の中で眠るそのすべを。
一滴の何かが頬をつたう。
「酔って泣く女ほど面倒くさいものはないわ」
水の音が聞こえる。ざざあ、ざざあと泣いている。
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