下僕のお仕事
「その子を俺の嫁に貰う。」
少女は大きな目をさらに大きく開いている。
落っこちそうだな、なんて心の中で思う。
男の方は数秒フリーズしてから我に返り怒りの表情で叫んだ
「ふざけるなっ!!!」
予想通りの展開にほくそ笑む。
そう来てくれなきゃ困る。
もちろん本気で言ってるわけではない。この男に対するただの嫌がらせだ。
適当なところで切り上げて適当に望み叶えてさっさと魔界に帰るつもりだった。
「あの…」
しかし少女の口からは予想外の言葉が続く
「あの…わかりました。」
「「へ?」」
「私、あなたの妻になります!」
男がすごい速さで少女の方へ振り返り肩を掴む
「何を言ってるんだ!茜!正気なのか?!」
ゆさゆさと前後に揺さぶりながら詰問する
少女の細い体ががくがくと揺れて今にも折れてしまいそうで少し心配になる、しかし少女はそんな状態とは思えないほどしっかりとした声で宣言するのだった。
「私、本気です!」
いやいやいや本気は困る!
男も同じようで止めようと必死なんだろう
「いきなり妻とか段階ってものがあるだろう!お兄ちゃんそんなの許さないぞ!」などとだいぶずれたことを話している。
テンパってるのは俺も同じで
「え、いや、そうだな!いきなりはまずいだろ、とりあえず婚約者とかさ!」
なんて口走る始末。
「じゃあ婚約者からお願いします。」
なんてかわいく微笑まれた時にはもう後の祭りだ。
引くに引けなくなってしまった。
「…で、望みってなんだよ。俺は何をすればいいんだ?」
「えと、あの…」
少女が申し訳なさそうに話出した
「最近、身の回りで変なことが起きるんです。
主に学校にいる時なんですが、誰かに見られているような、そんな感じがずっと続いてて…。
あと、これは気のせいかもしれないんですが、なんだか私物を触られているような気がして…移動教室から戻ってくると机の上に置いてあったものが微妙に位置がずれてたり、カバンの中に違和感があったりとにかく気持ち悪くて…」
「というわけでお前には茜のボディガードになってもらいたい。」
「…ってそれただのストーカーじゃねーか!
そんなことでいちいち悪魔召喚すんなよ!」
「うるさい!
とにかく明日からボディガードとして同じ学校に通ってもらう。
早いところ犯人を捕まえてこい!」
そしてお前もさっさと魔界に帰れ!と男が飲み込んだであろう心の声が聞こえてきた…。