第八話 「か」こと現在(いま) 後編
…そこは、公園だった。
それも…どこか懐かしさを感じていた。
「あれ、俊成くん?」
「え…」
その声を…俺は…覚えていなかった。
波に浚われ、俺は日本本土に流れ着いたそうだ。
…どうしてか、そこは病院で俺は寝ていた。
「…っ」
腕に痛みが走る。
何かで打ったのかわからない。
けれど、あまり良い状態ではないようだ。
何をするにあたっても、何か自分に手がかりがないか詮索をしてみるが、特に変わりはない。
ただの個室にただ一人…。
元々どこに住んでいたのか…わからず。
わかるのは…脳裏にふと思い出されるあの映像であった。
あの公園は・・・前に、まだ御袋が生きてた頃に…よく遊んだ場所。
それが…フラッシュバッグのように蘇る。
俺は…
「…という夢を見たんだ」
「そうか、お前の妹も苦労しているんだな」
夏目 夕華。
俺の幼馴染で、よく遊んでいた。
母が他界してから、まったく合わなくなり、その後病院に入院していると聞いた。
年に一度会いに行くのが、普通となっていたのは、まだそう経っていない去年の事であった。
「それで、お前はいつごろ帰って来たんだ?大波に浚われて、まる二カ月も」
「ん~無人島で一人だな、なぜか漂流してくるエロ本が、俺の唯一の生命力だったさ」
「…そうか」
コイツは俺の友達の友達で、氷川 清海。名前はともかく、かなりの美形で所謂美少年(男の娘)だ。
俺から見ても、かなりの者…。ああ、なぜ…うまれを間違えたのか。
「とりあえずだ、お前に会いたいって後輩がいるんだよ」
「え?マジっすか、旦那!」
「いや、マジなんだが、とりあえずその口調を何とかでき「ない」のか…」
氷川は、少し残念そうに俺を見る。
まるで、捨てられた子犬のよう…。
「どきゅん」
「何、ときめいてるんだよ…気持ち悪い」
「ひっ…氷川きゅんに、キモイって言われた!」
「きゅんとか言うな!つか、寄るな!アホが移る!」
俺は、ササッと氷川に肩を寄せるが、彼は逃げる。
「待っておくんなせぇ!」
「いーやーだー!!!」
ああ、これぞ…アルプスのBMW…
「モラルを大切にね!」
それから、昼休み。
いつもの購買に、俺たちは来ていた。
今日はきちんとお金はある。
「今日から、菓子パンのメロンパンが出るらしいぜ」
「へぇ…、俺はカレーパン派だな」
「…メロンパン…」
「のわっ、いっ…妹よ…いつから?」
「…一秒前」
「そっ…そうか、今来たのか」
「…(コクッ)」
この妹、前田 安寿は、いつも無口である事は、どこぞやの読者の方々にもお分かりいただけるだろう。
しかし、時に口を大きく開けて、語り出す事がある。
これを、専門用語では、暴走といい、彼女の思考回路があふれ出す事を意味するのだろう。
さて、彼女はメロンパンを食べたいそうだ。
そして…
「君は誰だ、良かったら俺と付き合ってください」
「話が全然読めないのと、お断りしますのです」
「…そうか、なら仕方ない…妹よ…俺をしょうかいしt…」
「…拒否」
バッコーンッ!
大きな音と共に、俺は宙を舞っていた…。
妹の攻撃ではなく…その連れによって…。
「ナイス・・・ボート・・・」
俺には、そこが大きな湖に見えたんだ…。
バタンッ!!!
そして…俺はまた…コンクリートに叩きつけられた。
「…お見事」
「あれ、本当に安寿っちのお兄さん?」
「…」
「くっ…我が妹よ…兄の顔、声すらも忘れたか…ぐすぅ…ん」
「…むぅ」
妹は、かなり…不機嫌だ…。
なんでだろう?
お兄さん、なにかしたかな?
「おい、そんな状態で大丈夫か?」
「…大丈夫だ、問題ない(涙」
俺は、無言で後ろ姿を見せる妹に対して涙ぐんだ表情で…そう言った。