第五話 「え」す、M?なんですか、それ
「俺、実は…お姉ちゃん萌えなんだ!あの究極の萌え要素、ぽわ~んとしたあの表情に、ごく稀に出るあの年上的な真面目っプリ、堪らない!そうだと思わんかね、荒塚大佐!」
「いいや、俺は違うね!そんな一瞬の美に描かれる物はいつも幻想を直ぐに崩されることとなるのさ!世はまさしく、年下を萌え要素と確信したのだ!みよ、あの幼くともキラキラと眼光に映る輝きを…あの、クリクリとした初々しい目を!フフフ…たまりませんのぉう」
「…それで、兄さんがなぜ私の財布を持って売店に来ているのです?まさかとは思いますが、それで兄さん、自分の分の昼食を済ませようと?」
「…!クソッ、見つかった!大佐、どうすればいい!」
「スO-ク、まずは安全な場所を探せ、ただし全力疾走でな」
「しかし、妹が売店の前で門前払いをしていては、俺の空腹はどうなる!午後の授業は、まだ3時間あるんだぞ!?俺を殺す気か!」
「だったら、ここは俺に任せろ!俺が…俺が、なんとかしてやる!」
「正気か、大佐!アイツはプロだぞ!?」
「任せろと言っているだろう!…まあ、俺に掛れば、縦横無尽のコートで一直線だぜ!」
…?意味がわからない。
とりあえず、現在状況がどうなっているのかというと、昼食であるはずの弁当が今日は家に忘れてしまった。
結果的に、俺は売店でパンを買おうとしていたのだが、お金がなかったために、妹のクラスの妹の鞄から、妹の財布を勝手に、無法に、無許可でとりだした。
そして、その中に入っていた野口さん一枚を見つけると、猛ダッシュでここまで来たのである。
売店は、教室棟のすぐ横にある。
だから、そこまで難なく行けた…のだが、そこで妹と鉢合わせ、売店が近くにあったので、勢いで財布をポッケから取り出してしまっていたのだ。
キテoちゃんの可愛らしい絵柄があるピンク色の財布は、妹の目にしかと睨まれたわけだ。
「やめるんだ、大佐!奴は…奴は…」
俺の言葉に、荒塚はグッと親指を天へと翳して死ぬ覚悟を見せつけた…。
「奴は…Sだ!」
「なっ…なんだってぇぇぇ!!!」
S、透き通った体から向こう側の景色がくっきりと見えている。の略。
「兄さん、邪魔はいなくなりました、さあ続きを」
「あの…すっごくえr…ごびらっ!」
うぐぐぐぐ…妹よ、そんなに強く…そんなに強く頭を掴まれたら…。
「きっ…きもひぃ…」
「死んでください」
ゴキッ。
止めを刺されてしまった。
俺は、前田 俊成は目の前が真っ黒になった…。
「はっ!」
目覚めるとそこは、お花畑。
一面が草と白い花に囲まれた場所。
他には何もない。
それは青く、透き通っている。
ああ…死んだんだな…俺。
…ああ…。
最後に…見たかったなぁ…。
女子の…女子の…更衣室…。
「お~い、起きろ~」
俺を、ツンツンとつついて起こしてくれたのは、荒塚大佐だった。
「…いや、俺は…」
脳髄を砕かれた気がする。
ああ、死んだ。
「財布は、かえしておいた。その代わりに、今日は俺のおごりだ」
「よし、早く食べよう。」
「切り替えが早いな」
こうして、俺の昼食は荒塚におごってもらった。