第二話 「い」ってきます
…なぜだ。
なぜ…。
「おっ俺の…俺の下足箱に…ララララ…落花生がぁぁぁぁ!!!」
なぜか、俺の下足箱のロッカーに敷き詰められた溢れんばかりの落花生。
一つ一つ、丁重に…死☆ねと書いてある。
なんだ…と…。
「兄さん、?」
「ひぃっ!いっ妹、み、み、み、見るなぁぁぁ!!!」
「?」
ガラガラ…と、俺が手で下足箱を勢いよく落花生を押し入れようとしたために、それがずれて落花生が大量に下足箱から落ちて来る…。
「兄さん…これ…」
バシッと少女の手に渡った落花生を取り上げる。
何度も何度も少女は手を止めない。
それに加えて、俺自身も手を止めない。
「死☆ね」
だれが書いたかは知らんが、よくもまあバランスよく落花生の大きい方と小さい方に丁寧な字で完璧な書き順で書きやがって…コンチキショウ。
「…兄さん…、わかりましたとりあえず…行きましょう。それと落花生の件は私が殺っておきます」
「はっ早まるな!これはそうときまったわけじゃない…これは…これはぁ…」
1.俺が昨日、忘れていたものなんだ
2.安寿に渡そうと思っていたものなんだ。
3.むしろ、お兄ちゃんと書いてほしいものだなうむ。
4.妹よ、そんな眼差しを向けていいのは…この落花生ではない、俺に向けろ…
なんだと…1以外、ロクでもないものばかりじゃねぇか!
どういう事だ…、俺の思考回路よ…目覚めよ!
「俺が、安寿にお兄ちゃんとこの落花生に書いてそんな眼差しを俺に向けろ…はっ!」
思わずに口をふさいだが、遅かった。
ワンテンポ、遅かったぁぁぁああ!!!
妹は、少し俺を睨んで「…そうですか」と痛々しい目で見てきた。
「やっ…こっこれはそのぉ…ギャーーーー!!!待ってくれぇぇぇ!!!」
このままでは、家庭的な事情で…まずい!
今は、そこまで生徒はいない。
7時5分から10分は、なぜか生徒のラッシュが嵐の前のような静けさで、一人や二人見かける事もなく、15分から数えるのが面倒になるほどの数がダッシュで学校へと来る。
だから、…今は校舎内に誰もいない!
「兄さん、やめてください…人、呼びますよ?」
「っ!や…ややや…う…」
丁度、orz のような形となった俺。
階段でこんな状態を取るなんて…すげぇな、自分。
妹だってほら…携帯でどこかに連絡を…
「あ、もしもし…警察ですか?」
「やっ、通報は!通報はやめてくださいよ!お願いします!すいませっしたぁ!」
妹に土下座して、携帯をなおしてもらった。
一安心…だ。
「じゃっじゃあな。」
俺はそう言って、妹の見向きもしない後ろ姿に手を振った。