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第二部―――
移動には、やはり船。
ここ、名瀬川諸島は日本本土からそう離れてはいない孤島で、魚介類が盛んな街でもある。
そんな街には港が一か所しかなく、島の半分は森。
人々が生活するのは、ごくわずかな範囲で、食料調達のために本土に出る船こそ、滅多にこないので、来た時はゾロゾロと人がたかっている。
そんなこんなで、俺はどことなくタイタニックに似ている船に乗り込んでいる。
「ええ、ご来場のお客様にお知らせいたします、まもなく―――」
港の名前が出て、俺は席を立つ。
外から日本本土を見てみようという考えで、外に出るとなぜか船の先端にあのタイタニックで有名なワンシーンを再現している二人のガチムチな男がいた。
「うっぐっ…せめて、一人は女の子にしてくれぇ…」
何かゴニョゴニョ言っているのが、逆に目ざわりで気持ち悪い。
艦内に戻ると、ガチムチの男のデッサンを描いている変なハゲじじいがいた。
「よ…酔いそうだ…」
俺は、さらに奥へと進む。
そこで、俺は幸運に恵まれたのか、もの凄く可愛い女の子を目にする。
その子は、こちらが見ているのを察したのか、なぜかこちらにアイコンタクト(ウィンク)をした。
(か、可愛い…)
その姿は、黒いドレスに、白銀のかちゅうしゃ、そしてクリクリとしたかわいらしい目。
そのすべてが凝縮された存在を目の当たりにした。
そんな俺は、既に興奮していた。
「(ひゃっっっほおおおおいいいいいいい!!!、Girl!Girl!!!)」
俺の興奮度は、Maxであった。
…なんて事はなかったわけで…。
俺は普通に木製の手作り感バッチリの船に乗った。
…なぜかって?
この街には、家系上セレブが中々多いが、逆にいえばビンボーがいるという事だ。
つまり、何が言いたいのかというと…俺は、ビンボー家系だと言うことだ。
他のクラスメイトは皆フェリーやら豪華客船やらで移動しているが、その足元を俺はオールを手作業で漕ぎ、必死に本土を目指していた。
ちなみに、妹にも誘いは来ていたらしいが、もう先に他の友達と移動。
俺は…つまり、おいてけぼり。
流石は人数合わせだこと。
しかし、そのおかげで、俺はいつでも帰る事ができ、またいつでも遭難ができるのです、そーなんです。
「あっはは!たっのしいなぁ~チクショォオオオオ!!!」
俺は、ただ無力な自分を呪いつつ、本土へ着いた。
「カラオケバー…ねぇ…」
そこは、独占地帯と化していた。
荒れた様子はないのだが、なぜかそこには人っ子一人いない。
あれ?ここ都会ですよね?なんで人がいないんでしょうか?
と。
俺は確信した。
ここはもはや、日本本土ではない。
名瀬川市民の学生さんの、名瀬川市民の学生さんによる、名瀬川市民の学生さんのためのカラオケバーであると。
「…そういう事かよ…人数合わせ」
参加者を見ると、俺を除けば揃う人数がそこに数字として書かれていた。
ああそういう事かい!つまり、荒塚は俺のために、わざわざ俺にこれをくれたと…そういう…事…かい…な。
嬉しいぜ友よ!今お前が何をしているかわかんねぇけど、俺、すっごく感動しているぜ!
一方、荒塚は。
「うひょひょ、きれぇ~なおねぇ~さんだなぁ~ほほ~グフフ、アッハハ~」
街中で、クリスマス限定に見れるミニスカサンタクロースを怪しい目で傍観していた。
俺は、一歩、また一歩と、カラオケバーの扉を開く…すると、中には…。
「なっ…なんで、お前が来てんだよ!」
「人数合わせ」
「荒塚君を呼んでたのになぁ~どうしてだろぉ~なぁ~?」
そこには、クラスメイトと良く知らない人。
男女仲良くカラオケをしていた。
うたをうたって、楽しく…楽しく…。
「人数は、足りてそうだな、じゃあ俺は邪魔そうだから帰るわ」
「カエレカエレ!」
「あっ…」
大きなソファに座っていた大人しそうな女の子がいきなり声を漏らす。
かわいらしい声で、地味なメガネに茶色の三つ編み。
手には大きな赤い本。
「…」
その子は、俺を見ると同時に目を逸らした。
…?
俺、なにかしたか?という感じになるが、俺は誰かに言われるがままにそこを抜けた。
海岸まで歩き、俺は照らされた明るいカラオケバーを見る。
それはとても綺麗であり、俺としては魅了された。
ああ…でも、あそこにいるよりかは、いくらかは楽だ。
きっといたら楽しくない。
そういう確信がある。
俺にとって、あそこは…ダメだ。
「あ…の…」
「のおっわっ!」
俺はどこぞやのシェー!というポーズとなる。
うむ、ネタがわかるかどうか知らんが。
と、彼女は先ほどの三つ編みメガネ少女。
少し落ち込んだ表情で、頭を下げて、
「ごめんなさい!」
と言った。
え?なぜ?俺はなぜ謝られた?別に、何も…?
「ど、どうした?なんで俺は謝られてんだ?」
それを聞くと、彼女は…
第二章―――完。




