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退勤前。


 篠崎から社内チャットが飛んできた。


今日の会議室前後、何か残ってる?


 恒一は一瞬迷い、短く返した。


あります


 すぐ返事。


消さないで。外に出して。自分宛でもいい


 バックアップ。


 朝の言葉と繋がる。


 恒一は深呼吸した。

 そしてトイレの個室に入り、スマホを取り出す。


「ルイゼ」

『います』

「受動記録子、データ取り出せるか」

『可能です。あなたの端末に適合させます』

「急ぎで」

『了解』


 襟裏が微かに熱を持つ。


 スマホ画面に、見知らぬアプリが一瞬だけ生成され、すぐにファイルが現れた。


 音声。

 動画。

 時刻付き。

 しかも、かなり鮮明。


「……本気かよ」


『技術提供ですので』

「だからそういうとこだよ……」


 恒一はファイルを自分の私用メールに送る。

 ついでに、クラウドストレージにも上げる。

 タイトルは無難に変えた。

 仕事資料っぽい名前に偽装する。


 トイレの狭い個室で、送信完了の表示を見たとき、ようやく少しだけ実感が湧いた。


 もう戻れない。


 昨日までみたいに、何も残らないまま潰される側へは。


 そしてその実感は、恐怖とほとんど同じ形をしていた。


 だからこそ、確かだった。


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