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【日刊上位ランクイン】チャネリングしたら宇宙船の美少女艦長に繋がったので、ブラック企業を辞めて人生を取り戻すことにした  作者: ハイカラな人


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退職前日。


 会社のPCを閉じる前、恒一は最後の引き継ぎ資料を三島へ送った。

 件名は普通。

 本文も普通。

 余計な感情は入れない。


 だが、送信後に三島からすぐ返事が来た。


助かった。

ちゃんと使う。

次はもっと早く言えるようにする。


 短い。


 でも十分だった。


 恒一はその文を読んで、少しだけ息を吐いた。


 全部が綺麗には終わらない。

 会社も変わりきらないだろう。

 でも、無意味でもなかった。


 それでよかった。


 終業後、篠崎がエレベーター前で待っていた。


「明日で最後だっけ」

「はい」

「お疲れさま」

「……ありがとうございます」

「で、次は?」

「小さい受託からです」

「そう」

「まだ全然、安定とかは無理ですけど」

「最初はみんなそう」


 篠崎はそこで少しだけ笑った。


「あなた、最初に見た時よりだいぶましな顔してる」

「ひどい言い方ですね」

「事実」

「……否定はしません」

「でしょうね」


 数秒の沈黙。


「一応言っとくけど」

 篠崎が言う。

「今回、あなたのやり方は正しかったと思う」

「……」

「感情で全部ぶち壊さなかった。そこは本当に良かった」

「そうですか」

「うん。ただし」

「ただし?」

「今後うまくいき始めたら、今度は調子に乗らないように」


 きつい。


 だが、ありがたい。


「肝に銘じます」

「ならいい」


 そして、篠崎は最後に言った。


「もし本当に事務整理とか仕組み化やるなら、そのうち経理の知り合い一人繋げるかも」

「え」

「うまく回るなら、ね」

「……ありがとうございます」

「まだ早い。まず今の一件ちゃんと回して」


 それだけ言って、エレベーターへ乗っていった。


 扉が閉まる。


 恒一はしばらく、その場で動けなかった。


 繋がる。


 次に。

 少しずつ。


 派手じゃない。

 でも、それでいい。


     ◇


 退職当日の夜。


 部屋に戻った恒一は、スーツを脱いで床に置いた。

 ネクタイを外す。

 ワイシャツのボタンを外す。


 静かだ。


 いつもと同じ部屋。

 同じ安アパート。

 同じ天井。


 でも、今日は少し違う。


 もう会社員ではない。


 その事実が、妙に現実感を持って迫ってくる。

 嬉しい。

 怖い。

 空っぽ。

 少しだけ高揚。


 全部混ざっていた。


「……終わったな」

『はい』

 ルイゼの声。

『今日から、別の段階です』

「無職だよ」

『違います』

「え?」

『個人事業準備中です』

「その言い方、都合いいな」

『地球では大事でしょう』

「……まあ、そうかも」


 恒一は床に座り込んで、しばらく黙っていた。


 何か言うべき気がした。

 でも、ちょうどいい言葉が出ない。


 その沈黙を、ルイゼは待っていた。


『今、何を感じていますか』

「……空いた感じ」

『空白』

「うん」

『良くないですか』

「いや」

「悪くはない」

「たぶん、初めて、自分の時間が自分に返ってきた感じがする」


 言葉にした瞬間、少しだけ目頭が熱くなった。


 疲労で泣くのではない。

 怒りでもない。

 ただ、返ってきた、という感覚。


 失ったもの全部が戻るわけじゃない。

 傷も残っている。

 でも、少なくとも、これからの時間は少し違うかもしれない。


『……それは、良いことです』

 ルイゼの声が、少しだけ柔らかい。


「お前がいなかったら、たぶんここまで来れてない」

『それは過大評価です』

「いや、本当に」

『……』

「助かった」

『……はい』


 向こうが、少しだけ黙る。


 その沈黙の形が、妙に綺麗だった。

 照れ、と言うには静かすぎる。

 でも、何かがちゃんと届いた感じがある。


「じゃあ、次だな」

『はい』

「次は、ちゃんと食っていける形にする」

『はい』

「小さい仕事を増やす」

『はい』

「その上で、睡眠補助とか整理支援とか、形にしていく」

『はい』

「あと」

『あと?』

「お前のことも、もう少し知る」

『……』

「目的以外のところからでいい」

『交渉条件ですね』

「そういうこと」

『分かりました、地上の個人事業準備中』

「その呼び方、微妙に長くなってるんだよ!」


 笑う。

 向こうも少し笑う。


 そのやりとりのあと、恒一はノートPCを開いた。

 ソウマ・ワークスのページ。

 仮プロフィール。

 実績欄。


 そこに、最初の一件を打ち込む。


業務整理支援:小規模EC事業者向け 在庫・問い合わせ・発送管理の初期改善案作成


 たった一行。


 でも、その一行は、これまでのどの会社の肩書きより、少しだけ自分のものに見えた。


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