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【日刊上位ランクイン】チャネリングしたら宇宙船の美少女艦長に繋がったので、ブラック企業を辞めて人生を取り戻すことにした  作者: ハイカラな人


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 その日の退勤後。


 部屋に戻った恒一は、コンビニ飯を流し込み、ノートPCの前に座っていた。


 時刻は二十時二十七分。


 少し早い。

 だが落ち着かない。


 デスク周りを整える。

 不要なものをどける。

 メモ帳を置く。

 水を置く。

 画面映りを確認する。


「……面接かよ」

『似たようなものかもしれません』

 ルイゼの声。

「やめろよ怖いだろ」

『励ましたつもりです』

「壊滅的に下手だな」

『地球式は難しいですね』


 恒一は苦笑した。


 それから、少し真顔になる。


「なあ」

『はい』

「今回の件、何をどこまで言っていいと思う」

『異星技術のことですか』

「当然だろ」

『基本、言わない方がいい』

「だよな」

『ただし、“自分は作業整理と仕組み化が得意”という形に落とせる範囲はある』

「うん」

『実際、それは嘘ではありません』

「……」

『あなたは、今まで無駄に潰されていただけで、整理能力はあります』


 無駄に潰されていた。

 雑な言い方なのに、妙に的確だった。


「じゃあ、今回は普通に聞いて、普通に提案する」

『それで十分です』

「異星チートは?」

『使うとしても、裏側の補助まで』

「了解」


 会議開始五分前。

 心拍が上がる。


 ルイゼが珍しく少しだけ近くなる。

 認識の輪郭が寄る。

 冷たい集中。

 不要な枝を払う感覚。


『まず相手に喋らせる』

「はい」

『困りごとを、事実・頻度・影響で分けて聞く』

「はい」

『あなたが分からないことは、分からないと言う』

「はい」

『見栄を張らない』

「はい」

『あと、妙に格好つけない』

「おい」


 少し笑ってしまう。

 緊張が、わずかにほどけた。


『大丈夫です』

 ルイゼが言う。

『あなたは、こういう時に思っているよりまともです』

「褒めてる?」

『半分くらいは』

「半分かよ……」


 画面が切り替わる。

 オンライン通話。

 相手の先輩が映る。


 懐かしい顔だった。

 少し疲れている。

 部屋の後ろには段ボールと商品棚。


「久しぶり」

「お久しぶりです」

「なんか固いな」

「いや、ちょっと」

「まあいいや。早速なんだけど、うち今、受注は伸びてるのに処理が回ってなくて」

「はい」

「在庫管理、発送、問い合わせ、請求、全部ぐちゃぐちゃ」


 恒一は頷く。

 メモを取る。


「何人で回してます?」

「実質二人」

「受注件数は月どれくらいですか」

「最近は四百超える」

「問い合わせの主な内容は?」

「発送時期、在庫ズレ、あと決済エラー」

「使ってる管理ツールは」

「ECサイトの標準機能と、スプレッドシートと、手作業」


 聞く。

 分ける。

 整理する。


 気づけば、会話は思っていたより滑らかだった。


 相手が困っていること。

 どこで手が止まるか。

 どれが頻度高くて、どれがダメージ大きいか。


 それらが、頭の中で自然に並ぶ。


 後ろで、ルイゼが静かに補助してくる。

 言葉ではない。

 整理の感覚だけ。

 質問の順番だけ。

 踏み込みすぎない距離感だけ。


 二十分後。

 恒一は自分でも少し驚くくらい、自然に言えた。


「たぶん、いきなり全部直すより、まず三つです」

「うん」

「在庫更新のルール統一、問い合わせテンプレ整理、発送ステータス管理の一本化」

「……」

「この三つだけでも、だいぶ楽になると思います」

「へえ」

「必要なら、今の運用を見ながら、一回たたき台作ります」

「いくらで?」

「……初回なので、範囲見てからで」

「ざっくりでいいよ」


 来た。


 金額。


 急に胃が縮む。


『低すぎる提示は非推奨』

 ルイゼの声。

『ただし高く言いすぎるな』

「無茶言うな……」


 恒一は一拍置いてから言った。


「まず現状整理と改善案のたたき台で三万円。実作業に入るなら別途」

「……」

「高いなら言ってください」

「いや、思ったよりちゃんとしてるな」

「え」

「もっと、知り合い価格の適当なやつかと思ってた」

「それは……一応、仕事なので」

「いいじゃん。じゃあそれで一回頼むわ」


 決まった。


 あまりにも、あっさり。


「え、あ、はい」

「今週中いける?」

「……いけます」

「じゃ、必要な情報送るわ」


 通話が終わる。


 静寂。


 ノートPCの前で、恒一は数秒固まっていた。


「……決まった」

『はい』

「決まった」

『はい』

「三万」

『はい』

「うわ」

『今の反応はかなり面白いです』

「うるせぇ!」


 でも、叫びながら、顔が熱い。

 嬉しい。

 驚いた。

 怖い。

 全部ある。


 たった三万。

 まだ小さい。

 だが、ゼロではない。


 会社に雇われていない場所で、自分の頭と手に値段がついた。


 それが、とてつもなく大きかった。


「……やれるかも」

『はい』

「まだ何も終わってないけど」

『はい』

「でも、やれるかも」

『はい』


 ルイゼが珍しく、そこで余計なことを言わなかった。


 ただ、その“はい”の向こうに、確かな肯定があった。


     ◇


 深夜。


 通話内容を整理しながら、恒一はノートに大きく書いた。


初案件:在庫・問い合わせ・発送管理の整理案作成 3万円


 字が少し震えている。


 それを見て、自分で少し笑った。


 情けない。

 でも、本物だ。


「なあ、艦長」

『はい』

「たった三万でこんな嬉しいの、だいぶ終わってるよな」

『終わっていません』

「そうか?」

『始まったのです』


 その一言は、妙に静かで、妙に強かった。


 恒一はしばらく何も言えなかった。


 始まった。


 そうかもしれない。

 本当に、少しだけ。


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