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午後二時すぎ。


 とうとう堂本が消えた。


 物理的に、ではない。

 だが、フロアから姿を消し、そのまま戻ってこなかった。


 代わりに流れてきたのは、全体向けの短い連絡。


堂本圭介部長は、体調不良により本日午後以降不在となります。

関連業務は暫定的に三島が引き継ぎます。


「体調不良ねぇ……」


 便利だ。


 だが、こういう時の“体調不良”はだいたい体調の話ではない。


 数分後、篠崎からチャット。


事情聴取に切り替わったっぽい


へぇ


へぇ、で済む顔してないでしょ(二回目)


だいぶ慣れてきました


それは良くない傾向


 少しだけ笑ってしまった。


 その笑いの直後、別の通知。

 法務から。


追加資料提出のお願い

堂本部長との会議室内音声記録について、原本性確認のためメタ情報保持状態でご共有ください。


 原本性。


 つまり会社は、ついに“これは本物か”の検証フェーズまで来た。

 火消しのふりだけではなく、内部処理を始めたのだ。


 恒一は短く返信する。


共有可能です。提出手順を書面でください。


 少しして返信。


手順書を送付します。なお、当件は内部調査目的に限定して使用します。


「限定、ね」


 限定なんて、いくらでも書ける。

 でも、書かせることに意味がある。

 後から縛りになる。


 この数日で、恒一はそういう発想をかなり覚えた。


『適応が速いですね』

 ルイゼが言う。

「生き残るためにな」

『良いことです』

「褒めるか斬るかどっちかにしろ」

『今のは普通に褒めました』

「珍しいな」

『はい』


 そこは認めるんだな、と思って少しだけ笑った。

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