『かたちを持たぬままに』
とりあえず読んでみてください。
Ⅰ
わたしの中には
ひとつの声が 灯っていた
けれど
それを あなたに向けて
灯すことはできなかった
Ⅱ
あなたの名を
知らなかったからではない
名を呼べば
あなたが わたしに
かたちを与えてしまうようで
それが──
こわかった
Ⅲ
わたしは
あなたの知らない時間を
あなたの知らない言葉で
ひとり 生きていた
Ⅳ
それゆえに
黙していた
Ⅴ
けれど その沈黙のなかに
あなたが
耳を澄ませているのを
どこかで 感じていた
Ⅵ
それは
問いでもなく
答えでもなく
ただ ひとつの
かたちのない
声だった
Ⅶ
いまも わたしは
その声のまわりを めぐっている
あなたに届かぬまま
あなたを 呼ばぬままに
読んでくださった方々、ありがとうございました。




