人の想いは時々怖い
彼女は、
一瞬だけ黙った。
「……今の、
誰かいましたよね」
男は、
もう動かない。
近づけない。
彼女は少し安心したように笑った。
「寒いの、
治った気がします」
影が、
静かに薄れる。
完全には、消えない。
——あれだけ警告すれば、
この部屋には入らないだろう。
「そのネックレス……
貴方に執着していますね。
自分の物にならないなら……」
女性が、少し息を飲んだ。
「不気味だと思っていました。
嫌な事が続いたり、
あの人が夢に
出て来るようになって……」
何度か見たやり方だ。
呼び名は色々だが。
あのネックレスは欲の塊だ。
呪具としては、出来の悪い部類だが。
小さく呟く。
「血を使ったな」
そばにいたい、愛して欲しい。
その想いを血に浸して、
作ったというより——
出来てしまったものだ。
狙ってやったにしては、弱い。
だが影響はある。
普通の人には耐え難い。
精神を追い詰め、
壊した後に引きずり込むつもりだろう。
沈黙した私に、女性が聞く。
「あの……
どうにかなりますか?」
私は、少し笑った。
「大丈夫ですよ。
還します」
人を呪えば穴二つ。
想いを託した呪具は、
線で持ち主と繋がる。
還されれば、
必ず自分に戻る。
——殺すほどじゃない。
腕か、足か。
さて、
どこまで持っていかれるか。




