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願いは叶う  作者: 怠慢
4/5

話し

女性は、しばらく視線を落としたまま黙っていた。

湯気の立たないお茶を、両手で包む。

「……変な話、ですけど」

そう前置きして、

それから、言葉を探すように話し始めた。

「前に、付き合ってた人がいて」

声は落ち着いている。

けれど、語尾がわずかに揺れる。

「別れたあとも、

 何度か連絡が来ました」

連絡。

それだけの言い方だった。

「最初は、普通でした。

 近況を聞くとか、

 謝りたい、とか」

彼女は一度、息を吸う。

「でも、だんだん……

 私がどこにいるか、

 知ってるみたいなことを言うようになって」

問い詰めることはしなかった。

私は、ただ頷く。

「この部屋に引っ越したのも、

 知られてないはず、でした」

——はず。

「それなのに、

 ある日、

 郵便受けに、それが入ってて」

彼女はバッグから、

小さな袋を取り出した。

中身は、

さっき床に落ちていたのと同じネックレスだった。

「これ、

 その人がくれたものです」

私は無意識に、

視線を逸らした。

「捨てたと思ってました。

 でも……」

声が、少しだけ低くなる。

「部屋にいると、

 誰かに見られてる気がして」

夜だけじゃない。

昼でも。

「音がするわけでもないし、

 何かが動くわけでもないんです」

それなのに、

落ち着かない。

「眠れなくなって、

 それで……」

彼女は、

そこまで話して、言葉を切った。

私はネックレスには触れず、

テーブルの上に視線を落とす。

この手の話は、

珍しくない。

「最後に、

 その人と連絡を取ったのは、いつですか」

私の問いに、

彼女は少し考えてから答えた。

「……一ヶ月前です」

私は頷き、

もう一度、ネックレスを見る。

「……これ、

 まだ終わってないですね」

彼女が、

息を呑むのが分かった。

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