旅路
現在、ユウキはラファーヌと隣国エルドテオナム帝国の国境を超えた所だった
「狙われてるってのに何でわざわざ出向くかね?」
バカなのか?と言う言葉は飲み込んだ
「この度、ヴィオラ様は我等がルケザリオ教会で聖女に列聖される事になりました」
胸を張り自慢気に答えたのは教会から派遣された聖騎士さまとやらについてきた従者の少年、ロロだかルルだか名前を忘れてしまった
「列聖って死後認定されるんじゃないんだな?」
「おお!ユウキ殿はマルトラン教徒であられたか」
次に口を開いたのが聖騎士、テオ・ルードヴィグ・ベーベル、何故こちらの名前は覚えているかというと、少年がフルネームで何かにつけて呼ぶからだ
そして体も声もデカい、ほぼ熊だ
「待て待て、勝手に納得するな、マルトラン教は何の何なんだ?」
言った後に後悔する、少年が我が意を得たりとばかりに語り始める
教会関係の話題になるとスイッチが入る、おい熊!うんうん頷くだけじゃなくて要約しろ!
少年の説明は、長い、わかりにくい、偏った思想、の三拍子が揃っている
合間合間にいかに自分達の教会が優れているかを混ぜてくるからだ
語りたい年頃なんだろう、だが熊、テメーはダメだ
「つまり、二大宗教のひとつでラファーヌの隣国マルトラン法国で信仰されている長い歴史のある宗派で良いか?」
「色々と省いてはいるが、概ねその認識で間違いない」
やはりこの熊も少年と同じぐらいには偏っているんだろうか
人数が増えたので四輪駆動車から大型のトラックへ乗り換えた折、とても興奮した熊が助手席に乗りたがった為、こうして情報交換という建前で世間話をしている
広い軍用トラックの運転席が熊のせいで非常に狭い
少年が1人分より小さくて助かった
荷台はトラックを出現させて2日ぐらいでラファーヌ王室御用達の大工が魔改装している
そこではヴィオラ、メアリス、そしてもう1人
メイドを名乗ってはいたが明らかに素人ではない女
パメーラが女子会を開催している
運転席と荷台の仕切りが開く
「ユウキ様、姫様の甘味がなくなりました、次を」
「この女………」
パメーラは菓子に目がないらしく初めてユウキが食料としてカロリーバーを出した時からたびたび要求してくる
「このスマートウォッチもまさかオヤツを出すのに使われるとは思わなかっただろうな」
ユウキも、食にうるさい国民性らしい好みで、あの男に某オンラインショッピング並みの機能を付けさせていた、陸軍の携帯食料が苦手だった
「何か?」
「いや、どーぞ、選んでくださいな」
端末から食料品のウィンドウを出現させるとパメーラに押し付ける
途端に騒がしくなる荷台もとい客室
しぶしぶながらも大人しく従う訳は、そこそこの値段で支払ってくれるからだ、今、ユウキにはこの世界の現金がない
パメーラは今回の金庫番だった
ちなみ熊はビーフジャーキーを少年は飴をちびちび食べている
聖騎士は懐が寂しいらしい
「そろそろ日が暮れるからなーほどほどにしとけよ」
聞こえているのか、いないのか
非常にゆっくりとした速度のトラックが進んでいく




