学園生活③
第1章
9話
~1ヶ月後~
新入生歓迎会から早ひと月。俺とフィオラの学園生活は平穏を極めていた。あんな事があった後なので俺はフィオラと学園に通っていたがその心配は杞憂に終わった。全く絡まれる事は無くなったが陰口等は偶に聞こえてくるが気にならない程だ。
「はぁ〜〜〜ぁぁっっ」
大きな欠伸をして高く天まで伸びをする。今日も朝がやってきた。いつもの日課をサボってしまい挙句寝過ごしてしまいそうな今日この頃。
「別に行かなくても問題は無いんだけどな〜」
そう呟くが正直フィオラとの学園生活は楽しい。前世?の記憶がある俺は魔法という物に没頭していた。その上魔法の学校まで存在しそこに通えるなんて楽しくない訳がない。
「よし!」
俺はパンと顔を叩き急いで学園に行く準備をするのであった。
~昼休み~
何とかフィオラに怒られずに済んだ俺は2人で昼食をとるため学園都市の街に来ていた。基本的に都市と学園が共立関係にあるので魔法学園の生徒は学園内外 好きに休憩時間を過ごすことが出来る。
「さて!今日は何を食べましょうか!」
やたらとテンションの高い女の子ことフィオラはルンルンで俺の前を歩く。怒られなかったといったが代価を支払い機嫌を買ったのだ。
「俺もお腹空いてるからガッツリ系がいいな〜」
「アンタに選択権はありません!」
「えぇ〜」
そんなやり取りをしながら入る店を探し歩いてるいると
ザッザッザッ
兵士だろうか。仰々しい装いに変なゴーグルみたいなヘルメット。魔法というには似つかわしくないように思える格好の軍団が道の中央を歩いていく。
「あれ私兵よ。」
横に居るフィオラが耳元でボソッと呟く。
「学園の10年期生、マルティラ・ベンガル。
通称:魔銃のマルティラと呼ばれているわ。あの兵隊も彼女の私兵だと思うわ。個人的な遠征に行ってると聞いてたけどまさかこんな大軍隊でなんて」
「私兵で軍隊って...フィオラは随分詳しんだな」
「えぇ、っていうか彼女は有名だもん。知らない方が無理あるわよ。」
「でもこんな大勢で遠征って何しに行ってたんだろうな」
「多分、魔特待首席の座を狙っての事だと思うわ。大きな功績を上げる事で力を示そうとしたんじゃないかしら」
「えー。ってことはめんどくさい事になる?」
「かもしれないわね!」
俺は何も気にする事なんて無いと言わんばかりのフィオラとその軍隊の横を通り抜けお店を探しに街へと足を向けたのだった。
~飯処ヴィヴィー・ランチ~
少し街から外れた所にある隠れた名所ヴィヴィー・ランチ。場所が少し分かりにくいだけでめっちゃくちゃ人気のお店で中々入る事ができないらしい。しかし俺は魔特待首席という権限で並ばずにスムーズに入る事ができる。
「ヴィヴィー・ランチがまさかこんな所にあったなんて!
アレイスターよく知ってたわね!」
来た事が無かったらしいフィオラは大喜び。店内の賑わい、料理の匂いなども相まってワクワクもマシマシである。
「俺も来た事は無かったから来てみたかったんだよ!」
「しかも、アレイスターのお陰でスグ入れんちゃうんだから魔特待首席 様様よね〜」
「そうそう、崇めてくれても良いのだぞ?」
「はいはい、ありがたやーありがたやー」
「棒読みが過ぎる...」
俺達はそんなこんなで昼食を摂り楽しい昼休みを過ごしたのだった。
~ワルキュリア魔法学園~
学園に戻ると何やから校舎の方が騒がしく生徒達で溢れかえっていた。よく見てみると先程の私兵達が校舎前に立ち往生していて出入り口を塞いでいた。
「ちょっと、なんなのよこれ」
お腹いっぱいの俺達は怒る気力は湧かず呆れていた。ゆっくり座りたいのにこの騒ぎ、勘弁してほしい。
「現在、捜索中。学園内の侵入者は0」
何やら小さい声で話しているのが聞こえる。どうやら通信の類らしいが誰かを探している?みたいでその為の包囲網のようだ。
「あ!魔特待首席が帰ってきたぞ!」
1人の生徒が俺の方を指差して声を出す。するとそれに反応しすぐさま俺の周りを私兵達が取り囲む。
「ちょ、ちょっと!何すんのよ!」
フィオラは私兵達によって俺の隣から剥がされ離れていく。
「目標発見、目標発見.....了解、学園内への立ち入り許可を確認。これより随時生徒達を中に誘導します。」
俺の前にいる兵士がそういうと校舎で立ち往生していた兵士達が退き生徒達を誘導し中に入れていく。
ガチャ!
ガチャガチャ!
ガチャ!
兵士達が俺に向けて銃の様な物を向けてくる。
「動くな魔特待首席。君は完全に包囲されている。下手な事をすれば発砲許可も降りているので容赦はしない。」
12~15人位は居るだろう。周辺を見渡そうとしても向けられた銃口により威嚇してきているのが分かる。下手に動くとホントに撃ってくるつもりらしい。
「いや、急にそんな事言われても困るんですけど。俺に何を求めてるんでしょうか?」
「...........」
どうやら何も答える気が無いらしい。まぁ、誰の私兵かは
フィオラに教えて貰ってたからある程度は誰の差し金か分かるが果たしてコイツらを倒していいのかどうなのか。
「撃ち方よーい!!」
俺が思考していると兵士たちの後方、俺の遠い前方から女の大きな号令が聞こえそれと同時に兵士達が銃のトリガーに指をかけ始めた。
「撃て!!!」
バババババッッ!!
ドドドドドッッ!!
パンッパンッパンッ
複数の銃声が重なる。アレイスターの居た位置に土埃が舞いその姿を隠す。姿が見えなくなってもその手は止まる事なく数十秒が過ぎたところで再び号令により銃撃は収まった。
「私が手を下すまでもありませんわ。全く、魔特待首席が新入生でしかもあんな魔力が有るか無いかも分からない無能なんて学園長は何を考えているのかしら」
「少なくとも新入生を蜂の巣にしようとする先輩よりはマシだと思ったんじゃないでしょうかね?」
土埃が晴れるよりも前に声がする。上空より落下してくる
アレイスターはどこか楽しいそうだ。
「こんなもんでやられてもらっては困りますわ!魔銃:エレガンツィア!」
女が叫ぶと両隣に銃が現れた。人と同じくらいの全長に見た事のない形をした銃が2丁浮いている。
「先ずは手始めですわ!」
銃口が俺の方に向き魔力が集まる。
「アル・エレガンツィア!」
叫んだ瞬間無数の魔力の塊が襲いかかってくる。
「リュシリオン!」
俺はすぐ様空中でリュシリオンを呼び出し背に乗って攻撃を回避しようとする。
「無駄ですわよ!」
しかし、魔力の塊は追尾してくる。しかも連射が終わらないので一生増えてくるとかいうクソゲー状態。
「マスター、攻撃なさいますか?」
リュシリオンは急に呼び出されても文句を言わずいつも助けてくれる。しかし、今日は滅茶苦茶攻撃されてる時に呼んだからか流石にこの状況について口を開いた。
「いや、魔力障壁も無いから少し怖いんだよな〜」
歓迎会の時の決闘は魔力障壁が多少にでもあったからエリュシオンを呼び出し脅し程度に魔法を使ったけど障壁が無いとなると学園都市ごと壊してしまう可能性もある。それはエリュシオン以外の召喚獣でも同じだ。
「しかし、敵はマスターが建物等に被害を与えない事をいい事に集中砲火してきます。このままでは」
「はぁ〜。確かにこのまま長引けば引くほど被害が出る可能性もあるしな。」
「どうしたのかしら!逃げるだけで精一杯かしら!こんなものなのかしら魔特待首席っていうのも!」
そういうと銃撃が止まり撃ち込まれた魔力の塊が1つに集まっていく。
「ウル・エレガンツィア!!!」
集まった魔力の塊は一筋の光の柱のようにアレイスターに向け照射されるのであった。