不測の事態
第3章
61話
魔都市エバニアンに戻ってきたアレイスター。アリスフィルを抱えていた事により城へ戻ると黒金殲滅部隊を含む魔王軍配下が駆け寄って来て少し騒ぎになった。
どうやら戦闘の規模が大きかった為心配をしていたらしいがアリスフィルが無事だと知り安堵の表情を浮かべていた。アレイスターはそれだけアリスフィルが慕われているのだと驚きと申し訳なさを抱くと共に、アリスフィルが戦った意味を考えていた。
「(やっぱり、この人達の為...なんだろう。全く、なんの為にエリュシオンでここまで送ったんだか....)」
ぐったり と力が入らないアリスフィルを魔王軍配下に預け、これからどうしようか考えていた。取り敢えず城の中へ と案内されたので従いついて行く事にする。
その時だった。
「マスター!何か変です!」
小さくなったリュシリオンが懐から顔を出した。
「この感じ、この魔力。この世界のどこかでエリュシオンが顕現しています!」
「え、ん?確かに....ほんの僅かだけどエリュシオンを感じる。」
訳が分からない様子の黒金殲滅隊を無視してアレイスターはエリュシオンを召喚しようと試みるが応答はない。
「ダメだ!召喚できない!どうなってるんだ!?」
「私にも...兎に角一度アヴァロニアに行きましょう!」
「分かった!と、言うことなんですいませんが急用なので行きますね!」
「え、ちょ、ちょっと────」「アリスフィルにはよろしく言っといて下さい!用事が片付けばもう一度顔を出しに来ますので!多分....」
召喚門を開きながら一同に振り返り会話を続ける。静止の言葉に耳を傾けず門を潜ろうとしたその時アリスフィルから声がかかる。
「あら....坊やもう行くの?」
「アリスフィル....まぁ寝たらすぐ治るからゆっくりな。あと、さっきも言ったけど用事が終わったら多分来るから!多分!」
「ふふっ....別に来なくてもいいのよ...あ、あとの事は此方で上手くやっておくから。でも、また会いに来てくれると嬉しいわ」
「え、あ....。うん、分かった会いたくなったらまた来るよ!それじゃ!」
顔は見えなかったが声色はどこか暖かみを放っていた。アレイスターは今のアリスフィルなら今の混乱も前魔王の遺恨も安心だろうと感じた。若しかしたらあの戦いにはアリスフィル自身の覚悟と決意の現れだったのかも知れない。そう思いながらもアレイスターは召喚門に足を踏み入れるのだった。
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アヴァロニアに来ても状況は何も変わらなかった。寧ろ此方の方が遥かに混乱している。エリュシオンが一向に帰還しない為アレイスターと一緒に居るのだと考えていたのだが、結果は言うまでもない。そしてリュシリオンが現世でエリュシオンを感じたと伝えると皆んなの警戒が一気に強まった。
「マスターよ、まだエリュシオンとの契約は繋がっておるか?」
「うん、繋がりは感じるし向こうでも感じたから。契約自体は切れてないと思う。」
「なるほどなぉ〜。こうはしてられんな、マスター!取り敢えずエリュシオンの魔力源まで行こう!事は一刻を争うやも知れんぞ!」
鬼気迫るゼニスに圧倒され只事では無いと察したアレイスターは今すぐ出発するのだった。
時は少しだけ遡り、ヴァルハラ大陸より遥か東方の地でとある国同士が戦争していた。
攻め入るは教会が国の基盤であり中枢である【パラダム教国】受けたつは難攻不落の城塞軍属国家【ザランゲル軍国】戦争のきっかけは教国側が軍国に対して宗教の強制を図った事だった。少しずつ軍国内に信者を増やしていき気が付いた時には取り返しのつかない人数が教国の教える宗教に入信していた。
《パライゾ教》信者達が入信している宗教の名である。
そこから教国側は激しく揺さぶりを掛け始め最後には軍国国民全員にパライゾ教に入信するよう国王に殆ど脅迫とも取れる内容の書簡を出し今に至る。
〜パラダム教国・神の導き手〜
「我らは1000を超える選ばれた精鋭である!パラダム教国内にいる上級神官だけを集めた最強部隊『神の導き手』全てはこの時の為に!!!」
激しく唸る猛りの雄声は次第に寝っていき異様なまでの静寂が訪れる。魔力を高め1000人の魔力が同調し膨れ上がっていく。高まる魔力は周囲の木々を揺らし空気を重くする。
「さぁ神よ!!我らの全てを以て顕現して下さいませっ!!!!」
神官達の身体が光を帯び青白い球体が抜け出ていく。次々に人形のように力無く倒れていくのは絶命した証。気がついた時には誰もそこには居らず生気を一切感じない。
パリッ.....パリパリ....パリン!!!
ガラスが割れた音が聞こえる。空間が破れ歪にも悍ましい何かが這い出てくる。大きな影を作り軍国付近を曇空に変えてしまう。
何の因果か現れた神の名はエリュシオン
其れは恐怖と絶望を齎す厄災か将又、死という希望を運ぶ宙船か。




