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アリスフィル・エンゼルガーデン⑤

第3章

60話






出来たクレーターの中に居る二人の距離は依然離れたまま膠着状態が続く。思いつきで有るが土壇場で改めて手に入れたディア・ディシディアの魔神の手を自身の腕に纏う荒業。これがアリスフィルの動きを止めていた。


「(なにあれ...。明らかに異質、この世のものじゃない。)」


ディア・ディシディアは時空間を司る神獣とされている。その姿は妖艶な美しい女性だが肌は灰色く纏う衣服は黒く顔を覆っている為に尊顔は見えない。


そしてそんな神獣が使役する異次元の魔神は手足以外を封印されている為に使用できない。だが逆に言えば好きな時好きな所から好きに攻撃として手足を召喚できる。この攻撃はアレイスター本人も幾度となく使用してきた。


だが、アレイスターは考えていた。この魔神をどうにか自身に纏うことが出来ないか。今回は思いつきで急に使用した為に完全的ではないが確かに両腕には魔神の腕が纏われている。


「はっ!ぶっつけ本番にしては、様になってるだろ」


振りかざした拳は二人の間にあった距離を一瞬で埋めてしまう。その巨腕は異次元から召喚された魔神本体の腕だ。考え事をしていアリスフィルの虚をつくには十分すぎる不意打ち。しかし、寸前の所で躱されてしまう。


「全く....。驚かれてばかりよ、坊やには」


いつも通りの攻撃に加え新たなる魔腕。攻撃のバリエーションが増えていく。頭に出てくるイメージが形を成しそれを次々にぶつける。ここから怒涛の攻防が始まった。


ぶつかり合う拳は衝撃を生み出し合わさる事はない。地面は抉らるが結界のお陰で外界には然程支障は無く被害も及ばない。音が鳴り響くが限られた空間にアリスフィルの高速移動は不利を強いられ段々とアレイスターに有利になっていく。


「(流石はマスター。しかし、あの魔王も中々...マスターでさえ追えないスピード。本気を出せば大陸毎消滅させれるがそれをしないだけの関係値を築いてからの強襲。本命か否か、まぁ殺意は無いが...)」


空中から結界内を確認するリュシリオン。アリスフィルの評価も中々にアレイスターの成長にも嬉しくなる思い。結界の中に入る事も出来るがそうなればアリスフィルを殺してしまいかねないとアレイスターとリュシリオン本人も気付いている、だからこそ手出しはしない。


「ほっっとに!!もう!こうなったら...奥の手よ!!」


カッ!!!


光に陰るアリスフィルを中心とした魔力は禍々しく溢れかえり拡大しては収縮し最後には身体の形に収まっていく。


「坊や、真なる力をお見せするわ!」


純白に染まるその姿は魔王とはうってかわり正に天使の如し。白く連なる翼に白く綺麗に整ったドレスは目を奪われる。


「アリスフィル....凄いな...。出し惜しみは無しだ!!!」


アレイスターは手を前にパッと差し出し大きな魔法陣からとても持つ事の出来ない大きさの大剣を出現させる。浮かび上がる大きな剣は槍のにも見え不思議な形状をしている。


「グングニル....。まだ、まだ!!」


結界内なのをいい事に部分召喚を惜しみなく発動させる。集中力が分散するが気が散らないように意識を保つ。


「させないわよ!!坊や!!」


瞬間、時が止まる。これは比喩ではない。ディシディア・ダイアルの中ではアレイスターが認めた物しか動く事が出来ない。決着は呆気なかった。


パリィン!!!!


空間毎裂け音が鳴り響く。切ったのは魔力、流石に殺す訳にはいかないと考えた結果思いついたのが魔力だけを限定的に切り落とすという事だ。


「な、なにが、、、」


倒れ込むアリスフィルは何が起こったかわからず身体の力が抜けたように動けていない。プルプルと震えるアリスフィルを見てグングニルで結界を破壊し全ての矛を収める。


「マスター、見事です。」


リュシリオンは分かっていた素振りで近付いて来る。全ては見えずとも感じる事ができるのは契約している召喚獣だからこそだ。


「ぼ、ぼうや。さ、さすがね.」


動けないままのアリスフィルが振り絞る声で発する。アレイスターには聞こえているので近付きながら応答する。


「魔力を切ったから感じたことの無い脱力感だろ?スグに動ける様になると思うけど...でもアリスフィルほんとに凄いよ...こんな殴られたのはじめて...」


「そ、それ、は、、ほこ、、ろうかしら、、、」


脱力したアリスフィルを抱き抱えリュシリオンに乗ると来た道を帰っていく。アレイスターにとってもこの日の戦いは忘れられないものになった。糧となりアレイスター本人が強くなる為に必要な経験をこの日に得たのだった。


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