アリスフィル・エンゼルガーデン③
第3章
58話
アリスフィルの率いていた全魔王軍を送還したアレイスター。本来ならエリュシオンが司る異次元を契約者本人であるアレイスター以外がワープとして使用する事は原則できない。しかし...
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「はぁ、なんか疲れたなぁ〜」
現在、アレイスターはヴァルハラ大陸の上空をデストールド大陸へと向け飛行している。魔王軍を追い返したとき同様にエリュシオンの能力を使用すれば早いのだがそれは出来ない。
「マスター、本当にこれは必要だったのでしょうか?魔王軍など潰してしまえば良いではないですか」
「そう言うなよリュシリオン、成り行きとはいえアリスフィルは悪い奴じゃないし。それに、戦わないで良いならそれに越したことはないだろ?望まい侵略なんて誰も得しない...」
「まさかエリュシオンの異次元と異次元を繋いで道を作るなんて...。マスターの魔力と神獣契約を担保に無理矢理作った転送・転移。それの代償にマスターが異次元を通れなくなるとは...」
「こればっかりは自業自得だよな。エリュシオンにも無理させたし」
アレイスターは普通では有り得ない異次元のワープを入口と出口の概念を作り、分ける事で新たな道を生成した。しかし、そこに契約者以外が入ってしまえば消滅する事には変わりなく契約者本人にしか道としての役割を果たさない。
「まぁ、自業自得と言えばそうですが。あんな顔も名前も知らない奴らの為にマスターが不憫する思いをするなんて...もう少し自分の事を...」ガミガミガミ
リュシリオンは心配性で事ある毎に口煩く叱ってくる。だがそれは決して怒っているからでは無くあくまでアレイスターが心配だからであるし、それをアレイスター本人も勿論気付いている。それに異世界に来てからというものあまり怒られることも無く過ごしてきたので逆に新鮮であり嬉しささえ感じている。
「マスター、何を笑っているのですか!私は本気で...」ガミガミガミガミ
「いや、分かってるってリュシリオン笑笑」
人の目につかないその場所は先程まで居た街々では想像がつかない程静寂に包まれており正に二人だけの世界であった。
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「遅い...。何をしているのかしら坊やは...」
デストールド大陸、魔王アリスフィル・エンゼルガーデンが住まう巨城が聳え立つ魔都市エバニアン。自領地まで強制的に戻されたアリスフィルはアレイスターが来るのを待っていた。しかし、エリュシオンの能力を使用する事ができないアレイスターにとって大陸間の移動は神獣をもってしても物理的な時間がかかってしまう。アリスフィルがエバニアンに戻ってきてから実に3時間が過ぎようとしていた。
「(確かに、ヴァルハラ大陸を横断するようなものだから時間が掛かるのはしょうがない。それに、私の軍を此方に送ってからの移動になるのも百も承知。でも、あの転送?転移?の能力を使ってこちらまで直ぐ来れるはず。なのに何故?あれには限定的な条件がある?それとも...)」
自領地まで戻された魔王軍は一度立て直すという名目で待機命令を出していた。軍の兵達にはアレイスターを直接叩くと話しており内情を知るアリスフィル本人と黒金殲滅隊の面々だけがアレイスターの心配をしていた。
「アリスフィル様、流石に遅過ぎでは無いでしょうか?」
その話題を先に口に出したのはビィリーヘブン・ベリージエルだった。彼だけが唯一アレイスターと直接戦闘しておりその身をもって彼の実力を体感している。
「そうね、坊やの事だから心配は無いでしょうけど...」
「アリスフィル様!あれを!」
その場に居た全員が指差す方向を一斉にみる。それはデストールド大陸には似つかわしく無い輝きを纏った白き龍でありその背に乗るのは...
「やっとお出ましね...」
そう呟くとアリスフィルは白き龍に向い飛び始める。エバニアンでは近付いて来る強大な魔力と其処に向かうであろうアリスフィルの姿が確認された。魔王軍以外の普通の住民も住んでいるのでアリスフィルは城を離れる決断をした。
「遅かったわね坊や、何かあったの?」
「ごめん!アリスフィル!ちょっと色々あって...」etc
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「なるほど、私達を飛ばす代わりに坊やは通れなくなったという訳ね。それは一時的な物なのかしら?」
「う〜ん、どうなんだろ。エリュシオンに聞いてみないなんとも...。けど、俺的には一時的って事はないと思う。無理な条件付きで強引に通したから。まぁ、それはしょうがない!大陸中の魔王軍を一斉にワープさせたんだしこの程度ですんで良かったよ!」
「坊や、貴方変わってるわね...」
「え?そうかな?」
「ええ、でも...とっても面白いわ」
アリスフィルが出会って初めて笑顔を見せた。肩の荷が降りたからかアレイスターを気に入ったからか将又そのどちらともなのか、それは本人にしか分からない。
「ま、何とかなったしこれで一件らくち...」「ちょっと待って!」
アレイスターの言葉を遮るアリスフィル。それが何故なのか理解できず疑問符を浮かべるアレイスター。
「このままじゃ魔王軍だけではなく市民にも示しがつかないわ。どうせなら、もう少し楽しみましょ?私も全身全霊、貴方を倒す為に戦う、だから坊や...貴方も!」
魔力を一気に解放するアリスフィル。その象徴とも言える翼が段々と黒から金へと変貌していく。それは、エバニアンの街だけでなく大陸全土を照らすが如く光り輝く。
「我が名は七魔皇帝が一人、「黒金」漆黒の魔王アリスフィル・エンゼルガーデン!!大陸全土を支配し、亡き父の悲願を成し遂げる為、今ここで立ちはだかる障害を取り除く!行くわよ!坊や!!」




