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アリオンの街③

第3章

54話






ビィリーヘブン・ベェリージエルと名乗る魔王の配下。見た目は青年で赤い瞳に金色の髪の毛が特徴的だ。黒を基調としたタキシード様な服にマントを羽織り襟を立てている。


「お前!!さっきから何なんだよ!!」


場所は変わりアリオンの街上空、ビィリーヘブンの魔法は悉くアレイスターによって邪魔されていた。先程、ギルドに居た時に出現させようとした魔物達を今度は街全体へと放つ為に空へと逃げたがアレイスターからは逃げれられず防戦一方を強いられていた。


「お前こそっ!逃げてばっかじゃつまらないぞ!」


「くっっ!!!(おかしい、いくら何でもこんな事がある訳....)」


「考え事か?余裕そうだな!」


バギィィ!!


「ぐはっっっ!!!!」


アレイスターは、記憶喪失の影響で魔法や戦いに対する勘が少し鈍っていた。アリオンの街に来て1週間、ただ情報収集だけをしていた訳ではなくアヴァロニアにて神獣達と訓練を行っていたのだ。


「(殴られただけ、その筈なのに何だこの痛みは!)」


ビィリーヘブンの魔法は魔物を召喚するに非ず、本質は空間と空間を繋ぐ'間'である。魔王領であるデストールド大陸とここヴァルハラ大陸にある距離=間を繋ぎ魔物を出現させていた。この'間'を使い他人との間を縮めたり縮めさせ無かったりと攻守共に優れておりこの魔法でビィリーヘブンは魔王アリスフィルの直轄部隊「黒金殲滅隊」にまで上り詰めた。


一方、アレイスターが使用している魔法は神獣エリュシオンの能力である。エリュシオンは次元と空間を司る神獣でありその能力はビィリーヘブンの魔法と非常に相性が良い。それに加えドランシアの魔導書(グリモワール)に保存している魔法を同時に使用する事で相手が行動を起こす前に無力化している。


「(こっちの魔法は全て発動前に無力化され、ヤツの攻撃だけが俺に当たる。これはマズイな....一旦立て直すか?いや、そんな隙があるとは...)」


「逃がさないぞ?絶対にな、色々聞きたいこともあるし」


魔法に加え物理的にも攻撃を仕掛けるアレイスター。ビィリーヘブンと自身との'間'を失くしつつメル・クーリヴァの能力による風を利用し勢いを上乗せするパンチは通常では出ない威力を発揮する。


「(このままじゃぁ〜俺は死ぬな。なら、どっちみちやるしかねぇか....)」


一瞬、手をバッと大きく広げアレイスターの攻撃を凌ぐと落ちるように'間'に飲み込まれていった。だか、それは彼には通用しない。


それはビィリーヘブン本人もわかっていた。だが、敢えてここでこの避け方をしたのだ。彼はほんの一瞬だけでも自分の自由な時間が欲しかった、ある秘策を使う為に。


「そんなんじゃ避けた事には、、、」


アレイスターは刹那、確かに見た。ビィリーヘブンが指輪を握り砕くその瞬間を。


「こぉ〜なん街なんて、もう必要ねぇ〜。重要なのは、お前だクソガキ。何者か知らねぇがお前は生かしてはおけねぇ。この強さ、正直マジで驚いたぜ、魔王より強い人間がこの世界に居るとわなぁ〜。アリスフィル様にお前を近付ける訳にはいかねぇ〜ここで俺と街ごと.....!!!!!」


音は無かった。唯、眩い光だけが目の前に広がり全てを包む。



~直前〜


「ゼニス!メル!」


「分かっておるぞ我がマスターよ」


「ええ勿論。」


アレイスターの懐からゼニスとメル・クーリヴァが出てくる。それと同時に神杖ゼニス・アルマを両手でしっかりと握るアレイスター、3人の魔力が重なり魔法陣を描く。青く光り輝きその発光と共に大きく広がっていく。


「ディレクション・オクタゴン!!!」



~現在~


全てを覆い尽くす白い光は段々と細く小さくなっていく。何が起きたかは分からない住民は皆外に出て空を見上げていた。


「な、なんだったんだ?今の光は」


「あぁ、家の中に居たのに目の前が真っ白になったぞ」


住人達は戸惑いを隠せずただ、身体に何も違和感がないかを確かめあっていた。


「な、なぜ?何も起きていない?俺は確かにアーティファクトを潰して、、、」


「やっぱ、アーティファクトだったか。それで1回とんでもなく痛い目にあってるからなぁ、嫌な予感が当たってよかったよ」


アレイスターは丸で何も起きていなかったかの様に振舞った。姿を出していたゼニスとメル・クーリヴァも再び懐に入っており神杖も手にしていなかった。


「なんの魔法なのか分からなかったから障壁と次元で結界を張って魔法を打ち消す様に包み込んだんだよ。光は閉じ込められないけど魔法の効果範囲を覆い尽くす事はできるからお前の魔法に被せる様に俺の魔法を重ねたって訳」


「......お前は一体何者なんだ?何故それ程の力を。魔力は殆ど感じないのに、何故?」


「質問したいのはこっちなんだけど...まぁ、産まれつきかな」


「何故、俺まで助けた。」


「聞きたいことあるって言ったじゃん。そういう事だよ」


「お前に話す事など......」


「何も、無いわよねぇ〜?」


「!!!!!」


大嵐の中に入ったが如く突風が吹き抜ける。それは、自然で起きた風にしては余りにも荒く激しい冷たい風だった。


「アーティファクトの魔力を感知したから何事かと思って来てみれば、(わたくし)の部下を....よくもやってくれましたわね人間の子供」


大きくはためかせる腰の位置に着いた漆黒の剛翼に闇のように深いドレスを身にまとった黒髪の女性。その存在感だけで此奴が魔王だと言う事が一目で分かった。


「改めて、七魔皇帝が1人。魔王アリスフィル・エンゼルガーデンよ。以後お見知り置きを、今回は引かせてもらうわ。でも近々また....」


「あ、待て!!」


魔法の発動よりも先にビィリーヘブンを抱えたアリスフィルが姿を消した。飛んだのか消えたのかそれすら分からず魔力の残穢さえも残っていない。


「アリスフィル・エンゼルガーデン...」


ただその一言だけが虚しく空に塵となった。


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