アリオンの街②
第3章
53話
晴れ渡る快晴にはどうも見合わない雨が降る。跡形もなく消え去った魔物達をよそ目に襲われていた護衛は空から降りてくる神々しい何かに感謝を述べていた。
「おぉ!神よ!助けていただき誠に感謝致します!」
「バンザーイ!バンザーイ!」
「いやいや、神とかやめてくださいよ笑ただの人間ですから」
「何を!ただの人間が空から降りてくるなどできるはずも!」
「まぁ、そー言われればそうなんですけど....」
話を聞くところアリオンの街へ向けた行商の護衛の途中で襲われたらしい。しかも、防具を身につけた魔物というのは魔王の手下らしく隣の大陸からこちらへと勢力を拡大しているらしい。
「隣の大陸ってニューメール大陸ですか?」
「いや、あれは一応人間の領土になってますんで魔王の支配する大陸はヴァルハラ大陸より北に進んだ所にあるデストールド大陸、通称死を呼ぶ大地です!」
「死を呼ぶ大地?そんな大陸の名前アリオンの街でも何も聞かなかったけどな」
「そ、そんな筈は!魔王の手下がここまで近付いてるんです!アリオンの町が気付いてない筈!....」
「でも、ここ1週間アリオンに居たけど何もそんな噂は無かったけどな」
ここ1週間でアレイスターは近辺の調査と現在地の確認の為街での聞き込みや冒険者達の話を盗み聞きしたりして色々な情報を手に入れていた。それに、記憶喪失になった事もあり状況整理は急務と言えた。
しかし、護衛の話をきくとどうもアリオンの街は田舎に存在はしているがここら辺でも有数の大きな都市にあたるらしく情報が行き渡っていないことに違和感を覚えていた。
「おーい!取り敢えず街まで行きたいんだがー!」
行商人が馬車から声をかける。
「あ、すいません!行きましょう!!。取り敢えずアリオンまで御足労頂いてもよろしいでしょうか?お礼もしたいですし」
「い、いや!全然!先を急いでるんで、その」
「マスター!」
「はい!」
「ここはこの護衛達の話も気になりますし一度街まで戻りましょう!(小声)」
「あ、確かにそうだな。もしかしたら大変な事になってるかもだし、てか魔王ってさ」
「はい、ユリオンではないと思いますが」
小声で俺にだけ聞こえる声で話し掛けてくるリュシリオン。確かに短い間とはいえ1週間も街に居て魔王や魔物の話が無かったのはどうも気掛かりだった。
「わかりました!俺も街まで同行させていただきます」
「おぉ〜!!有難い!お礼の方は後ほど街で!」
「いえいえ、全然大丈夫ですよ笑」
アレイスターは来た道を今度は歩いて戻っていくのだった。
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アリオンの街へ着くと護衛の依頼完了報告をしにギルドへやって来た。それに、情報を入手するのにギルド程適した所はないともいえる。
「さぁさぁ!報告も終わりやしたんで、色々と状況を整理しましょい!」
「まず、受付の女の子に聞いたんですが魔王軍の噂なんか何も聞いていないとの事で...」
先程よりも砕けた口調で話をする4人は隣の街から来た冒険者らしい。アリオンに来るまでに堅苦しいのは嫌だとアレイスターから申し出をし今はフランクに会話をしている。
「俺らの街では魔物の急増が問題視されていて護衛や警護の依頼も討伐任務と同じくらい増えてんですぜ」
「逆に言うとここにはまだ手が伸びてないとか?」
「アリオンの方が魔王軍からは近いのに確かにここに来る道中ではあの3体以外は見てない...」
「そうだ!それに...いや、待てよ。よく考えればアリオンにはまだ魔王軍の勢力は来てないんじゃ?だとしたら、」
「........」
「あの時!!そーいえば!誰だよとうとうここまで!とか何とか言ってたヤツは!」
「......」
「え、なになに?どーいうこと?」
困惑しているアレイスターを他所に3人は一斉にもう1人の方を睨みつける。
「おまえ、誰だ!!!」
「え?なになに?」
「こ、こいつ!!俺らの仲間じゃないですぜ!」
「フッフッフ...やっと気付いたかよマヌケども」
「お前誰だ!」
「ずっと、護衛が始まってから一緒だったじゃねぇ〜か?それなのに悲しいぃ〜ぜ。仲間の顔を忘れちまうなんてなぁ〜」
宙に浮き輪の中から離れいていく。ギルドに居る人達の注目が一身に其奴に向かう。
「改めて!お初にお目にかかるぜ!七魔皇帝が一人アリスフィル様が配下、四天王ビィリーヘブン・ベェリージエル!!アリオンの街は今日よりアリスフィル様の物になる!」
「な、なにを!いきなり何なんだお前!」
「そうだ!何が七魔皇帝だ!魔王なんてバカバカしい!」
ギルドに居た冒険者達が次々に声を挙げていく。しかし、その不満の声を丸でオーケストラを楽しむ様に聞き入るビィリーヘブン。
「う〜ん。お前らのその怒りや不満の声が心地よくてたまらねぇ〜な!先ずは、」
指先を空になぞる様に動かすとそこから魔力が漏れ出す。
「ここを魔物たちで埋め尽くす!!!」
口が開いた様に指でなぞった部分が開き始める。そこから魔物が溢れ出さんと顔や腕を覗かせる。
「うぁぁぁぁ!!!」
「きゃぁぁぁぁ!!!」
喧騒が悲鳴と恐怖の声に変わる。
「そうそう!これこれ!!これが1番気持ちぃ声なんだよ〜!!」
「エリュシオン!!!」
声と共にエリュシオンの一部が顕現する。そして開かれた口を一瞬のうちに消し飛ばす。
「は??」
「次元ごと断ち切ったんだよ、めんどくさいし」
「お、お前何もんだ?」
「俺?ただの......ただの通りすがりだ!」
ビィリーヘブンと同じ目線まで浮かび上がるアレイスターはドランシアの魔導書を開け戦闘態勢に入るのだった。




