始まりは彼方③
第3章
50話
光に包まれた先で見慣れた風景に安心を覚える。そこは当たり前に傍にあったのについ最近まで忘れていた、聖なる神達が住まう神域。
~神獣達の住まう世界:アヴァロニア~
「アヴァロニア...そうだ、ここはアヴァロニア。俺の大事な仲間達が...」
「マスター!!!!!!!」
「我がマスター!!!!」
真っ白に輝く純粋無垢な身体は光をも透過しそうな程に透き通り目を覆いたくなる。見慣れていた筈の姿と声に安心感を覚えると同時に忘れていた事に落胆する。
「リュシリオン!!!ゼニス!!!みんなぁ〜〜!!!」
リュシリオンを含め契約している神獣達が一斉に集まってくる。皆の形相や向かってくる速度からすると相当心配してくれたんだと分かった。
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「マスター!!本当に心配したんですよ!!」
リュシリオンが大きく声を荒らげる
「まぁまぁ、リュシリオンよ。我がマスターは無事だった
それで良いでは無いか」
「し、しかしゼニス様!我々がマスターを感知できないどころか存在が消失していたかもしれないんですよ?」
「たしかに、死んでいてもおかしく無かったと思うわ。逆に生きてる方が不思議だもの」
「そうだマスター。影に入る事すら出来ない。それどころかこちらから干渉出来ないようになってたんだ」
「やっぱ、アイツの所為だよな。まだ、頭っていうか脳が痛む時あるし」
「どれ我がマスターよ。儂が見てやろう」
ゼニスは静かに近付きアレイスターの頭にそっと手を添えると優しい光が辺りを照らし初めアレイスターの身体を包み込んだ。正に抱擁ともいえるその光は全てを浄化し全てを始まりに戻す。
「ふむ、これは...。痛みに関してはもう心配いらんじゃろ。しかし、根本的に解決するには恐らく元凶を断たねば」
「根本的に解決?どーいうこと?」
「うむ、一時的な発作が起こるやもしれん。まぁ、痛みはないにしろ何か異変があればまた儂に言うがよい」
「う、うん。わかった」
俺はしばらく会う事のなかった神獣達と思う存分談笑を満喫したのだった。
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「ふぅ...」
アヴァロニアから帰還すると既に夕方になっていた。時間の感覚が現世と違う所為で久し振りなのも有り時差ボケになってしまいそうだ。
「疲れたなぁ〜。でも久々に皆んなと会えてめっちゃ安心したな。」
ベッドの上に勢いよく飛び込む。体が重く全身に重力を感じ何もやる気が起きない倦怠感が全身を襲う。
寝転びながら自分のすべき事を考える。記憶を取り戻した事で此処にお世話になる理由もなくなり目的も思い出した。それに現在地が神獣達と会合した事により把握することが出来た。
今は記憶喪失前に居たニューメル大陸よりも更に西に進んだ先、俺が居た学園都市からみると2つ程大陸を横断した所にあるらしいこの国。
随分遠くまで来たという実感と記憶喪失に加え転移までさせられたという言い表せぬ不安。しかし、別に恐怖を感じていた訳ではなかった。それよりも全てを思い出し自分が自分である喜びと意志と一致する身体の動きに感動すら覚える。
「アレイスター!!」
突然扉を開き部屋に入ってきたのはエールだった。慌てた様子で息を荒らげ俺の顔を見るなり泣き出してしまった。
「え、エールさん?!」
慌てて身体を起こして立ち上がる。そのまま俺の方に飛び込んでくるエールさんを受け止め再びベッドに座り込む。
「ど、どうしたんですか??」
「お、おまえ、き、きおくもどった、からで、出ていくんだろ?...ズビィ、だ、だから」
「ちょ、ちょっとエール〜」
次に少し涙目になったアールがアレイスターの部屋に入ってくる。エールが泣きすぎている為姉であるアールは涙を抑えようと必死に押し殺したがそれも2人の様子を見るなり限界を迎える。
「あ、あれぃすたぁ〜くぅ〜ん」ボロボロ
「ア、アールさんまで〜ちょ、勘弁してよ〜」
2人はオカミさんが呼びに来てくれるまで泣いたたままアレイスターに抱きつき離れなかったのである。
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「困ったな〜出発しずらくなっちゃった。夕食中も離れてくれなくてオカミさんに怒られるし...ハハハ楽しかったな此処での生活も」
思い返すと短くも長い2ヵ月。記憶喪失による弊害が無かったとは到底言えないがこの街の人たちは余所者の俺を暖かく受け入れてくれ寝床と毎日の食事に仕事まで与えてくれた。本当に感謝してもしきれない恩を感じている。
「よいしょっと....ふぅ〜。でも、やっぱり明日には発とう。ユリオンとラシュリーの事が気になって寝れない...」
頭の片隅でずっと気になっていた2人の行方。若しかしたら俺と同じく全く違う場所に飛ばされている可能性も否定できない。
「まぁ、あの2人なら大丈夫だと思うけど...。問題はラシュリーだよな。一応ネデ・フォネラージで留守を頼んでた筈だから何も無ければ大丈夫だと、、、うーん不安だ」
「まぁ!今は何考えてもしょうがないよな。俺も2ヶ月間記憶なかったわけだし...」
目を瞑り顔を天井に向ける。深々と暗い闇の中へと身を委ね沈んでいく。
ガチャ
扉が開く音が聞こえるがアレイスターの意識は朦朧としていて気が付けば眠りについてしまっていた。両腕に絡みつく2つの熱は大事な物を決して離さないように固く固く結ばれてるのであった。それに当人が気付くのは次の日の朝であった。




