魔特待首席?
第1章
5話
入学試験が始まったばかりの筈が俺は何故か会場から離れて黒髪ショートの美しいメリナという試験官に連れられ校舎を歩いていた。
「アレイスターと言ったな。君を今から学園長の所へ連れていく。案ずるな悪いようにはしない。」
メリナは歩きながら少しだけ顔をこちらに向けて喋った。
どうやら、俺が心配していると思ったらしい。
確かに、こんな状況になってしまえば入学拒否と言われてもしょうがない気もする。だが、前世の記憶を持つ俺にとっては悪くない展開だと分かる。
「はい、ありがとうございます。すいません、測定するやつ壊してしまって、、、」
「ハハハ!気にする事はないさ。過去にもアレを壊したものは何人かいるからな!しかし、君のは少し異常だったが。」
俺は少し拍子抜けした。過去にも壊した奴が居るなんて
どんな人物なのだろうか?正直自分が初めてで後に語り継がれる事を期待してたのに残念である。
「俺の他にも壊した人がいるんですか?」
俺は疑問に思いメリナに尋ねた。
「あぁ 過去に5人、君と同じく測定器を壊した者達がいる。しかし、入学試験で壊したのは君がはじめてだ!誇るといいぞ!」
メリナはどこか嬉しそうに笑いながら答えた。
「え、入学試験以外でもアレを使用するのですか?」
「あぁ、この学園には毎年 祭礼という名の祭りをするのだがそのひとつに魔礼祭というのがあってな。そこで用いられるのだ。」
魔礼祭。どうやら、魔法を使って戦ったり 魔法を使って芸術を競い合ったりといった魔法を使った体育祭・運動会みたいなものらしい。
メリナと話していると前方に大きくて豪華な扉が見えてきた。
「さて、あれが学園長室だ」
それは初めて見る大きさの扉だった。全高10m以上はありそうで装飾品も豪華で王族の扉と見まごうほどだ。
「さぁ、学園長がお待ちだ。入ろう。」
メリナが扉の前に立ち、手をスっと前に掲げると扉は勢いよくバァーンと開いた。
「学園長!例の生徒を連れてまいりました!」
俺は先程からのメリナの言葉に違和感を覚える。学園長がお待ちだ?あと例の生徒?一体なんの事だと思いながらは俺は学園長室に入った。
「失礼致します。この度この学園にて入学試験を受けさせて頂いておりましたアレイスター・マグナと申します。」
俺は学園長室の中を確認するより早く先にお辞儀と挨拶をした。
「これは、丁寧にありがとう。ようこそ我が学園へ。
わたくしがこの学園の長であるミラエル・ベルンダと申します。どうぞよろしく。」
ミラエルと名乗ったその女性は美しくとても綺麗な人だった。学園長っていうから大体40~5.60代を想像していたが
20代くらいにみえる。
大きい魔女帽子に白髪のロング。黒を基調とした肩やお腹が出ている薄めの服。明らかに若い。
「うふふ、わたくしの顔に何かついているのかしら?」
目が離せずに居た俺にミラエルは笑みを浮かべ問いかける。
「失礼致しました。あまりにもお綺麗だったものでつい見とれてしまいました。
俺は即座にテンプレートかの如くミラエルに返す。
「あらあら、嬉しいですわ。」
明らかに言われ慣れてるであろう彼女は少しニコッとして俺の返事に対して答えた。
「アナタの事はこの学園の敷地に入って来た時から気になっていました。」
ひと息ついたかと思えばミラエルの口からそんな言葉が出てきた。
「敷地内に入ってきた時から?」
俺は即座に答えた。
「はい、わたくしはこの学園の敷地内に居る全ての人間を把握しています。魔力の質や量その人の名前や学園の何処にいるかなど、学園内ならわたくしは何でもわかります。ですので、アナタが敷地内に入ってきた時からメリナや他の教員にも気になる生徒が居ると伝えて合ったのです。」
ミラエルは俺の顔から目を離す事無く淡々と続けていく。
「アナタの魔力は他の生徒いや、我々教員よりも膨大で強力。なのにその魔力は限界まで封じ込められているのですから気にならない訳がありません。ですから話を聞きたかったのです。メリナ。」
そう言うとメリナはすっと立ち上がりミラエルの方に向き直った。
「は!私が見た限りではアレイスターが使った召喚獣は今まで一度も見たが事なく一瞬だけでしたが単体で私より魔力が強大でした。」
「アレイスター、アナタについて少しお聞かせ願いますか?」
ミラエルは静かに尋ねた。
「わかりました、お話します。」
俺は2人に魔法適正が高いのにもかかわらず属性魔法が一切使えない事や、強大すぎる魔力を抑える為に自身の体を召喚魔法の媒体にしているかもという話をした。
「なるほど、媒体を無しに召喚魔法を...」
ミラエルは神妙な面持ちで呟いた。
「学園長、やはりアレイスターは」
「ええ、恐らくそうでしょう。」
「うん?どーいうことですか?」
俺は堪らず2人に聞いた。今の口ぶりからするに何か危ない匂いがプンプンな気がする。
「アレイスター、アナタは<テンセイシャ>ですか?」
ミラエルの一言に俺は驚きを隠すことができず固まってしまった。
「やはり、そうでしか。<テンセイシャ>と聞いても普通なんの事かさっぱりでしょう。ですが、その反応から察するに」
「はい、俺は転生者です。」
俺はミラエルの目を離さずそう答えた。
「6年前にこの学園で転生召喚なる魔法を使った者がいました。その者は自分の命と引き換えに失った弟を転生させる為魔法を使用しました。が、結果は失敗。その者の弟は転生すること無くその者自身も死んでしまいました。」
俺はその話を聞いてまた驚いた。6年前に俺はこの世界にアレイスターとして目覚めた。今ミラエルがした話も同じく6年前、偶然ではないだろう。
「俺は現在6歳。つまりはそーいうことですか?」
「はい、わたくしはそう考えております。」
「正直、ビックリしました。こんな話になるとは思ってもなかったので。」
メリナも俺の顔を目を見開いて見ている。
「まさか俺もこんなことになるとは..」
学園長室が静まり返る。なんとも言えない状況に凄く気まづさを覚える。
「さて、話を戻しますよ!」
パンッと手叩き空気を切り替えるように明るく振る舞うミラエル
「わたくしはアレイスターを魔特待首席としてこの学園に入学してもらおうと考えています。」
「魔特待首席?」
「はい、魔特待首席とはまぁ簡単に言ったら首席って事です!」
「学園長、そう簡単に仰らないでください。魔特待首席とはこの学園だけでなく学園都市全体においても重要なことです。魔特待首席というだけで家を買うのもご飯を食べるのもタダで毎月金貨100枚の給付、言い出したらキリがありません。それを6歳の子供に、、、」
メリナが色々と説明してくれたので凡そは分かった。つまり魔特待首席とはメッチャクチャ特別な首席って事だ。成程、理解した。
「アレイスター、アナタはどう?」
「俺としてもそんな美味しい話ならコチラからお願いしたいぐらいです。」
俺は変に取り繕うことなく一人称も俺に戻し、ミラエルに答えた。
「アレイスター、分かっているのか!本当に凄い名誉な事だが同時にお前の身もお前一人の物じゃ無くなるって事なんだぞ?!」
メリナは俺の事を心配してくれているようで少し涙目になりながら肩を掴み揺らした。
「はい、分かっています!ご心配ありがとうございます!」
俺は満面の笑みでメリナに答えた。