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ニューメル大陸②

第2章

44話






日が上り始めたのと同じくして俺達は出立の準備を終えようとしていた。辺りはまだ薄暗く少し寒い感じもする。


「ニア、色々ありがとう!昨日の宴会もご馳走だし!超美味しかった!」


荷物など無い状態で来たアレイスターとユリオンの手には大量の食材や竜に伝わる古文書の数々が持たされていた。


食材は言わずもがな、この古文書が今回の旅では役に立つかもという事らしい。ドラニア曰く


「これが有れば大丈夫!!!」


と言うことらしい。物凄い自信満々で言ってたので多分大丈夫なんだろう。


「こちらこそ、楽しい夜だった!ありがとう!また来ると良いぞ!2人なら大歓迎だ!!」


ご機嫌なドラニアは凄く楽しそうに笑った。これから別れると言うのに全くそんな事を気にしていない様子で本当にまた次に会える事を楽しみにしているようだった。


『我からも感謝を.....ニア殿。また、旅の終わりに今度はラシュリーも連れてここに立ち寄ろう!』


「魔王....。いや、ユリオンよ。あぁ!また絶対に来い!次は3人でな!!」


この熱い光景を映画のワンシーンを切り取るように目に焼き付ける。何だか胸がギュッと掴まれ感情が込み上げて来る感覚。今、改めて俺達はドラニアと友人になれた気がした。


「それじゃ、また!!改めて、ありがとう!ニア!」


崖の上から飛び降りる。まだ、夜の気配が残る寒い空の中を風を味方にする様に急降下していく。空から空へと落ちる感覚は初めて味わうもので、改めてニアの言っていた2つ目の空という意味が理解できた気がした。


分厚い雲の中を掻き分け、冷たい水蒸気が肌に触れ、息をするのも難しい程の勢いで駆けていく。そして眩い光と共に視界と世界が広がる


見えたのは大きな空に佇む大陸。それは遥果てしなく続き此処が地上なのでは無いかと疑う程に広がる見慣れた場所。いや、もう見慣れた場所。


ユリオンの城へと帰還した俺達はラシュリーに事の顛末を伝えていた。竜が来た事は分かっていた様で2人なら心配無いだろうと思っていたらしい。自身も体調が優れないと理解していた為療養を優勢したとの事で俺達も当たり前と言わんばかりに大きく頷いた。


『でも、竜って凄いのね!まさかもう1つ上の空に居たなんて!考えた事も無かったわ!』


『我もだ。それに!我らの行先もとうとうわかった!』


「そうそう!たしかに!たしかに!」


『なら、大体の事はもう分かったのね。』


『あぁ。言わずとも、思い出せずとも今は分かる。』


2人は見つめ合う。何かを確かめるように。話さなくてもこれからの動向はアレイスターを含め理解できるだろうしラシュリーを苦しめる心配もない。


再会を喜んだ俺達は例の花園で朝早くからピクニック気分を味わった。陽が昇り少し時間が経過したこの場所は太陽が程よく当たり心地良い程に風が吹き抜ける。


~自室~


朝食を食べ終えた後はそれぞれ自分たちの時間を過ごす。今回の出来事を改めて個人的に整理する為と休息の為である。


アレイスターはユリオンの城に用意されている自室にてベットに倒れ込む様に寝転がった。


「なんか、急に気が抜けたな。ドラニアには申し訳無いけど久々にみんなと会えて嬉しかったな。」


寝返りを打ち上半身を起こすと持って帰ってきた本を1冊手に取る。表紙には文字はなく紋章の様な模様が浮き彫りになっていて凸凹と手に触れる感覚。


「......ん??」


開こうとしても開かない。グッと力を入れてみても開く気配が無く本の周りを確認してみても目立った所はなく錠がされている訳でも無かった。


「え?マジかよ、何か開く方法ないのかな...」


試しに魔力を込めてみる。すると見る見る光が伝っていき本全体が青白く輝き始めた。


「なんだ!これ!!」


本はひとりでに動き始め手元を離れ宙に浮いきながら開かれていく。パラパラと音を立てて光が部屋に満ちていく。


やがて光が視界を塞ぎ身体を飲み込んでいく。


「こ、これは!?」


何かが流れ込んでくる。それは力と言うより繋がった感覚に近くそれと同時にこの本の内容が頭に刻まれていく。


ドランシアの魔導書(グリモワール)...」


頭の中に刻まれた内容はこの本の名前と能力の詳細であった。ドランシアの魔導書(グリモワール)は本の中に魔法や魔術、魔力をストックできるらしい。その数に限りは無く魔力を流し込んだ者によって個人を判別し所有者によって中身も変わる、正に魔法の本。


「凄いなこれ。古文書って言ってたのに、もしかして間違って入ってた?....。まぁ、次会った時に聞いたらいいか。取り敢えずは使わせてもらおう。」


俺はこの本の中に召喚獣それぞれの魔法陣と今自分が使える神獣達個別の能力、そして魔力等様々な物を魔導書に刻んだ。ストックする際に放たれる魔力は全て魔導書に吸い込まれる為ユリオンの障壁内にいても関係なく使用でき更には本その物には魔力がない為感知にも引っ掛からない。


勿論魔法を使う際には魔力は溢れ出るが使用する直前迄は全く分からない。(これは早速試したからわかった)

それに自在に出し入れが可能で使用しない時は姿を消す。能力を使用する際は姿を表すが1つの能力なら本を消した状態でも使用できるらしい。


「本を消した状態でも1つの能力なら使用可能。その1つは予め固定する必要があるが...それはデメリットにあまりならないよな。」


俺は昼食を通り過ぎ夜食になる迄ずっと魔導書について深く向き合っていたのだった。


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