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大いなる空の支配者⑦

第2章

42話






「良くぞここまで参られた、2人の人間よ。私がこの大いなる空の支配者 竜神ドラニア・ドランナイトである。親しみを込めてニアと呼ぶ事を許そう。」


ドラニア・ドランナイトと名乗った彼女は見た目は人間そのものだった。白い様な透明な長髪は煌びやかに輝き立ち姿は正に女王というのに相応しい。しかし、神と言われると些か疑問が残る態度だ。


「アレイスター・マグナです、よろしくお願いします。」


『我が名はユリオン・コペルニクス!よろしく頼むぞ竜の王よ!」


「アレイスターとユリオンだな。其方らの名前は記憶した。今日はよくここまで来てくれたな。存分に寛いでいくがよいぞ」


『寛ぐも何も貴様らが襲ってきたのが始まりであろう!』


「それは其方たちが我らの領域に先に踏み入れたのが悪い。我らは迎撃したに過ぎん」


『なにぃ?貴様、謝らんつもりか?』


「当たり前じゃ、防衛したに過ぎんと言っているであろう?」


「おい!!貴様!さっきから口の聞き方に気をつけろ!!竜神様の御前であるぞ!!!」


ユリオンの言動にここまで連れて来てくれた竜達が大きく騒ぐ。しかし、当の竜神本人はあまり気にしていない様子だ。そして、落ち着いた表情でこちらを覗き込む様に視線を向けて一言放つ。


「アレイスター、其方は言いたい事はないのか?」


「俺ですか?俺は逆に謝りたいですけどね、結構暴れちゃいましたし。。」


俺の発言に面を食らったのか素っ頓狂な顔で驚いた。そしてその後に大きな声で大笑いした。


「其方は面白いな!アレイスター!あと、もう少し砕けた感じで良いぞ?私もそのほうが話しやすい」


「まぁ、ニアさんがいうなら」


「ニアで良いぞ?」


「そう?それじゃニアで、改めてよろしく」


そうして俺たちは会話をすすめた。言いたい事は余り無かったが聞きたかった事は山ほどにあったので気になっている事を質問していく。


「こ、こんな竜神様を見た事はないぞ??」


周りの竜達が驚き、ざわざわし始める。どうやらこんなに喋る竜神は珍しいようで騒がしいとまではいかないが異様に静かなこの空間には似つかわしくない雰囲気が漂う。しかし、そんな事など気にも止めずアレイスター達は会話を弾ませる。


「成程。その正体不明の封印を解く為に旅をしていると.....」


ラシュリーの事情についてユリオンの了解を経て何か知っている情報がないかと尋ねた。


「正直、直接見てみない事には何とも言えないが...もしかすると喰らう者(くいばみ)の仕業かもしれないな。」


「くいばみ?」


『く、くいばみ...』


「ええ、それは世界を喰らう者。この世界の誕生したその時から存在するとされる現象の様な者。もちろん、生物ではあるがこの世界の均衡を司るといわれ繁栄した文明や高度な技術を持った時代の人類の前に突如現れ全てを喰らいまた姿を消す。最早、災害や自然の摂理と同一視され防ぐ術は無いと...言い伝えられている。」


「その喰らう者(くいばみ)って奴がラシュリーやユリオンの記憶の欠落に関係している可能性が?」


「う〜ん。もちろん、憶測ではあるが極めて高いと思うぞ。私達 竜は幾千、幾万の時を過ごしてきた。その中で喰らう者(くいばみ)に滅ぼされた世界、文明、時代をいくつも見てきたからこそ同じ感じがする。それに、魔王が生きていた時代が約5000年ほど前であろう?その時に一つの時代が終わりを迎えたのも確かだ。」


「マジか!ユリオン、やっと手掛りが....ってどうしたんだよユリオン。」


横に目をやると大量の汗を額から垂れ流し少し息を荒げたユリオンがそこに居た。丸で何かを思い出そうとしている様に苦しみもがいている様にも感じた。


『はぁ...はぁ...はぁ...』


「やはり、思い出そうとすればする程に苦しみ記憶に蓋がされる。喰らう者に喰われた者達と同じであるな」


「でも、ラシュリーは?幽体というか魔力が実体化しているような感じだけど...」


「ここからは完全なる私の推論ですが喰らう者に食われた時に何んらかの方法で体の本体と魔力を封印、若しくは仮死状態にする事でその脅威から逃れたのでは無いだろうか?もちろんそんな事ができるとは思わないが魔王本人なら或いは...」


「てか、そもそもその くいばみ?って奴に食われたらどうなるんだ?死ぬのか?」


「いや、生死という概念ではなく消滅する 跡形もなく。まるではじめから存在していなかった若しくは神隠しのように。記憶ごと他者からも忘れられ消えてしまう者もいれば生活していた痕跡だけ残し急にいなくなってしまう者も居たとか。そこら辺は私にも分からないが、」


「でも、ニア達はそのくいばみ?ってやつを知ってるんだよな?」


「ええまぁ。姿を見た事は一度も無いが文明が消える瞬間は何度か目撃している。例えば空中巨大王朝フルバーニアンもその一つだ」


「フルバーニアン!?ここに来る前に見たぞ!」


「何と!フルバーニアンを見たのか!アレは滅多に姿を表さない特殊な都市でな。滅んだ今も空を漂っているのは感じていたが...」


「ユリオンも見た事無いって言ってたしやっぱり上陸出来たのは奇跡的だったんだな。」


「なに!?フルバーニアンに上陸したのか!体は!無事なのか?!」


「うわぁ!急にビックリするじゃん!.... 全然普通に探索して帰ってきたけど...」


「そうか、、、」


ドラニアの表情が難しそうなものにかわる


「なにか変化は無かったのか?魔王も含めて!」


「何も無かったぞ!あ...いや、街の中心に行くにつれて廃れていってる感じで、中心部分には空間のズレ?歪みみたいなのがあったな。体は特に何も無かっけど」


『ラシュリーが...一時的に消えかけたな』


そこでやっとユリオンが口を開く。先程よりは安定しているように見えるがまだ冷や汗は止まっていないようだ。


「やはりまだ残っているのか。喰らう者の痕跡が...」


「痕跡?」


「ああ、アレは喰らう者が出現した時に起きる一種の現象でな、消えること無く近付くものを飲み込み存在を消滅させるのだ。もしやと思うが近付いてはおらんだろうな?」


「俺が....」


名乗り出ようとしたその時ドラニアの表情が固く強ばるのを感じた。


「え?なにかまずかった?」


「アレイスター、其方も気を付けた方が良い。何れ、喰らう者と相見える事になるかもしれん。」


そう言ったドラニアはどこか寂しそうな懐かしむようなそんな表情を浮かべながらアレイスターを憂うのだった。


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