大いなる空の支配者⑥
第2章
41話
ここは竜たちの国であり世界「ドラグニア」。世界からは存在すら認知されておらず未だに全人類歴史上をみても未踏の地である。そしてそこに今初めて招き入れられる人間と魔王がいた。2人は人間として有り得ない程の魔力を持ち先の戦いに於いてその実力が認められた事で城へ招かれたのだ。天井の高さはかなり高いらしく先が見えない。しかし、城の入り口やこれまでの通路にあった門や扉は人サイズの大きさから段々とひと回りずつ大きくなり見えない天井まで伸びていた。驚いたのは人サイズの扉があったことだ。通路は竜達が行き交う為か凄い広さで横幅だけでも端から端は結構な距離だ。今は城内の長く続く通路の最中で、疑問について触れられる空気では無かったので何も聞けていない。
魔王のユリオンはというと見るもの見るものに釘付けでずっと独り言でぶつぶつと何か呟いている。この国に上陸し城に入りこの通路を通って来るまでの間2人は会話していない。
だが、その均衡は遂に破られる。
『ずっと気になっていたのだが何故人間サイズの扉や門があるのだ??』
ユリオンは何かを思い出したかのようにそう言い放った。俺とユリオンは今大きな竜達5匹に連れられ城の中を歩いている。向かっている先はこの国の王、竜神といわれる竜の所らしい。王というのに神って正直よくわからない。それにあの三つ首の竜は見当たらない、アイツは何だったのだろう。
「....。何人かの選ばれた竜の中には人の姿に成れる方々が存在する。その方達用の扉だ。」
『ほう、人化。若しくは神化といったところか。アレイスターの契約している神獣達に似ているな』
「似ているが非なるものだ。そこの小僧が契約している召喚獣は神そのものだ、この世界とは別の場所から来たのだろう。しかし、我らが王やドラグナイト・竜王親衛隊の方々のごく1部に限り人の形に似た姿をとることがてぎる。我々は竜神化と呼んでいんる。」
「でも、なんで神化....神なんだ?」
「我々は元々竜人という種族から始まった。そして我々の先祖様達がこの世界を創造したといわれている。故に神なのだ。」
「世界.....。規模がデカすぎて流石に...む」
『いや、あながち嘘では無い。我の生きていた時代にあった御伽噺では人が竜になりそして神となりこの世界に空、海、大地をもたらしたという。若しかしたら今の話がこれの元になっているのかもしれん。』
「人から竜にというのは流石に無理があるが、人も今生きているこの世界の生物たちも全て竜人から始まったと我々は教わっている。」
「なるほど、だから神なのか。それはそれは...。でも、本当の神じゃないんだよな?」
「我々にとっては神同然だ!いや、まずそもそも神獣を召喚するなど聞いたことも無い!どうなってるのだこの小僧は!罰当たりすぎるであろう!」
『ハッハハハ!!!!アレイスター、言われたな!』
「笑い過ぎだろユリオン...」
『いや、まぁ....言いたい事は我にも分かるからな。貴様はこの世界から逸脱している。その歳でその膨大な魔力に神獣を従える器量。貴様は何千年と生きてきた我や何万年と生きてきた竜たちを簡単に倒し、あれだけの召喚魔術を使っても尚魔力が減っていない。貴様は本当に何者なのだ』
「逸脱...か。てか、ユリオンは倒してないし!」
「重要なのはそこではない。いいか?この世界は歳を重ねるだけ魔力が高まっていくものだ。そしてどこかのタイミングでその成長は止まる。だからこそ我々竜は魔力が人間よりも遥かに多いのだ、生きていける年月が違うからな。まぁそこの魔王も我々より魔力が多いが...。本来なら人間が我々やそこの魔王より魔力が多くなる事は無い。それは年月だけではなく生物的な要因もあるだろう。しかし、貴様違う。10にも満たない年齢で既に竜神様をも超えている。本来なら溢れ出る魔力に肉体の方が耐えきれず砕け散ってしまう筈だが何故か貴様はそれを内包している。限界まで魔力を留めているとでもいうのだろうか、一見魔力が無い様にも感じる。普通の人間ならまず見抜けないだろう。その状態もよくわからん。なぜ、貴様は死なず、どの様にして魔力を抑え込んでいるのだ。」
「(やっぱり年齢を重ねるだけ魔力は増えるのか。何となく予想はしてたけど)」
「俺の魔力についてなんだけどさ.....」
アレイスターは自身の体質について、できるだけ詳しく説明した。
「って感じなんだよね」
「なるほど、召喚魔法にそのような使い方があるとは....。しかし、理解できても納得はできんな」
『全くだ!それに神獣を召喚魔法で呼び出すなんて聞いた事もないぞ!!」
先程までの沈黙が嘘かのように会話は弾んだ。それぞれ色々な疑問や質問をしそれぞれが答えていく。こうして見ると話し合えば意外と分かり合えるのだと感じた。
「そろそろ.....」
1匹の竜がそう口にする。奥の方に目をやると扉のような物があるのを見つける。
「あそこが?」
「あぁ、我らが国王。竜神様のいる部屋だ。」




