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大いなる空の支配者⑤

第2章

40話






仮想の月を呑み込む程の光は結界内に留まらず結界外までをも照らし始める。日は暮れてないのにも関わらず太陽の光さえも今は竜が放つ輝きに吸い込まれ見えなくなってしまっている。未だに見た事も感じた事もない魔力にアレイスターは魅せられていた。それはその魔法による効果なのかそれともその魔法陣と光の魅せる芸術的な光景そのものの所為なのかそれは分からない。だが、何故かその魔法陣からは目が離せないでいた。


「マスター、安心しなされ。アレに魅了されていても最早ここは儂達の領域じゃて。」


そんなアレイスターに声を掛けたのはゼニスだった。その話し方は凄く優しく余裕を感じさせ安心を与えてくれた。


「そう、ここは、私達の、領域。」


「そうですマスター、我らのアヴァロニアが再び夜で取り込みましょう。」


神獣達は何にも心配する事の無いと言わんばかりにアレイスターに話しかける。しかし、その間に列を成した竜の魔法が発動しようとしていた。


『我らの御言を聞け!我らの怒号は空を裂き全てを空に還す。さぁ、我が子らよ歌と共に全てを滅せよ!』


『ディル・ナハータ:竜達のうたた寝!』


空に響く掛け声と共に規則的な動きをしていた竜達は時間が止まった様に動きを止め魔法陣としての役割を果たす。それは竜達が生み出し遥か長い歴史と時間の中で確かに継承されてきた伝説の魔法である。光が全てを包み光が全てを死へと導く。


『さぁ、眠る様に滅びの時を迎えなさい!』


だがしかし、ここに居るのは現に存在しない、してはならない神獣が10体。そして彼らの魔力を最大限引き出す為の結界に夜と影で覆われたここは既に神獣達の神域。そして、それを従えるは人ならざる魔力を持つ少年。その結果は


「ここは私に任せてくださいマスター。そろそろ出番が無いと私、拗ねてしまいそうですわ。」


「メル、」


神獣メル・クーリヴァ。空を操るその神獣は姿を人型から変化させ遂には龍へと変貌していく。エンペストの支配能力がメル・クーリヴァの力を更に加速的に強力にしていく。


「貴様らは所詮ドラゴン。龍とは即ち神なる存在。竜とは即ちリュシリオンの様な神なる存在。私に裁かれる事を有り難く思いなさい。 ウル・ボザ 」


大きな雷鳴と共に眩い光が視界を覆う。だが、次の瞬間深い夜と闇に覆われたアヴァロニアがそこにあった。正確にはゼニスの作り出した仮想のアヴァロニアだ。アレイスターは勿論何も心配していなかったし憂もなかった。しかし彼は今の魔法に魅せられて固まってしまったのだ。


「俺、やっぱり平和ボケしてるのかな。鈍ってるていうか、少し気を緩み過ぎたかな。」


「マスター、いいのです。以前までが気を張り過ぎだったのです。あなたは年相応に振る舞って下さい。私達はあなたを守るために存在しているのですから」


「リュシリオン・・・」


「そうだ、我らがマスターよ。あなたは好きに生き好きに我らを使え。それが我らの望み」


「この話は一旦終わった後に話そうかのぉマスターよ。」


「うん、、もう」


「はい、片付けましょう」


「そろそろ狭苦しい」


「これにて。ディレクション・ペンタゴン」


エリュシオンが放つそれは異空間へと誘う。大きな口を開き吸い込む様に巨城とその周りの竜達を呑み込んでいく。それは丸で元々ここには何も無かったと言わんばかりに勢いを増していく。


「ここまでとは、流石は神獣。しかし、」


「もう、何もかも手遅れさ。残念だけど」


何をしようとエリュシオンの魔法は止まる事はない。これは川が流れるように、雲が泳ぐように、木々が揺れるように、太陽が照りつけるように、そして大きく地面が震えるように、雨が降るように。自然的な物に近い世界の意志による災害の1つにして運命の1部なのだ。


「こ、これは」


「エリュシオン!!!」


アレイスターの大きな声が響く。全てを呑み込もうとするエリュシオンに対して彼はそれを止めたのだ。


「マスター、」


「話を聞きたいんだ、色々とさ。流石に殺すのは気が引けるしこの世界を見てきた者達なんだろ?勿体ないじゃん。争うつもりもなかったしさ」


「ですが、」


「勝手に話を進めるな小僧」


「そうですよ、何を勝った気でいるのですか」


先程まで響き渡っていた声の主であろう竜が姿を現す。それは三つの首を持ち胴体は一つで翼は六つ。丸で融合したかのような出立ちで大きさもエリュシオンに匹敵する程だ。


「まず、攻撃を仕掛けてきたのはそっちじゃん。俺達は敵意を向けられたから迎撃したまで」


「貴様ら人間が我らの領域に勝手に入ってきたのだろう!!!」


「お互い空の海を動いてんだからしょうがないじゃん。」


「この世界に生まれたばかりの子供よ。貴様とは歴史が違うのですよ。」


「マスター、もう宜しいでしょう」


リュシリオンの声と同時にゼニスが竜とアレイスターとの間に割ってはいる。


「まぁまぁ、今はお互い落ち着こう。儂らが敵対する理由なんてないんじゃから。」


「ゼニス様、」


「ゼニス、、」


「聞けぇ竜の王よ、儂らはここを通りたいだけなのじゃよ。確かに大きな魔力を2つも感知したら驚くじゃろうが敵意が有るか無いかくらいはお主らならわかっていたはずじゃ。何故、他の竜達を戦わせた?」


「人に従いし堕ちた神よ。問題は敵意が有るか無いかなど関係ないのです。わかりますか?私達の領域に居ることが問題なのです。」


「その通り!貴様らの存在自体が問題なのだ!」


ゼニスが合図を送るとリュシリオン以外の召喚獣達は帰って行く。結界もいつの間にか消え、夜も明けて晴れ渡る空が顔を見せる。


「なんのつもりだ!」


「あれ程の戦力は元々必要ないからのう。久々の暇つぶしというわけじゃ」


ゼニスは会話を試みている。それは俺の意見を尊重している部分もあるだろうがそれ以外の理由がある様にも感じた。それはリュシリオンも感じ取った様で様子を伺っている。


「暇つぶし?そんな戯言が通用すると思っているのか!!」


「じゃが、どうせ勝てないのはわかっているのじゃろ?だからこうして姿を現した今も攻撃をしてこない」


相手もその言葉に会話を詰まらせる。確かに戦力差は圧倒的でこちらに分があると言っていい。明らかにアドバンテージがあるしユリオンもいる。今向こうの様子は分からないが魔力は感じるのでなんら問題は無いだろう。この状況で三つ首の竜は一体何を考えどう行動するのだろう?


「儂らはな...いや、儂らはな少し協力して欲しいだけなんじゃよ。」


竜達に会話の助け舟を出し、沈黙を破ったのはゼニスであった。


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