大いなる空の支配者②
第2章
37話
ユリオンの空飛ぶ大陸を下目に上空で激しい魔法が弾け合う。その打つかり合いは空だから許される規模感であり一切の何も近付けさせずまた大気を震わしていた。そこに1人、いや2人。それは召喚獣と召喚士であるがその戦いを真近で見守っているのだ。
「始まっちゃった。どうしようリュシリオン!止めた方が良いかな?」
「いえマスター。もうあのモノは魔王に任せて良いでしょう。私達は今から来るであろう別の敵を迎え撃ちましょう」
少し焦り気味のアレイスターを冷静な態度で返答するリュシリオン。これによりアレイスターも冷静を取り戻し今からの出来事に集中できた。
「了解!てか、別の敵って?何も感じないけど・・・」
「いえ、確実に来ます。恐ろしい程に魔力を薄め隠していますが此方を意識しているのが私には感じ取れるのです。」
リュシリオンも神獣と言えど同じ竜。竜同士にしか感じない何かがあるのだろう。魔力を薄めていると言われ改めて感じてみると確かに幾つかの魔力が極端に抑えられていることに気付いた。竜ならではの膨大な魔力を敢えて隠して此方に敵意を悟らせまいとする様な意図的な何かを確かに感じた。
「マスター、来ます!!!」
突如、声を大きくしとんでもない速さで前進する。リュシリオンの背中は久しぶりで安心感がやはり違うそれに加えリュシリオン自体もアレイスターに呼ばれるのが久しぶりなので張り切っている。
眩い光と共に数体の影が姿を表す。リュシリオンと同等かそれ以上の大きさの竜が4体、それぞれが強大な魔力を有しておりその感覚は正に自然、天候そのものだ。纏う風は衣の如き天空、奔るは雷の如く閃光、溢るる水は雨の如き豪水、影るは黄昏の如き夜。
その4体の竜は落ち着きと焦りを半分ずつ感じさせるような面持ちでこちらに顔を向け戦闘態勢と言わんばかりに睨みをきかす。しかしそれが意味の無さない事だとここに居る当人たちは全員が思っている。
「我々の領域を汚す愚かな人間共よ。それとそんな人間に組みする名ばかりの神獣よ!ここは貴様らが到達できる領分ではない!即刻立ち去るがよい!」
風邪を纏う竜が大きく翼をはためかせてコチラに威圧をかけてくる。勿論これにも意味なんてほぼ皆無だが恐らくアチラも戦いたくはないのでは無いかと考えた。
「俺らも戦いたい訳じゃないんだけど、少し話は出来ないかな?」
俺は対話を試みる。
「話だと?勝手に俺らの庭に入ってきて何を話すと言うんだ?」
雷を体に走らせ眩い光を放つその竜は感情と共にその光が点滅、激しく音を立てた。
「ユリオンは昔から空飛ぶ大陸で移動してるし、俺も空はよく飛んでたし飛んでる!別にアナタ達の領域を侵しに来た訳じゃないんだ!」
「そんな言い訳が聞くと思うのか?事実、貴様らは今我々の領域に入り込んでいるわないか!」
「俺たちは有る封印について調べたいだけなんだよ!それの手掛かりがユリオンの故郷に有るかもしれないから向かってる途中なんだよ!」
「それで、見逃すとでも?キサマの言うユリオンとやらも魔王ではないか!何の封印を解くつもりか知らんがキサマもキサマ!人間の姿形で我ら4匹以上に魔力を持っている!そんな奴の言う事を信じられるか!」
「そう言われてもしょうがないじゃん!そーいう人間だって思ってよ!」
言い合いをしていると頭上より雨と雷の合わせ技が降り掛かってくる。それを分かっていたかのようにリュシリオンが光の障壁を展開する、と同時に攻撃をしかける。光の閃光が竜たちに襲いかかるがそれを難なく避ける。
「リュシリオン!!!」
俺の掛け声と共にシューティング・レイを放つ。白く光る魔法陣が幾つも展開され竜達を追尾する様に走る。それぞれが守りや避けるやで攻撃を華麗に躱していく。しかし、何度も何度も攻撃をしかける。
「(流石のリュシリオンでも中々当てきれないか、、、でも、まだまだ本気じゃないもんな俺もリュシリオンも)」
「マスター!押し切りましょう!」
リュシリオンからアレイスターに進言する。それは余り無いことなのでアレイスターは困惑したが最近召喚をしていなかった事で逆にそれをすんなりと受け入れる事ができた。
「わかった!換装!!こい!ゼニス・アru...」
「そろそろワシの出番であろう!!マスター!!」
杖を召喚しようとしたその瞬間、突如その召喚を利用して間に割って入ってきた何者かが召喚された。
「ゼ、ゼニス!!どーやって!?てかなんで??」
俺の質問も束の間ゼニスは竜達の動きを止めると遠くに見える巨大な竜の国へと吹き飛ばした。
「あやつらじゃ相手にもならん。マスター、彼の国へ参りましょうぞ。ワシも力に」
ゼニスは俺の質問には応えずに冷静に俺を見る。今はそれは置いとこうと言うことらしい。まぁ、杖は無いのが不便だがゼニス本人が出てきたというのは戦力的には申し分無さすぎる。
「はぁ〜。もうわかったよ!一旦出てきたことは聞かないけどこのままアッチまで行くか!」
俺達は竜の王国に向けて飛びたった。その距離は大きさが遠近的に見せていただけで目に見える王国は遥か遠くにあった。しかし、その場所に行くのにそこまで時間は有さなかった。




