始まりの空②
第2章
32話
次の日の朝が来る。今更ながらこの大陸の名は「ネデ・フォネラージ」というらしく空の上にある所為か朝も夜も訪れるのが早く感じる。勿論、今の正確な時間は分からない。ユリオンの城にも時計はあるが4000年も前の道具だから動くわけもなく文字も何を書いているのか全く分からなかった。その事について2人に聞いたのだが何も分からないという事らしい。
「ふぁぁぁぁ〜〜〜〜〜」
大きな欠伸をし、体を大きく天井に向け伸ばす。軽く深呼吸をし眠気目を擦りながらベッドから降りる。俺がユリオンに用意してもらった城の1室は学園都市の時に住んでいた寮の5倍以上あり広すぎるが故に少し寂しい。しかもこの大陸はユリオンの特殊な魔法で覆われている為に基本的には魔法を使えない。ユリオンを除いて。多分俺なら使用出来るだろうとのことだがそうすると魔法のバランスが悪くなり障壁が消えたり認識阻害が薄れ外界に見えてしまう恐れがあるというので召喚魔法とそれに準ずる魔法は使わない様にしている。
「いつ見ても空にいるとは思えないな〜」
部屋のカーテンを開け窓の外を見る。そこには太陽の光でキラキラと光る湖や川、木々が健やかに生い茂っている。しかも木の長さもこちらの方が遥かに大きく太く長い、まさに堂々たるやその姿は歴史さえ感じる。
「さぁ、今日は何をして過ごそうか。。いつも暇なんだよな〜する事も出来ることも少ないし唯一の楽しみのラシュリーの料理も時間が完璧に決められているしな〜その間がな〜」
『アレイスター、朝食の時間よ』
「もう、驚かなくなったよそれも」
『え〜〜、最初なんて目が飛び出るくらい驚いていたのに』
「そりゃ今の所毎日されてるからな〜」
『だって暇なんだもん』
「それは本当にそうだよな、俺も今日何しようか考えてたし。」
『でしょ?実体を持てた最初の方は私も色々楽しかったけど今じゃ料理を作ること以外の楽しみなんてないんだもの』
そうこう話をしながら食卓の間に向かう。その道中でユリオンの部屋に寄り一緒に3人で会話をしながら食事につく。いつもの流れ、いつものルーティンだ。
『成程、確かに最近我も暇な気がするな。いや、記憶の整理や寝ていた分の魔力回収で割と忙しいか』
『そうなのよ、ユリオンが構ってくれないのも私が暇な理由の1つよ』
「それは確かにそうだな。ユリオンお前が悪い」
『なんだまた藪から棒に。だが我もラシュリーの手掛かりを探しているのだぞ?』
「それもそうだな確かに」
『アレイスターって以外とテキトウよね』
『それは最近、我も思っているぞ!だがそっちの方が年相応で良いと思うがな!』
「あはは、バレてたか。でもまぁ基本はこんな感じだよ、特に今は何も考えなくていいし気が楽なんだよな〜」
3人で会話しながら食事を摂ると時間はあっという間に過ぎてしまい気が付けば食べ終わってしまっていた。3人で片付けをしながら今からの段取りを確認する。ユリオンは引き続き情報収集と記憶の整理、ラシュリーは今日はそれにお供するらしい。そして俺はというと
「俺はどうせだしこの広大な大陸を見てこようかな!今考えたらあんまり何も見てないし道中にあった街も気になるし!」
『ほう、それは良いかもしれんな!アレイスターにとってはここは未開の大地とも言える。何か見た事が無いものが手に入るかもしれんしな!』
ということで片付けを終えた俺たちは3人それぞれの時間に入る事にしたのだった。
〜アレイスター〜
「とは、言ったもののこのクソ広い大陸のどこに行こうか。空も飛べないし歩きで行くにも限界があるもんな」
俺は城から下に降りいつも眺めていた大きな木々が聳え立つ森の前まで来ていた。実際に立ってみるとこの木々の凄さが実感できる。正に巨木であり御神木。何かが宿っていると感じる程に力強く逞しい。
「・・・・・・・・」
妙に何故か気になる方角がある。その方向を見ていいると何故だか目が離せず動け無くなってしまう。体が縛られているというより固まっている感覚だ。しかし動かそうと思えば動けるので魔法的なものでは無いだろう。だが今はその方角から目が離せない。
「こっちに何かあるのかな?」
俺はその気になる方向に進むことにした。それは直感的なもので俺のこの退屈を終わらしてくれる何かがあると感じたのと自分にとって悪い事は起こらないという確信を持ったからである。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
随分と奥に進んだ気がするが気になる物は特に見つかっていない。しかもその感覚が森の中へ入った途端に消えてわからなくなってしまい若干迷っていた。
「もう、どうしようかな。。。何も感じないし此処がどこかも分からないし、、、」
途方に暮れていた俺は取り敢えず進む。空を眺めようにも巨木に囲まれた森林では陽の光もあまり差さない。
「ん?あっちの方から光が見える!もしかしたら外に出れるかも!」
少し先の方に光が見える。そこに向けて走り出す。ひんやりとした空気が少しずつ暖かくなって来るのを感じる。光の先は全く見えずこの森の暗さが際立つ。そして辿り着いた先には
「うっわ〜〜〜すげぇぇぇ!!!」
森の外に広がっていたのは正に一面の花園だった。見たことのない広大な土地に咲き誇る花達は生きているかの様に燦々と太陽の光を浴び風に揺れている。
「こんな所があったなんて!!凄すぎんだろ!!!」
俺はその花畑で昼寝をし気が付けば次の日の朝でユリオンとラシュリーに物凄く怒られたのは今回は置いておこう。




