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目覚め④

第1章

28話






アレイスターの攻撃は確かに直撃したかの様に思えた。周囲は土煙りに覆われユリオンの魔法も止まっている。しかし次の瞬間、土煙りが1箇所を中心にに吸い込まれていきユリオンが再び姿を表す。


『面白いぞ!!パンドラの小僧!!それに神獣の魔力は極上だな!!こんなに美味い魔力は4000年前にも味わった事ないぞ!!!』


「マジかこいつ。俺の魔力まで持っていきやがった。」


『メギオンチェンジといってな!魔力吸収する障壁を身体に纏っているのだ!』


ウルティマイラの光線は魔力を分解・分散する。しかしアレイスターの魔力を媒介にした部分召喚による攻撃はその分解・分散よりも先にアレイスターの魔力を吸収しウルティマイラの攻撃も吸い込むに至ってしまった。


『さぁ、次はこちらの番だ!!!』


ユリオンのメギオンチェンジは自身の魔力に変換する物と吸収した魔力をそのまま別の魔法として相手に返す物がある。手の平を開けアレイスターに向けると彼と神獣の魔力を媒介とし次なる魔法を繰り出した。


『陽魔:アトミック・サンライズ!!!』『月魔:ルナティック・7(セブン)!!!』


白きは太陽。全てを包む愛の光か、全てを焼き尽くす情熱の炎か。黒きは月。全てを飲み込む闇の住処か、全てを静寂に返す眠らない摩天楼か。


「マスター!!!いけません!!!」


「こ、これは!!!!」


目の前が白く光り輝いたと思った次の瞬間黒く静まり返る。闇の冷たさと光の暑さが混じり合い溶け合う。それは正に混沌そのものであり一瞬の出来事であった。


『この2つの魔法を同時に使った事は今までで1度たりともない!だが、久々の戦いの高揚に肉躍るこの快感!そして貴様の様な強敵!出し惜しみはしてられんぞ!!』


『!!!!!!』


放たれた魔法により召喚した筈の神獣達は消滅した。しかしアレイスターは魔力兵装により魔法との境目にて境界の様なものを形成していた。これはアレイスター本人も故意ではなく偶々であった。


スッ


手に神杖ゼニス・アルマを持ち魔力を全開放する。確かにユリオンに取られた魔力は大きかった。しかしアレイスターの魔力はここ最近でさらに大きく膨れ上がり増加していた。それはゼニス・アルマに魔力を貯蓄できるほどでアレイスターの全開は既に神獣さえも凌駕していた。


『貴様、パンドラ以上だな!!その年で何が起こっているのだ!!!』


生み出された境界から自身の領域を広げ魔力を流し込んでいく。ユリオンの魔法はその領域に飲み込まれて消滅していく。それと同時に神杖と融合していく。それにより先程までの部分召喚で使用していたアレイスターの魔力媒介はなくなり神獣そのものの力を100%以上で直接引き出せる。


「神鍵:アニマ!!!」


全開放した魔力は更に勢いを増していきこの閉ざされた宙に浮く大陸を越え地面や大気そのものを揺らしていた。瞬間その揺れはなくなりアレイスターの手元に鍵の様な物が形成されていく。それは光を伴いながら彼の手中を超えて大きくなり次第には片手剣程の大きさにまで至る。


ガチャ


何かの鍵が開く音が脳内に響き渡る。これはアレイスターだけではなくユリオンも同様だった。


「開け!!!」


光り輝く鍵を天に向ける。すると鍵は空に吸い込まれていく様にして登り始めた。瞬く間に見えないところまで行ったかと思うと神々しいまでの魔法陣が何重にも折り重なっり雲を形成していく。


「神獣:エル・アニマ!!!」


ユリオンは何も出来ずにいた。動かなかったのではなく動けなかったのだ。今目の前で起きている現象に胸が躍るそして恐怖していた。アレイスターが名前を口にした瞬間空は大きな穴を作りその深い闇に大きな扉は存在した。そこから出てくる神獣は神か悪魔か。若しくはそれ以外か。


ユリオンは震えたいた。それは先程まで感じていた恐怖ゆえではなく昂りから来る武者震いであった。


『貴様ほどの人間にあった事はないぞ小僧!!!』


神獣は姿を表し始める。風が吹き荒れ大地は震え大気は揺れる。



奇妙な音がまた脳内に駆け巡る。騒がしかった筈の雑音は一切なく沈黙が空間を支配しいていた。何事も無かったかのように錯覚するほどに恐ろしく静か。しかし彼の者は確かに眼前に存在していた。


『アナタニハワタシノ姿ガドノ様に見えテイマスカ??』


それは正に光そのものだった。目の前は確かに晴れ渡り視界は良好で気の所為か普段よりも調子も良い気がする。しかしその者を視認して以降身体は感じた事も無い強張りで動けずにいた。


『これは......』


『スベテハワタシノヒカリノナカニ』


「『シャリオ』」


アレイスターと彼の者が同時に言葉を放つと大陸が光に包まれていき白い世界へと変貌していく。本当に変わっている訳では無いがそう見えるまでにその光は全てを包み込んだ。


「堕ちろ!!!7つのヒカリと共に!!!」


包まれた光は更に輝きを強めていく。それは天より飛来してくる何かが近付いてきているからだ。


『(この魔法は魔力という次元では測れない。最早魔法でもあるまい。まさか数千年振りに復活出来たと思えばとんだハズレくじを引いてしまったな)』


ユリオンは心の中で短い間だったが血肉躍る戦いができた事に対して感傷に浸っていた。それはもう既に負けを覚悟している者の最後の時間であった。しかしユリオンは確か聞いた。遥か昔に失い忘れてしまった過去の思い出。その中でしか生きれない守りたかった存在。彼女の声は確かにユリオンの妄想や幻聴ではなく耳元に聞こえてきた。


『あなた、もう諦めてしまうの?このまま終わってしまうの?』


『!!!!!!今のは!!』


『私の知るあなたはこんなもので諦めたりしないわ』


『ラシュリー?ラシュリーなのか!!!何故?何が起きて....』


ヒカリの凶弾は物体では無いものの明らかな圧を感じた。既に素肌は焼け始めジリジリと音を鳴らす。ユリオンが聞いた声は今も聞こえ確かな存在的安心感を与えていた。そしてそれはここから反撃をする闘志を燃やすには十分過ぎる程だった。


『久しく忘れていた君の声を再び思い出させてくれた小僧との出会いには感謝せねばな。これが幻聴なのか何なのか分からんが今はこの熱さに身を委ねよう!!!』


ユリオンは復活直後より戦闘開始した為にまだ、本調子と言うには程遠かった。魔力量自体に問題は無いが魔法の出力に関しては普段の2分の1にも満たない威力しか出せずにいた。だが彼は本当の意味で目覚めようとしていた。


『勝負はまだ終わらんぞパンドラの小僧!!!!』


その声とともにユリオンは光に包まれたのだった。


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