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目覚め②

第1章

26話






あれからユリオンと名乗る人物の声は聞こえてこない。啖呵を切った俺は勢いそのままに城の方に向かい飛行を続けていた。強大な城は近づくにつれて全貌が見えなくなっていく。だが一向に距離が縮まっている様に感じない。下を見ると森林ではなく平原になっていた。確かに今思えば木々達は俺のすぐ眼前にあったのに今はその姿もない。本当に大陸なのだと改めて実感する。


「広すぎる、途方もないな」


この空間に招かれてからどれくらいの時間が経っただろうか。召喚獣を出すことはまだ試みていない、だが恐らくだが可能だろう。考えうるにこの空間には何かしらの魔力阻害が施されていて魔法が使うことができない可能性が高い。しかし、俺の場合は召喚獣の能力を顕現させずに使うことができるが飛行が可能と言うことは使えると言うことだ。これはやはり魔法とは少し違うのかもしれない。魔力を使用してない訳ではないのに魔法とは少し違う。神獣達の能力を引き出しているにすぎないと言うことなのだろうか。


「時間もわからないし多分日も暮れないだろうなこの様子なら。」


独り言を吐きながら移動を続ける。1人で居ることが昔から多かったせいか将又この世界に来る前の自分の記憶があるせいか俺は独り言をよくいう。神獣達との会話も勿論会話ではあるが何せ俺を煽てに煽ててくれるのだから嬉しい反面たまに不安になる。その点フィオラとの会話は何も気にせず素で入れるから凄く気楽だ。フィオラも俺と同じように考えていると前に言っていた。


「ん?」


考え事をしていると急に飛行ができなくなり段々と高度が下がっていく。


ズンッ


「??」


何か見えない壁のようなものに頭をぶつける。痛みはなくただその場所から前に進めないと言う不思議な感覚。ゲームの進めない場所を体験しているようだ。


「どうなってるんだ?」


訳がわからないまま地面がどんどん近づいてくる。しかも地面が近づくにつれ町の様なものが目前に広がる。大きさも学園都市くらいはありそうに思う。


「何がどうなってるんだ」


ただ困惑を隠しきれないままその町の入り口付近に降り立つ。緑の平原に佇む大きな街。しかし入り口付近の少し離れた場所からでも人気のなさが伺える。何かがおかしいと勘が働きかける。本能的に臨戦体制に入り身構える。


「流石にこんな所に人なんて住んでないとは思うんだけど、気配も感じないし。ただ、何かがおかしい気がするんだよな〜」


俺はゆっくりと街の入口、城門の方に向かって歩いていく。こうして地面を歩いているとこの大陸が空に浮かんでいるなんて誰も想像できないだろう。


「ん??」


門を過ぎ中に入るとそこは静寂に包まれてはいるが綺麗な街並みが広がったいた。丸でここ最近まで人が住んでいたようなそんな感覚だ。


「おいおい、マジかよ。」


出店の様な跡まである。しかもそこには肉が焼かれていて煙もたっている。他にも馬が繋がっていない馬車があり荷車の荷物もそのままに放置されていたり至る所に生活の形跡が見られる。


「何がどうなってるんだ?・・・はっ!!!」


それは突如目の前に現れた。何の気配も無く初めからそこに居たかの様に佇む。この街には全く合わない、否この世界全体で見ても違和感のあるその姿は俺には馴染みがあった。赤と言うよりは紅に近い甲冑をその身に纏い顔と思われる部位には鬼の形相をした仮面を着け日本刀らしきものを2本腰からぶら下げていた。


「・・・・・・・・・・・・・」


何も喋ることなくそれは真っ直ぐに刀を振り下ろした。先程まで腰にぶら下げていた筈の刀はすでに手中にあり音もなく地面に向かい刃先を向かわせる。


「!!!!!!」


振り下ろされた刀は既に腰の鞘に収まっており再び元の佇まいに戻っている。


キンッ!!!!!


高い金属の当たる音が何処からともなく聞こえてくる。それは一度しか鳴る事が無かったが音だけで巨大な剣同士がぶつかり合ったのだと理解できる。それ程までに強烈な一撃。


「ふぅーーーー。本当に死ぬ所だったな。。。」


それはオーディンと同じ様な見えない斬撃だった。咄嗟に違和感に気が付いたアレイスターは紅の武者が繰り出した不可視の斬撃を同じ不可視の斬撃で防いだのだ。


「速いと遅いが混在してる。何だか不思議な感覚だな。」


「・・・・・・・・・」


「相変わらず何も喋らないs」


ガキンッ!!!!


今度は何の前触れもなく斬撃が飛ぶ。勿論対処はするが殆ど反射で対応している為このまま同じ様にバリエーションが増え続けたらいつか切り伏せられるとアレイスターは考えていた。


キンッ!!!


ガキンッ!!!


キ!!


キン!!!!


そこからは見えない斬撃の応酬だった。ノーモーションでいつどの方向から斬撃が飛んでくるか分からない状況でアレイスターも又攻撃を繰り出していた。いつもは防戦一方で自ら攻めるやり方で戦った経験が殆ど無い彼は久し振りに気を遣わず戦う事が出来る相手に内心ワクワクしていた。


「(こいつ、何か違和感が有るなとは思っていたけど...)」


斬撃の応酬の中、ずっと感じていた違和感。それは紅武者の動きだった。一体どの様にして斬撃をいつ飛ばしているのか。ただ早いだけでは説明がつかない


「試してみるか」


「ディシディア・ダイアル!!」


停止した空間の中で確かにアレイスターは見た。停止した時間の中で動いている紅武者を。


「まさか、こんな事って、、、」


紅武者の動きがそこで初めて目に見える。奴は時間を停止、若しくは時間諸共あらゆる物を切っているのだ。それは恐らく時間に関する概念や魔法を持ち合わせているアレイスターだからこそ視認、反射で対応出来たが基本的には不可避の斬撃だろう。


「でも、タネさえ分かれば!!!」


動きがしっかりと見える様になった事で戦況は一気にアレイスターに傾く。斬撃を繰り出す前に攻撃が紅武者に当たる。

横から何処からともなく現れた巨大な腕はいとも容易く目の前の敵を吹き飛ばす。しかし、


「????感触が、、」


攻撃は確かに当たった。が、何故かそこには感触が全くなく空を切った様な気さえする。そして、


「!!!!」


目の前には先程吹き飛ばした筈の紅武者が立っていた。現れた時と同じ様に静かに、そして初めからそこに居たかのように同じ場所に佇んでいる。


「これは中々、骨が折れそうだな」


アレイスターと紅武者の第2ラウンドが始まろうとしていた。この戦いがユリオンの復活の為に意図的に仕組まれたものだとも知らずに。


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