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目覚め①

第1章

25話






吹き荒れる刃の如く風に分厚く大陸のように広がる雲。そこに見え隠れするは嘗てこの世界を恐怖で支配し全てを手に入れようとした王が住んだとされる雲よりも大きな城。それは空高く、遥か空高くを飛行し今も尚世界のどこかを漂っている。


「.........」


それは約4000年前に存在したとされる天空大陸。しかしそれも時の流れが歴史より消失させた。今はこの天空大陸がある事をしる者は限りなく少なく世界の常識は御伽噺の中に出てくる空想として認知されている。


「........」


そして今、主人の目覚めと共に天空大陸もまた目覚めようとしていた。何かに駆られるように。


〜アレイスターの部屋〜


今日の目覚めはいつもより早かった。太陽がまだ顔を見せない時間に起きたのに特別な理由は無かった。でも何故か胸騒ぎともいえない妙な気分がお腹の中で蠢いているそんな感覚が暫く続いている。


「なんなんだろう、この感覚。嫌な感じ。」


「マスター、具合でも悪いのですか?」


デリオラが心配そうに様子を伺っている。


「いや、なんだか嫌な感じがしてさ...」


「こんな時間に目が覚めるのも珍しいですね。」


「そうなんだよな。しかも眠たくないってのもなんかさ、変に緊張してる感じ?」


この時には既に本当は気付いていたのかもしれない。ただ、その予感が本当なのかが分かるのが怖かったのかもしれない。それとも....


~次の日~


結局、あの後何かが起こる訳でもなく1日が無事に終わった。しかし、


「......またこの時間帯」


昨日と同じような時間に目が覚める。それに日が変わってもあの嫌な感覚は変わらずお腹の中に居座っている。だが何が引っ掛かるのかは全く分からない。学園で過ごしている最中もその嫌な予感と変な緊張が解けず何にも集中できず上の空だった。


「そういえばフィオラにも言われたな、、、」


昨日、フィオラと帰っている最中に言われた上の空という言葉。それは今自分で思っていた事だが何故かその言葉が考えれば考えるほど頭から離れない。


「空。空か〜」


明け方。まだ太陽も見えないこの時間は学園都市自体が眠りについている。俺はふと窓を開け空を見上げた。それは特に何かを考えていた訳ではなくただ気になったとしか言いようが無い。しかし見ずにはいられなかった。


それはほんの一瞬の出来事だった。空に見える巨大な影が雲の中に漂っているのが見えたその瞬間だった。


・・・・・・


「はっ!!!」


気が付くとそこは草木が生い茂る森のような場所だった。先程まで自室にいた筈がそこは太陽が差し鳥達の歌声が聞こえてくる、言葉にするなら正に楽園のような場所だ。


「よいっしょ、」


取り敢えず立ち上がり辺りを見渡す。開けてる訳ではないが深い森の中という訳でもない不思議な空間だ。俺は空に上がり今の場所の確認とこの場所についての確認をした。


「うわ、まじか」


聳え立つ巨大な城に広大な大地。果てしなく広がる大陸は雲に覆われ空に近く太陽が熱く照りつけこの静寂な世界の中で確かに存在していた。


「これが、嫌な予感の正体か。」


この状況なのにやけに冷静で居られたのは昨日から続いていた嫌な予感が急に消えたからだろう。それと同時に湧き上がった確かな感情。これはほっておくことが出来ない非常事態であること。それはあの時と同じだ。一度死にかけたあの時と。


「でもあの時とは違う。多分大丈夫だな笑」


俺にも確かな自信があった。ここ最近まで鍛錬していたのはこの時の為だったんだと。そしてそれは絶対に無駄にならないと。この今居る場所は恐らく別空間なのだろう。太陽の光があるのに影が伸びていなかったり空中の筈が風が全く吹いていなかったりと環境に違和感を感じる。


「デリオラ!」


「」


応答がないことを考えるにやはり影は存在していないと見える。


「取り敢えずあの城を目指していくか」


空から城を目指して飛ぶ。巨大な城は遥か遠くにある筈なのに大きすぎて近くに見える。そかしこの巨大な大陸は正に大陸なのだ。これが空に浮かんでいたと考えると恐ろしい。それに見ただけでこの場所に転送?されたのだもしかしたら俺以外にもこの世界に来ている人間が居るかもしれない。


「若しくは俺だけが呼ばれたのか・・・」


そんな可能性も考えながら空を飛ぶ。魔力の反応も今の所感じられず生命らしきものも感覚だが居ないように思える。されど広がる大森林に綺麗な景色。果てには海見たいなものまで見えている。この楽園のような世界は人が明らかに過ごしやすい環境になっている。恐らくこれは超高度な魔法だ。環境に影響を及ぼす程の魔法は基本的に神獣クラスが扱うレベルであり俺以外の人間で扱える者にはまだ出逢ったこともない。この世界の主は恐らく人間ではないのだろう。恐らくあの日来た招かれざる客が言っていた、


『我が城へようこそ、大きな魔力を持つ者よ。我とこの世界が貴様を歓迎しよう』


突如として声が聞こえる。それは大陸中に響き渡り遥か遠くにある城から聞こえてきたものだと直ぐに分かった。


『我が名はユリオン。今はまだ眠りについているが時期に目覚める。我は貴様の魔力が欲しい。目覚めるのに貴様の魔力があれば更に若き日に近づく。そうすれば今度こそこの世界を手に入れることができる。』


「世界?何を?」


『我が眠っていた長き日の間にこんなに世界が変わろうとは。この大陸を通して世界を見てきたが魔王と呼ばれるものがこんなに増えようとは。魔王は絶対的ではならない!故に1人で良いのだ!!』


「まだ目覚めてないのに自我ありすぎじゃないか?お前いつの時代の何者なんだ?」


『我をお前呼ばわりとは貴様命が惜しくないらしい。まぁ我の眷属を倒した実力は評価してやろう。しかしお前は何か勘違いしている。貴様はただの栄養、餌でしかない。我の養分なのだ。』


「黙れよお前。さっきからゴチャゴチャと。余裕なんだろ?俺だけここに呼んだのかは分からないけど存分に暴れてやるからな。」


『・・・・・・』


「俺だってこの時の為に準備してきたんだ。お前みたいな寝坊助の養分なんて真平ごめんだから」


『貴様、人間らしく死ねると思うなよ?生きてきた事を後悔させてやる。』


「それはこっちのセリフな!寝てればよかったって思わせてやる!!」


この戦いは誰にも知られる事なく始まる。アレイスターだけを狙い呼ばれた空の巨城はまだ目覚めていない筈のまだ見ぬ強敵の確かな存在を感じさせた。ここから苛烈な戦いが始まる。


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